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2007年12月 4日 (火)

政治のかたち一私の周囲を見て一(下)

私はそう遠い所まで遡らなくとも、過去十年間オピニオンリーダーと称する人々が何を言ってきたか、そしてそれがどのような彰響を及ぼしてきたかということを検証するだけでも、そこから学ぶことは多々あるように思います。

この数年間、メデイアは商業主義に走り、大衆はそれに誘導され、もはやコマーシャルとキャッチフレーズに誘導されるがままに、「公」よりも「個」に重点を置き、明日のない今日だけに生き、ぞして自己の確立であると錯覚して自分自身の良識に基づいた自己を失わせ、皆同一化されているのが今日の傾向でもあるようです。

本来であれば、民主主義は個々人が真の意味で確固たる自己に目覚め、自己の主体性をもって良識と責任のある行動をとることで健全な社会を確立し、自分自身を常に相手の立場に置き換えてものを考え行動する中で社会正義が生まれ、責任ある民主主義社会の構成員として一人一人が行動することができて初めて健全な民主主義が機能するように思います。

私は幼い時から共産主義独裁の悪政の中で苦しんできた一人として、民主主義に常に大きな期待と希望を託してきましたが、正直なところ今はその民主主義にも大きな疑問を抱き始めています。

私は一九九〇年代始めからネパールとモンゴルの民主化の過程を身近に見守ってきましたが、この二つの国の民主化はそれぞれの国民に対し、大きな期待をもたらしたものの、その道は茨の道であり、紆余曲折の中で人々の政治への関心と期待を裏切るような悲しい政治不信と人間同士の相互信頼を生んでいます。

ただ幸いにしてモンゴルは有能な政治家の暗殺などを経験しながらも今、精一杯民主主義の定着と民主制度の確立が進み、少し希望が見えてきたようにも見えます。

一方ネパールでは残念ながら未だに党利党略というよりも、指導者たちの私利私欲によって民主主義の名の下で、政治が混乱し、更に複雑化しています。

この二つの国の民主主義が未成熟であるのは、民主化の過程にあるからと言ってしまえばそれで済むかもしれませんので、そういうことで自分自身を慰めながら両国の民主主義が一日も早く定着し、少しでも民主国家として前進することを祈っています。

モンゴルの民主主義のプロセスにおいては前述のようなことがありましたが、少なくとも民主主義のルールに則って政権が交代し、選挙が行われてきたことは評価できます。この先も重大な総選挙そして大統領選が控えていますが、順調に行くだろうと確信しています。

もうひとつ、ブータンが今、初めて立憲君主国家として新たな出発の中、来年総選挙を実施することになっています。この民主主義もスムーズに行くことを祈っております。私は未熟な民主主義と行き過ぎた民主主義の両方に関わることによって、もう少しバランスのとれた成熟した民主主義がないだろうか、と考える中、結局、民主主義という制度が健全であるためには高度な精神文化、一人一人の知識と良識のバランス、お釈迦様のおっしゃる「中道」を求めるしかないのではないのかと思います。

独裁社会のような強制をなくすためには、一人一人が自分自身の真の主として自分の言動に責任を持つことと、それによって生ずる結果を考慮して生活し、自己のみならず他の尊厳と幸福の中に己の幸福も含まれていることを強く意識するほかないのです。

※財団法人・修養団発行「向上」(2007年12月号)より転載

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