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2010年5月

2010年5月11日 (火)

深刻な日本の政治人材不足

鳩山首相だけ責めるな

国益懸け汗かく裏方が必要

 普天間問題に関して果たして鳩山首相だけを責めて済むものだろうか。私は今となっては日米間の国際問題になっており、同盟関係そのものに影響を及ぼす危 険性をはらんできたように思う。日米両国のみならずアジア各国をはじめ、世界中がこの行方に大きな関心を抱き始めている。確かに当初鳩山首相をはじめ民主 党の政治家たちは選挙がらみで沖縄県民の感情を配慮した発言から始まり、それにマスコミと平和主義者などが便乗し、問題は大きくなってしまった。普天間問 題に関しては、沖縄県民の感情は勿論のこと軍事的な戦略上における地政学的な条件、そして常に隙を窺う中国をはじめとする大国の覇権主義なども考慮し、日 本国ならびにアジアの安全保障を無視して考えることは不可能である。

 それだけにこの複雑な問題の解決には政治力、外交力が必要とされている。この問題に限って言えば、もはや党利党略の次元を越え、また一首相や一内閣の政 治生命を越える問題になってきていることを日本国民全体が真剣に受け止めるべきである。ゆえに鳩山首相の指導力に問題がないとは言えないが、私は与野党の 政治家のみならず政治家たちの人材不足を感じている。つまり国益を優先して行動する政治家が少ないということである。

 私は十代で日本に入って以来、20歳未満で難民として大学の勉強を継続するため自分の身分の安全のため、日本の政治家たちに陳情して走り回り、岸信介 氏、灘尾弘吉氏、坂田道太氏、船田中氏など歴史上に名を残した多くの日本の政治家に直接お目に掛かる機会を得た。勿論自民党だけではなく、春日一幸氏はじ め野党のリーダーたちにも面会した。この方々には政治家としてのオーラのようなものがあり、ある種の尊厳と自信を兼ね備えていたように思う。それと同時に 彼らは日本の国家の利益に関しては切磋琢磨しながらもどこかで互いにつながりを持ち、阿吽の呼吸で対米、対ソ、対中の外交を巧みに操っていた。そして彼ら を支える参謀格に徹していた「有能な政治家、学者、外交官、経済人」などが忍者のように動いていた。

 ニクソンがベトナム和平や対中関係でキッシンジャーを動かしていたように、佐藤栄作氏も数多くの忍者を使って沖縄返還のみならずご自分のノーベル平和賞 まで手にした。田中角栄氏、福田赳夫氏、大平正芳氏も同じ手法を使った。マスコミ関係者もある時はブレインとして、またある時は忍者としてフルに活用し た。しかし福田赳夫氏、大平正芳氏あたりから、松野頼三氏、園田直氏などが忍者から野心家として表に現れるようになった。

 そしてその後の政治家たちは徐々に尊敬できる先輩あるいはメンターにも恵まれず、またこの人のためならと慕って命を賭けてくれる同僚、後輩にも徐々に恵 まれなくなった。現在の政治家たちは誠心誠意で政策を勉強し、精一杯選挙民にサービスし、受けようとする努力は認められても、かつての政治家たちのような エネルギーや存在感に欠けているように思う。その一番の理由は恐らく社会正義を行うための憤怒尊が如き怒りと政治に対する信念に基づく覚悟がなく、ただ職 業政治家になっているせいではないか。

 今、日本の政界に必要なのは首相や総裁などを支えることに徹し、大きな夢に向かって犠牲的精神を兼ね備えた人物の存在である。総理大臣あるいは総裁が軽 々しく見えるのはその言葉の裏付けとしての根回しが充分にされていないところにあるように思う。徳之島の3人の町長の発言を見ても彼らは自分たちに何の相 談もなく勝手にものを決めたり、あるいは官房長官という肩書きを背景に、電話一本でアポイントを取ろうとするような姿勢に対しても不満があるように見受け られた。アメリカの関係者の談話などを見ても日本から事前に根回しや働き掛けが欠けていることを痛感する。

 核サミットでも中国、インド、マレーシアやヨルダンの国王などと個別会談を行ったオバマ大統領から個別会談のリストから外された日本国首相に対する行為 は同盟国としても容認できない行為であり、これは日本国に対するアメリカの強い政治的メッセージであると同時に、それを他人事のようにしか見ていない日本 の政治家やメディアの常識も疑いたくなる。このような状況の中、日本では雨後の筍のように新しい政党が結成されているが、私は幕末のように今こそ日本が一 丸となってこの危機に対し、日本人として日本国として行動しなければならないのではないかと痛感する。

 同時にマスコミから敬老クラブなどと言われている「たちあがれ日本」の平沼赳夫氏ほかの方々が、多少なりともかつて日本国を敗戦の廃墟から蘇らせた政治 の血脈を受け継いでいるゆえ耳を貸す価値があると期待している。政治は決して全てが透明の原則で行えるものではなく、裏方が存在し根回しなしに成功するも のではないことを鳩山首相はじめ、首相を目指す人たちに申し上げたい。

※『世界日報』(2010年5月4日付より転載)

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2010年5月 5日 (水)

中国のアジア支配を許すな! 対談 石平 VS ペマ・ギャルポ (下)

英連邦と中国の関係悪化

ペマ インドに投資するのであれば戦略的に行い、長期的には日本の経済にとってマイナスにならないようにしなければならない。かつて日本の企業は、人件費が安いというだけで海外に出ていきましたが、果たしてその教訓に学んでいるのでしょうか。

 政治も経済も司令塔不在、戦略不足ですね。

ペマ アフリカ問題に関しても、戦略的にみれば、インドを介して協力すべきなんです。かつて英連邦の一つである南アフリカ連邦へは、インドが入っていたからです。インドからアフリカに働きかけた方が合理的なんです。しかし、日本ではインドとアフリカの繋がりなど議論されることはありません。

 その通りですね。
 ところで今、英連邦というお話しがでましたが、去年から今年にかけて、中国はかつての英連邦を中心とした文明国と次々と関係が悪化しはじめました。
 去年、カナダのスティーブン・ハーパー首相が訪中して人権問題を非難した。すると、温家宝首相が面と向かってハーパー首相を面罵したんです。

ペマ その代わりでしょうか。カナダは、ダライ・ラマ法王を名誉市民にしましたね。

石 そうです。さらに中国はイギリスとも険悪な関係になりました。イギリス人が麻薬密輸で逮捕され、イギリス政府は半年間で十回以上も嘆願した。にもかかわらず、中国政府は死刑を執行しました。

ペマ ブラウン首相は、「最も強い言葉で処刑を非難し、非常に愕然としている」と声明を出し、今年予定されていた訪中も延期しました。

 また、今年は中国は二つの問題でアメリカと衝突しました。
 一つ目は、オバマ政権が台湾に迎撃ミサイルや潜水艦の輸出を決してしたこと。これに対して、中国政府は今までみたことのない強い姿勢で猛反発し、米国との軍事交流の中止などの「報復措置」も取りました。
 二つ目は今年の二月、中国からの猛反対を無視した形で、オバマ大統領がダライ・ラマ法王との会談を予定通りに行いました。
 それに対して、中国政府はやはり、外交ルートで色々と抗議し、反発しました。しかしアメリカは中国からの恐喝や抗議に対して毅然とした態度を貫いたから、結局中国側はひそかに矛を収めて敗退しましたが、この二つの事件以来、米中関係回復の見通しは未だに立っていません。両国関係は冷え込んだままです。

ペマ ダライ・ラマ法王はオバマ大統領に、チベット側は中国にこれからも対話を求めていく、と話されました。
 オバマ大統領からは、ルーズベルト元大統領が法王の幼少時に時計とともに書簡を送られたそうですが、そのコピーを手渡されたそうです。
 それは取りも直さずアメリカはいつでもチベットに関心がある、ということを示されたのでしょうね。

 中国は一昨年、北京オリンピックを開催し、昨年は世界同時不況もかかわらず経済成長を続けたことから有頂天になっているように思えます。その驕りから。アングロサクソンの国々と衝突しはじめ、デンマークで開催されたCOP15で見せた横暴な態度は、世界の文明国を敵に回しました。世界に中国共産党の体質が判明してきた。
 これは歴史的に見て良い契機で、今年は対中国包囲網をつくるチャンスなんです。

ペマ アメリカの国民感情は、中国の傲慢な態度に対して不満が溜まっています。今年十一月に中間選挙がありますから、議員は中国に強硬な姿勢で臨むでしょう。アメリカでは、中国に対して強硬でいた方が当選するんです。

 日本と正反対ですね(笑)。

ペマ アメリカの民衆は自分たちの価値観、感情を大切にします。

 市民としての良識ですね。
 今の中国情勢は、ある意味で天安門事件後の情勢と酷似しています。天安門事件で中国は「血の弾圧」を行い、国際社会から孤立した。今回は、自分が世界一だとの驕りから世界に喧嘩を売り、孤立しつつあります。

台湾へ目を向ける

ペマ 問題は中国に栄養剤を与え、世界からの孤立を防いでいるのが日本だということです。今年の上海万博も、日本の経済界の協力がなければ成立しなかった。中国は万博を縮小するとまで発表していたんです。日本はどのような戦略、考えに基づき協力をしたのか。

 おそらくなにも考えていませんよ。

ペマ 日本は中国という獰猛な動物に餌を与えて、より危険にしているようにしか思えないんです。

 昨年から中国がイギリスやカナダ、インドとも緊張関係になり、今年はアメリカとも衝突する要素がある。そのような状況に陥れば陥るほど、より一層日本を取り込もうとするでしょう。

ペマ 小沢氏の「朝貢外交」など、日本はますます洗脳されていきますね。

 よく中国は外交が上手だといいますが、欠点もあるんです。たとえば、どこか柔軟性に欠ける面がある。胡錦涛の面子にこだわり、大国としての面子がつぶされそうになると、必ず報復をする。そこが中国の外交の落とし穴で、今年は中国外交にとってかなり苦しい一年になる。

ペマ 中国が抱える外患ですね。そう考えますと、内憂としては経済問題ではないでしょうか。

 そうですね。上海万博が終わったあたりから、中国経済は破綻の局面を迎えるでしょう。不動産バブルがはじけ、失業者が急増する。
 昨年末、中国社会科学院が発表した「社会青書」の記述によると、大学生の就職率は五〇パーセントだったのです。そのような状況が何年間も続くと、国内が持たなくなる。二〇一二年には中国で政権交代が予定されており、そのままでは胡錦涛政権は終結してしまうのです。

ペマ そうすると、台湾へ目を向けますね。

 そうです。台湾でも二〇一二年に総統選挙が行われるため、この二〜三年の間で大きな局面を迎えます。先程申し上げたように、中国がアメリカの台湾に対する迎撃ミサイル、潜水艦の輸出を決定したことに対して、オバマ政権を怒らせるまでに過敏に反応してしまったのも、「台湾問題の解決」を強く意識した挙動でしょう。

「中国沖縄自治区」

ペマ 台湾の独立運動を行ってきた人たちや民進党の方たちにとっても、二〇一二年は最後のチャンスになるでしょうね。

 幸い、馬英九政権は国民に対して期待通りにやっていない。

ペマ しかし本来であれば、台湾は武器を買うことよりも、自由アジアの連帯に投資するべきだと思います。台湾は独立国ですから、アジアとの連帯を強化し、国際会議の場で独立国家としてのアピールをすることが重要です。武器を購入しても、中国と事が起こってからでは手遅れなんです。

 中国は強く台湾問題を意識している。すると、チベット問題はどう見ていますか。

ペマ チベットは来年、首相の選挙があります。中国は国際的に孤立するとチベットと対話を開始しますから、おそらく今年は対話をするでしょう。対外的な体裁を整えるんです。

 二〇〇八年に逮捕されたチベット人映像監督に昨年、六年間の実刑判決が下されましたが。

ペマ 今までと比較すると軽いです。これまでは、祖国分離活動は国家反逆罪で死刑でしたから。中国は周辺の風当たりが強くなると、穏健になるんです。

 ただ、中国に有利になればまた同じように強硬な姿勢に出る。結局、その繰り返しなんです。チベットはもうこの手にのってはいけません。

ペマ 残念なことに、のってしまう可能性が高いですね・・・。

 しかし、台湾やチベットとの関係が緊張すればするほど、中国はより一層、日本を取り込もうとしてきます。

ペマ その意味では、すでに中国は沖縄に手を入れています。昨年、中国の全人代の李健国常務副委員長が沖縄を訪れ、一昨年は非公式に沖縄での中国総領事館設置を打診しています。経済特区、つまり「中国沖縄自治区」を作り、沖縄を日本と分離させようとしているんです。

 対日工作の一環ですね。

ペマ 実際、沖縄を訪れてみると、沖縄の経済界はかなり中国に向いています。中国は総領事館を置けば、年間に二百万人の観光客が訪れると甘い言葉で誘う。たしかに、一時的には観光客は来るでしょう。しかし長期的に見れば、日本と離間させ、日本のなかに中国の本拠地ともいうべき「沖縄自治区」を作るのが狙いです。
 中国は自分たちが直接手を下すのではなく、観光客招致や有効関係などのアイデアを日本人の頭に刷り込み、間接的に支配を拡大していくんです。

 沖縄が、間違ってもチベットのようにならないことを願いますね。

小沢は胡錦涛の部下

ペマ 普段、中国は無理をしてもG8サミットの参加にこだわるのですが、二〇〇〇年に開催された九州・沖縄サミットには参加しなかったんです。それは中国にとって、沖縄は自分たちの支配下にある国だと思っているからだとの疑いすらあるのです。

 中国は必ず内部に楔を打ち込み、徐々に侵略していきます。それが彼等のやり方なんです。

ペマ そうです。我々は実際に体験しています。かつてチベットでは、チベットの僧侶に対して「国連はキリスト教の集まりだから入ったら大変なことになる」と言い、チベットの国連加盟を阻止したんです。
 沖縄も日本本土と違う意識を醸成させ、歴史も中国よりの歴史観を植えつけていくはずです。

 中国から評価されることしか考えていない民主党政権は、果たしてこのままもちますか。

ペマ
 常識的に考えれば、もつことの方がおかしいでしょうね。鳩山首相や小沢幹事長のように、政権のトップが法的にも倫理的にも道徳的にもおかしなことをしている。またそれに対して、マスコミは厳しく追及しようとせず、世間も、自民党もやってきたことだからと民主党を擁護します。

 自民党もやっていたから民主党も良いでは、政権交代の意味は全くありませんね。

ペマ 民主党は、政権内部から分裂して行くのではないでしょうか。今は息ができないほどの言論統制や共産党のような全体主義的なやり方で、国会議員としての人格を全く保障されていません。独裁者である小沢氏の単なる道具として、決議で賛成するときの数としてしか機能していないんです。

 その小沢氏が自ら胡錦涛の前で、「こちらのお国(中国)にたとえれば、解放の戦いはまだ済んでいない。来年七月に最後の決戦(参院選)がある。私は人民解放軍の野戦司令官として頑張っている」と発言した。

ペマ 中国人からすれば、あの発言は誰が聞いても降伏宣言としか受け止めようがありませんよ。

 日本の政治家の、それも与党の幹事長の口からそんな不見識な言葉が出てくるとは、まさに亡国の兆しですよ。

ペマ 中国という国をなにも分かっていない幹事長なんですね。

 小沢氏は、なぜ外交ではあそこまで不見識な人になってしまうんですか。日本の政治家は、北京に行くとみんなバカになる(笑)。

ペマ そうなんですよね(笑)。
 民主党政権になってからの日本を見ていると、昭和四十年に日本に出回った、『対日政治工作』(本誌二〇〇六年三月号に全文掲載)を思い浮かべます。
 『対日政治工作』には「民主的連合政権の次は共和制にすることです」と書かれているんです。あのような一連の事件を見ていると、民主党内にそのような空気が漂っている気がするのです。

 今の日本の状況は『対日政治工作』の計画通りになっているわけですね。“日本人民共和国”になる。

ペマ そうです。本誌一月号では、タイトルが“小沢人民共和国”となっていましたね(笑)。

 もし、鳩山首相の南京訪問が実現してしまったら、『対日政治工作』の完結編となり得ますね。民主党政権になってから、日本の国家が目の前で音を立てて崩れて行く感じがして仕方がありません。

現実化するアジアの危機

ペマ それは、社会構造からも感じられますよ。人間関係も崩れてきていますし、財界においても、かつての日本企業は常に国益を意識してビジネスを行っていました。たとえば、技術も日本のためにならないと判断すれば海外に出さなかった。
 ところが、現在は国益を無視して、とにかく儲けることしか考えていない。
 さらに、マスコミ報道も日本は事実だけを客観的に報じる傾向が強くあります。事実関係の裏側にあることを解説的に伝えることができていません。

 それはペマ先生に解説していただきたいですね(笑)。

ペマ いえいえ(笑)。ただ非常に残念に思うことは、スリランカで反政府武装ゲリラの暴動が起きたとき、マヒンダ・ラジャバクセ大統領が日本に援助を求めたんです。しかし、日本政府はゲリラに対して人道的に行動すべきだ、との建前論を述べ、ラジャバクセ大統領は幻滅しました。
 その結果、中国と手を結んで、中国の武器や資金、そして外交を使ってゲリラを一挙に鎮圧したんです。そのために、現在では完全に中国寄りの政権になってしまい、中国軍の港まで置くようになっているんです。
 中国はスリランカに港を作り、ビルマに軍を置き、パキスタンにも海軍を置いている。アメリカの第七艦隊がインド洋と太平洋を守るには協力国が必要なんですが、民主党政権は一月十五日でインド洋での補給活動から撤退するとし、代わりに中国が補給を引き継ぐという報道もある。

 今年、日本がどう行動するのか非常に重要な年であるにもかかわらず、またしても中国にやられますね。日米同盟や普天間基地移設問題など、民主党政権がこれ以上誤りを繰り返せば、アジア全体の危機が現実化します。

ペマ そのような危険性を今の民主党政権からは感じますね。

 今年で二〇〇〇年代が十年経ちましたが、日本社会全体がどこか溶解しているような状況です。
 今の日本に必要なのは、日本の伝統や文化を守る本当の保守運動ではないでしょうか。

(了)

※『WiLL』(2010年5月号)より転載

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