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2008年8月20日 (水)

「チベットのぼや 大火にするな」

力ずくの人民解放軍 本質的な問題解決にならず
ギャロ・ドンドゥップ・チベット亡命政府元主席大臣


 北京五輪開催を前に、動きだしたチベット亡命政府と中国との対話再開の中、来日中のダライ・ラマ十四世の実兄でチベット亡命政府元主席大臣(首相)のギャロ・ドンドゥップ・チベット氏に本紙は単独会見した。ギャロ氏はチベットで起きたデモをぼやに例え「火はぼやのうちに消した方がいい。しかし、中国は火消しどころか、火遊びをしている。火遊びを続けると、手に負えなくなり大火になる」と警告した。

 ギャロ氏は一九七九年、中国政府に招聘されて北京を訪問、当時の党の最高実力者、鄧小平との会談を実現。チベット亡命政府が今日、採択している中国政府との対話路線の端緒をつくった。この時、鄧小平氏は「独立以外なら何でも話し合うことができる。さらにダライ・ラマ法王に中国に戻ってほしい」という二点を強調したという。

 ただギャロ氏は「中国の国益を考えても、今こそチベットと仲良くすることがもっと大事になっている。問題は中国の人民解放軍の指導部が全く、それを分かっていないことだ。人民解放軍は、鉄砲さえ持っていれば何でもできるという旧態依然の哲学を持ち続けている。これは大きな間違いだ。力ずくでやることは本質的な問題の解決にはならない」と中国の武断主義を牽制した。

 「覇権国家の論理」というのは、自分が弱いときには微笑外交を展開して下手に出ても、いざ実力を身に付けると、強圧的姿勢で臨みがちだ。それを排除するには、チベット側としては大きなバーゲニングパワーが必要となってくる。

 ダライ・ラマ十四世は、日本をはじめ欧米諸国を精力的に訪問しながら外圧というカードで中国に圧力を掛ける。ギャロ氏は二十八年間、毎年のように中国を訪問し、北京で要人に会い内側からの説得を試み続けている。
 ギャロ氏は「日本国ならば政治カードを行使できる力もルートもあるが、私たちは相手を説得し、諭すしかない。チベット人の手には、自分たちの現状を訴え続けるカードしかないのだ」と、対話路線の大義を歩み続ける。

 なお蒋介石政権(国民政府)が崩壊していったのは内部腐敗からだとされるが、今の中国も豊かになった半面、内部腐敗は深刻で、拝金主義がはびこり、インフレも庶民の生活を脅かすようになっている。蒋介石政権末期を身をもって知るギャロ氏は「当時と現在の中国を比べると、今の方がはるかに腐敗問題は深刻だ。かつて共産党は『四大家族が中国を搾取した』と言って批判したが、現在はこれが数百家にまでなっている」と指摘、蒋介石政権末期以来の危機的状況を迎えているとの認識を示した。

 さらにギャロ氏は「恒久的な平和をこの地域に構築するため、日本がアジアにおいて重要な役割を果たすべきだ」と述べ、わが国が政治的リーダーシップを発揮するよう求めた。

※世界日報(2008年7月31日付)より転載。

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