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2010年4月28日 (水)

中国のアジア支配を許すな! 対談 石平 VS ペマ・ギャルポ (上)

 去年の年末に、ペマ先生はインドを訪問されたそうですね。インドは現在、中国にある種の脅威を感じていますが、鳩山政権の対中政策をどのように見ているのでしょうか。

ペマ インドも含め、アジアの国々が非常に不安に思っていることは、鳩山政権が一体どこへ行こうとしているのか不明であること。そして、鳩山首相、小沢幹事長、管副総理、園田外相など、一体誰が政権の舵を取っているのかわからないということです。インドの高官は、鳩山首相が訪印するにあたり、どこまで鳩山首相と話をしてよいのか戸惑っていました。

 鳩山首相に明確な方針が見えないため、約束を交わしても実行されるのかわからないとの戸惑いですね。

ペマ そして日本とアメリカとの関係を心配しています。日米関係が良好であることが、アジアの安全保障に対して、また自分たちが安心して中国と付き合えてきた前提と考えているのです。小沢氏が六百三十名も引き連れて訪中したことも、こうしたインドの不安を掻き立てるものでした。

 なるほど。日米同盟の重要性を、アジア諸国は充分認識しているわけですね。わかっていないのは、日本の鳩山政権だけ。

ペマ 実際に、東南アジアのある国の首相が非公式に来日して、鳩山首相に日米同盟の重要性を訴えています。今までは、アメリカと日本の存在があったために安全保障上でも安心できていた。日米同盟がなくなってしまうと、中国の一方的な力が強くなってしまうのではないかと不安なんです。
 東南アジアの国々は、歴史的にもうまく周りの国の力を活用しながらやってきました。たとえば昨年、ASEAN諸国はインドと中国、どちらの国とも自由貿易協定を締結しましたが、その際、まずインドと、次に中国と結んだのです。

 インドと同盟関係を作ることによって、安心して中国とも協定が結べるわけですね。

ペマ 東アジア共同体も、ASEAN諸国はインドを入れるべきだとしました。それは自分たちの安全保障を考えたとき、中国とのバランスをとることが大事であると認識しているからです。

 そう考えると、改めて日米同盟の重要性がよくわかります。日米同盟は日本の安全保障にとっての礎としてだけではなく、アジア全体の安全保障と安定の要ですね。
 中国以外のアジアの国々は、日米同盟の強化を望み、日米同盟を一つの要としてアジア全体の平和を守っていこうとしている。中国の脅威という共通認識が、インドも含めてアジア諸国にはあり、根本的な国益が日米同盟と一致しています。

ペマ 昨年はヒラリー・クリントン国務長官がインドを訪問し、オバマ大統領は大統領就任後、はじめての国賓として、インドのシン首相を迎えました。

日米同盟の拡大版

 対中国に布石を打った行動ですね。アメリカは中国の脅威が顕在化する前に、なんとかソフトランディングの形でこの脅威を緩和させたいと考えている。アメリカもインドも台湾も、国益的には一致しているわけです。以前、麻生元首相が提唱した「自由と繁栄の弧」をより明確に表すと、台湾やインドを加えた、日米同盟の拡大版が戦略的に有利ではないでしょうか。

ペマ そうですね。

 日本とインドの準日米同盟のようなことも考えられます。民主主義国家であり、法治国家であり、歴史上も問題がない。これほど良い国があるにもかかわらず、鳩山政権は強迫観念のように、ただひたすら中国重視を唱え続ける。アジア重視とは、決して中国重視ではありません。
 たしかに、中国が大事なのはわかります。しかし大事だからこそ戦略的に考え、インドや周辺の民主主義国家と手を結ぶことが重要なんです。中国重視を掲げる鳩山政権のアジア重視の姿勢は。根本的に間違っています。

ペマ 安倍元首相が「美しい国」(文春新書)の中で、同じ価値観を共有する国々との連携を提唱したように、世界最大の民主主義国家であるインドと、アジアにおいて最も民主主義の成熟した日本、さらに民主主義の旗印を掲げるアメリカにオーストラリアを加えた四カ国が協力し、台頭する中国を牽制する。これは自然な考え方ですね。
 インドは外務省をはじめ、中国に対して挑発的な行為は取りたくないと考えていますが、インドの安全保障の専門家やコラムニストなどは、中国をチェックすることが世界平和とアジアの繁栄のために欠かすことができないと考えています。

 去年、ダライ・ラマ法王がインドと中国との国境で、中国に侵入されていたダマンを訪問しました。政治的意図からダマンを選んだのでしょうか。

ペマ いえ、ダマンにチベット仏教系のシュ首相が誕生し、以前から招待されていたからだとされています。
 ただ、バンコクで開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力)において、中国側がダライ・ラマ法王のダマン訪問に反対したことに対して、インド政府は「だらい・ラマ法王はインドの友人であり、インドの領土内のどこへ行こうが自由である」と述べました。インドの領土内だということを強調しており、中国との国境問題が緊張してきていることを示しています。
 さらに、インドのマオイスト(毛沢東思想の信奉者)に対して、中国から武器が渡っていることにも不快感を示し、「マオイストの武器は中国製である」とインドの内務省が発表した。

 問題は日本の側にあります。民主党政権が誕生してから、アジア諸国の共通の国際利益やアジア全体の安定と平和は、正反対の方向に向かっています。逆に中国共産党に取り込まれて、日米同盟を破壊しようとしている。これは日米関係の根幹を損なうだけではなく、アジア全体の平和も破壊していることになります。まさに民主党政権の大罪です。

ペマ
 日本の国民やマスコミには、民主党が政権を取ったら権力に靡いたほうが得だと判断する傾向が強くありますね。それと同じで、中国が強くなっているからこちらの方が礼を尽くさなければならないとい考え方です。

 そのような考えの国は日本だけですよ。中国の政治家で日本に協力する人物は一人もいないのに、日本国内で中国に協力する政治家はいくらでもいます。

ペマ 自分たちが利用されているとも気がつかない。同じ中国系のシンガポールは小国でありながら、非常に中国を意識しています。シンガポールの軍隊は台湾で有事訓練を行っていますから、有事のときに両国が協力するという考えなんです。

アジアの平和を破壊

 まさに。今日と同じ状況を示している歴史がかつての中国には存在しました。
 昔、中国大陸には七つの国が対峙していた戦国時代がありました。そのなかで最強の国が、天下統一を狙う秦の国でした。他の六カ国がどのように対応するのか。一つの戦略は、六カ国が一致団結して秦の侵略を防ぐことです。この戦略を実行していれば、秦の天下統一は不可能だったでしょう。そこで、秦の国は最も隣接している韓の国を懐柔するのです。
 秦の国は「同盟関係を結んで一番損をするのはあなた方、韓の国です。我々と手を組めば安全は保障します」と、六カ国の団結から韓の国を離間させた。しかし十数年後、一番初めに秦に滅ぼされた国はまさに韓です。

ペマ 六カ国同盟から切り離された時点で、韓の国の滅ぶ運命は決められていたわけですね。

 昔の秦の国がとった策略と同様、日米同盟と中国からの脅威という共通的脅威に立ち向かうアジア諸国の団結を瓦解させるために、中国は日米同盟を離間させ、日本を取り込もうとするでしょう。
 北京に行って胡錦涛とツーショットの写真を撮れば、それで日本の安全は保障されたと思っているとしたら、日本の安全保障のみならず、アジアの平和を破壊してしまうことになり、天下の大ばか者ではすまされません!

ペマ キルギスタンやウズベキスタンの方が、ロシアとの関係も含め中国をうまく活用しています。自国の安全保障と繁栄をみながらの柔軟対応で、決して特定の国に偏ることはありません。

 非常に上手ですね。

ペマ かつては東南アジアの国々も、そのような柔軟な政策を取ることが可能でしたが、現在は選択肢が限られてしまっています。日米安保が健在であればアメリカの存在は残りますが、日米同盟が瓦解すれば、アジアの国々は仕方なしに中国に靡くしかないという、一種のなだれ現象が起きてしまう。現在、中国は華僑や経済力を使って東南アジアを抑えにかかっています。

 オバマ大統領が昨年の年末にアジアを歴訪しましたが、まず訪れたのが日本でした。そこでオバマ大統領はアジア外交に関する演説を行い、「日米同盟こそ、アメリカにとってアジア政策の基軸だ」と述べたのです。これは明らかに中国を意識した発言であり、日本に対する重要なメッセージです。問題は、我が国の愚かな首相がこのメッセージを理解していないことです。

胡錦涛との写真撮影が仕事

ペマ 民主党政権を見ていると、日本の色々な機関が機能しなくなっているように思えます。かつて国防や外交問題では、専門の役人がデータに基づいた正確な情報を元に政策を協議し、判断を下していましたが、民主党はすべてが政治主導だという。
 アメリカやインドや中国においても、安全保障に関しては官僚が情報に基づいて長期的な戦略を練り、政治的な決断へと導くという一連のプロセスのなかで行われているんです。

 政治主導を掲げるならば、主導する政治家がしっかりしなくてはどうしようもありませんよ。今の民主党の政治家は、北京で列に並んで胡錦涛にツーショットを撮ってもらうのが仕事なんです。あんなのは子供でもできる。テレビであの光景を観たら、まるで幼稚園児が北京に行って、胡錦涛お兄さんから順番にお菓子を貰っているようにしか見えません。そんな政治家の、なにが政治主導ですか!

ペマ 民主党は青写真も何もないところで政権を取ったわけです。ですから、アジア外交といってもアジアの概念すら民主党内で共通概念ができていません。民主党やそれに追随するマスコミがいうアジアは中国や韓国ぐらいで、それ以外のアジア各国に対してはアジアという概念すらない。中期的、長期的な目標がないまま、単なるパッチワーク的に政策を進めているだけなんです。

 一月四日、仏紙フィガロが「鳩山首相が南京を訪問するよう、中国から要請があった」と報じました。鳩山首相を南京に連れて行って謝罪させようなどという、とんでもない計画ですよ。平野官房長官は事実関係について否定していますが、もし仮に胡錦涛が広島に行き、鳩山首相が南京に行くことになれば、大変なことになります。
 一見、形式上は平等のような体裁をとっていますが全く違いますよ。胡錦涛が広島に行くのは、彼にとって何の問題もない。負い目を感じるどころか、逆に広島で日本人に反米感情を煽り立てることで、日米同盟に楔を打ち込めるチャンスだと考えています。

ペマ 鳩山首相が南京に行く意味とは全く異なりますね。

 南京へは謝罪のために行くんです。仮に鳩山首相が南京の土を踏んだとしたら、その瞬間、日本民族は永遠に殺人者としての烙印を押されます。日本国家が南京大虐殺を事実として認めたことになるのです。万が一、鳩山首相が南京大虐殺記念館に行って謝罪でもすれば、完全な中国の属国として後戻りはできません。

ペマ 鳩山首相ならやりかねませんね。今回の鳩山首相の南京訪問や、日韓併合百年を理由とした陛下の韓国訪問にしても、きとんとした計画や戦略の下に行っているわけではなく、単に中国や韓国からの要求に応じているだけなんです。

 国家戦略室なるものを設置していますが、戦略など一切ありません。今の日本国政府に、戦略を求めるのは無理な気がしますね。

ペマ 政府だけではなく、財界も国家としての戦略はなく、それぞれの企業が単独でビジネスを行っているだけです。昨年一年間の日本の対外投資額はインドが一位でしたが、戦略上の投資ではないでしょう。中国は飽和状態で儲からないから、次はインドだろうという単純な考えです。

 日本の企業同士で競い合うことしかしていない。

(続く)

※『WiLL』(2010年5月号)より転載

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