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2009年4月 5日 (日)

中国建国60年目、天安門20年目の憂鬱 対談 石平×ペマ・ギャルポ (8)

法王の身の危険も

ペマ それは、これからの若いチベット人には期待できるかもしれません。しかし、今の法王を頂点とするチベット人にそれは難しい。なぜなら、仏教の教えではそういった「二枚舌」のような使い分けは許されないからです。

Ph05_2 石 なるほど。

ペマ 代表であるダライ・ラマ法王はもちろん、主席大臣もお坊さんです。法王の特使も元お坊さんです。

石 謀略的なことはできないわけですね。しかし、法王には日本で言えば天皇陛下のようなお立場にいて頂いて、何か政治的な組織を作ったほうがいいですよ。実働部隊が戦略を立てなければならない。

ペマ それは今、チベット青年会議が活動していますね。しかし、中国はこのチベット青年会議が、あたかも過激派であるかのような情報操作を行っているんですよチベット青年会議は、唯一、独立しか主張していませんが、デモをやるときに独立を叫んではいけないなどと言う国際団体まで出て来ています。中国を支援しているのか、チベットを支援しているのかわからない状態です。
 しかし私が今、心配しているのは、むしろダライ・ラマ法王が「中国政府には失望したが、中国人民には期待を持っている」とおっしゃっていることです。そのために今、中国人なら誰でもダライ・ラマ法王に会えるようになっています。

石 そうなのですか!

ペマ 私から見ると、それはとても危険に思えます。「仏教を学びます」とか「法王を支持します」と言うだけで、会えてしまう。

石 法王は元来、そういう存在ですからね。

ペマ しかし、これは法王の身の危険という問題もありますが、なにより私は「何のためにチベットを統率しているか」ということがだんだん見えなくなる危険性を危倶しています。つまり、「チベット独立」が骨抜きにされるのではないかという危惧です。

石 なるほど、中国人民に期待をする、つまり中国人民を憎まないとなれば、独立の意味が不明瞭になっていきますね。

ペマ 法王は観音菩薩の化身ですから、法王の立場で「中国人民を許しましょう」とおっしゃるのはいいのです。しかし、私のような生身の人間にとってはそれは難しいことだと思います。中国の人たちに対する怒りを持っているほうがチベット人として普通の感覚でしょう。
 しかしチベットを支援する人たちはチベット仏教に対して過剰なほどの評価をしていますし、法王はノーベル平和賞を受賞しました。ですから、過激なことはダメだと言う人たちがほとんどです。私からすれば、それは本当に戦争をしたことのない観念的な平和主義者の発言に聞こえますし、独立を勝ち取るのはそう容易なことではないと思います。このようなあいまいな形でチベット人が中国人民とあまり近づきすぎることは非常に危険に思えます。
 「○八年憲章」も含めて慎重に分析しなければならないと私は思りています。なぜならば、チベット国内においては一昨年より去年、去年より今年のほうが、状況は深刻だからです。ラサでは、一月にまた八十名くらい中国に捕まっています。

石 それは掃討作戦のようなものですか?

ペマ 三月のダライ・ラマ亡命五十周年が来る前に、という意図です。もう一つ、中国政府はそれに先手を打って「奴隷解放記念日」を作り催し物を行うと言っていたわけですから、中国から見て危険なチベット人を事前に捕まえておくということでしょう。
 また、東チベットや青海省では、毎晩、集会場に集められるということまでやられています。

石 中国はそれほどピリピリした状態だということです。今年は節目であり、体制崩壊前夜ですよ。

(了)

※『WiLL』(2009年5月号)より転載。

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