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2008年5月31日 (土)

私は日本の中国属国化を心配している

今回は最近私が残念に思った二つの出来事について愚見を述べたい。

先ず第一に、世界の世論を無視できなくなった中国政府が、ダライ・ラマ法王の代表との対話に応じてきたことである。中国政府も法王側もこれを非公式であると発表した。しかし双方が率直に意見を述べあったと評価しているので、私は理解に苦しんでいる。

中国側は今回のチベットにおける抗議デモに対する残酷、かつ不当な弾圧で200名以上の命を奪ったのは止むを得ない治安維持のための行為であったと述べ、またチベット側は中国がダライ・ラマ法王が、今回のチベット全土でおきた一連の抗議デモの裏で糸を引いていると言う中国側の主張に強く抗議し、それを否定したと言う。

勿論この他に今回捕まった人々の釈放を要求し、十分に治療を受けさせること等の要求も行ったという。さらに外出禁止令のため、身動きの取れなくなった市民は食糧不足で苦しんでいる事実も取り上げたという。

これらの問題について正式に抗議し、互いに意見をぶつけあっていれば、それは個人的な意見ではなく、それぞれの政府の見解を述べていたはずであって、正式な見解を主張していたはずである。暇つぶしの井戸端会議ではなく正式な会談でなければ意味がない。

チベット側は首席大臣(首相)が談話を発表し、今回の対話に「満足している」と前向きに評価していると述べた。又、首席代表ロデイ・ギャリも今回の中国側との対話についてダライ・ラマ法王と内閣に報告した後、ケルサン・ギャルツェン代表と共に記者会見を行い「継続的に対話を行うことになっている。近い内に正式会談を行うことになった」とこれまた満足げであった。

しかし、私は北京政府側の胡錦濤国家主席が外遊、つまり日本訪問前に海外メデイアからチベット問題で責められた場合、「我々は寛大にもダライ・ラマ一派と対話を再開している」と言い訳ができるように口実を作ったにすぎないのではないかと思っている。これは、外遊前の5月4日を会談の日に選んでいることが何よりも明快に物語っているように思う。

要するに中国側に世界世論を本当に尊重し、チベット問題を誠意をもって解決しようとする明確な意思がないのだ。私は世界世論を中国政府が無視できなくなっている事実を重視したい。共産主義の看板を外せば、政権の正当性を失う中国の一党独裁体制が資本主義にどっぷり入っているので、外資や外国の技術に対する依存の高さは、毛沢東や鄧小平が想像もできないぐらいに今の中国の基盤を蝕んでいる。

従って、今後さらに世界世論がチベットに関心を寄せ続けて支援すれば、中国政府は止むを得ず内容のある交渉に乗らざるを得なくなるだろう。日本の皆さんには末永くチベット問題を見守って頂きたいのでよろしくお願いします。

もう一つの出来事と言うのは長野での聖火リレーに対する日本政府の対応ぶりに対するものである。私は学校で国家とは①ある一定の領域(領土)を有し、②そこに国民がいて、③政府があって、④王権が確立していることと習った。しかし、最近日本国をみていると、政府と主権が存在しているか疑いたくなるような事件がおきている。それを、ここで「長野事件」と名づけよう。

今回、北京オリンピックの聖火リレーが長野で決行された際、北京政府が動員した中国人留学生たちが暴れ、オリンピック聖火リレーに抗議しようと集まったチベット支援者に怪我させていても、日本国政府の機関で治安維持、主権執行の役割を持っていた警察当局が見て見ないふりをして野放しにしていたと、私は現地に行ったチベット支援者から話を聞いてがっかりしたのである。

しかも中国側に抗議をしていたチベット支援者に厳しく当たり、聖火ランナーの前へ飛び込んだだけで、誰にも、何の危害を加えていないチベット人青年は逮捕され、今日5月11日現在まだ釈放されていない。日本国は国連の常任理事など目指す前に先ず、主権回復に努めるべきであると私は思う。

日本憲法は「主権在民」の原則でその主権者の信託を受けた議会の選出によって内閣が主権を代行しているはずなのに、その内閣の指揮下にある警察権すら中国に奪われていては国家が正常に機能していないことを意味するのだ。長野での出来事を見ている限り、日本は中国の属国のような振舞いで実に独立国には思えない。

チベットは残念ながら中国の植民地になってしまったが、それでも精一杯抵抗している。今回チベットの青年タシ・ツェリンさんが日本の法律に違反した行為については当然償うべきだが、中国がかつて彼の所属していたチベット青年会議はテロリスト集団だと決めつけているからと言って刑を重くしたりするのも納得しにくい。

実際にチベット青年会議が過激な行動を取ったと、中国政府が具体的に証明し、かつ世界各国が客観的にそれを検証した上での話であれば仕方がないだろうが、中国の一方的な見解を鵜呑みにしているようでは独立国家としてあまりにも情けない。中国政府は国家の面子をかけて必死にオリンピックを強硬に開催しようとしており、何が何でも強硬成功させようとしているのである。

中国は最近ダライ・ラマ法王を個人攻撃をし、中国の政府はダライ・ラマ法王を「僧侶の法衣をまとった狼である」と言いふらし、法王の人格を抹殺するような宣伝を国内・外でキャンペーンを行っている。一時おとなしく見えた中国の路線は再び文革時代に逆戻りしている。徹底した非暴力を提唱するダライ・ラマ法王の平和的なイメージを破壊したい中国は、あらゆる手段を使って法王を攻撃している。

そして最近はやりのテロリストと言う分類にチベットを当てはめようとしている。日本は独立国家、主権国家として日本の視線と日本の国益に照らし合わせて物事を判断してもらいたい。チベットは残念ながら中国の植民地になってしまった。日本が属国化しているのではないか心配である。

※ 月刊 『日本』(2008年6月号)より転載

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