« 精神性の探究(上) | トップページ | ダライ・ラマ訪日を前にして »

2008年12月28日 (日)

精神性の探究(下)

 今年の三月以降、幸いにして日本でもチベット問題に対する理解と支援は高まっています。これはとても嬉しいことで感謝にたえません。しかしチベット問題そのものはあの時から一向に良くなっておらず、むしろ中国側の引き締めが更に強まっている様子です。そのチベット人を支えているのは精神力、忍耐力であると思います。海外に流出したチベット人は過去半世紀近く「来年こそラサで!」といって乾杯をしながら新年を迎え、また一年間をお互い励まして希望を持ち続けてきました。そしてチベット国内の人々は一日も早く、ダライ・ラマ法王にお目に掛かることを祈っていました。
 つまりチベット人を今日まで強く支えてきたのは精神力であり、夢と希望であったと思うのです。もちろん夢と希望を抱くだけでは人間は生きていけませんし、人間が持っているこの肉体を維持するためには物質的な要素の必要性も決して否定できません。それを支えて下さったのはインド政府を始め世界各国の人々の善意による援助であったと思います。海外の難民たちは、多くの皆様のご理解とご支援の賜として必要な教育を受けることが出来ました。そして今日世界各地で個々のチベット人は自立した個人として、自分と家族の生活を支えることだけでなく、祖国のためにも献身的に尽くしています。
 七世紀以来、千四百年間大切に保持し発展させてきた仏教精神に基づくチベット文化は今多くの高僧たちの努力によって世界中に広がり、物質的に受けた難民への支援の代わりに精神面において目に見える貢献をさせていただいています。
 行き詰まった共産主義の一党独裁のもとでさえ、チベット仏教徒の信者たちは今どんどん増えています。特に中国人の富裕層、インテリ層の中に浸透していることから見ても、人間にとって物質的豊かさのみによって幸福がもたらされるものではなく、この両面のバランスがいかに重要であるかということを物語っていると思います。
 以上のような出来事に接し、私自身改めてこの豊かな国、自由の国で暮らしていることに感謝の気持ちを強く抱きました。
 そして私を日本に派遣して下さった法王の義理のお姉様のミセス・ギャロウ・トンドゥップ女史、チベット史上の英雄で大蔵大臣を務め、日本との強いつながりを作ったツァロンのお嬢様で私達よりも先に来日し、私達の面倒を見て下さったツェリン・ドルマ女史、物心両面において私と仲間たちを日本に呼び大学まで卒業させて下さった丸木清美先生、そして私を温かくご支援下さった村井順先生、私が日本の土地を踏んだ日から私を父のように厳しく、母のように優しく導いて下さった木村肥佐男先生、倉前盛通先生他多くの日本人の恩人たちのことを思いながら、残りの人生を有意義に生きることを自分自身の心に誓いました。 

(了)

※『向上』(2009年1月号より転載)

|

« 精神性の探究(上) | トップページ | ダライ・ラマ訪日を前にして »

幸せって何だろう?」カテゴリの記事