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2010年7月

2010年7月26日 (月)

中国人ビザ緩和で大丈夫か

収益あるが諜報もある
選挙中も安保に関心薄い国

 7月1日から中国人の日本への観光ビザが大幅に緩和されることになった。その理由は日本の観光業や経済団体から政府に対し経済効果を狙っての強い働きの成果である。勿論その裏には中国側の周到な戦略と戦術が隠されていることは予想できる。日本は昨年50万人の中国人観光客を迎え入れたと報じられている。そして関係者はビザの緩和によって5年以内にその数が倍増すると見込んでいる。

 また7月1日付けのディリー・ヨミウリによると、中国観光に携わっている観光関係者の話として、2008年に中国観光客が日本に落としたお金は120億円で、2012年までには430億円と4倍近くになると期待している。マスコミ報道などによると、これらの中国人観光客は神社仏閣などを拝観し、日本の豊かな伝統と文化に接し、日本の素晴らしい固有の歴史、伝統、文化を学ぶことよりもお目当ては最新の電化製品や有名ブランドの買い物である。

 しかも、中国人観光客の率直な意見として、皮肉なことではあるが自国のブランドはフェイク(偽物)が多く、日本で買うものは信頼性が高いということらしい。勿論この不況の中であるから多額の買い物をしてくれる中国のお客様を無視できないことは私も理解できる。ヨドバシカメラの関係者によると中国の客人は50〜60万円の買い物は当たり前のようで、1人の客が3〜4台のデジタルカメラを買うのも普通に見られるそうだ。私は多くの中国人が外の世界を見ることができ、視野が広がることや民主主義社会の自由な空気を吸ってもらうこと、そして日本の経済にいくらかでも貢献してくれること自体は喜ばしいことであると思う。

 だが、一気に何十万から何百万の中国人が入って来て、それに対する十分な長期的政策や対応策も慎重に考えず、ただ焦って実行に移すことは、行く行くはさまざまな問題が発生し、日本が困ることになるのではないかと心配になる。

 「007」でおなじみのジェームズ・ボンドの映画を地でいくような国際政治の現実が、ロシア人スパイの逮捕劇というアメリカ社会および世界を驚かせるニュースが発表された。中国は旧ソ連以上ではないにしても旧ソ連に勝る情報・諜報活動がなされているというのは世界の常識である。しかしこの類の問題に関して日本はそもそも無頓着であり、その上、目の前の経済的利益を追求することによって更に長期的国家の損益を理性的に見抜く力が欠如しているのではないか。

 一方、中国は建国以来国内外において絶えず緊張した環境の中で一党独裁のもと、国家が厳しい監視制度を確立し、また情報操作・収集にも力を入れてきている。例えばいわゆる新彊ウィグル自治区においても約4万台の監視カメラを配置し、4000以上の監視塔を建設したと発表した。昨年の7月の流血デモ以来、武装警察と軍による監視は強化され続けている。中国の治安維持のための予算も大幅増強されていると聞く。

 勿論チベットにおいても昼は私服の公安当局、夜は武装警察による24時間の厳しい監視の下に置かれている。このように民衆を国家によって統制・管理するということが当たり前の社会と、自由が何よりも尊いものとした無監視社会の文化が今後どのようにかみ合って行くのか興味深い。

 多量の観光客の中から自由社会に潜伏し純粋な気持ちによる自由を求める人と、特別な目的と命を受けて同様に潜伏を試みる者の区分けなど、日本はどのように想定し対応していくのだろうか。

 私は今回の国政選挙に関してもメディアは相撲界の賭博問題やサッカーのワールドカップのほうにニュースの関心を向けるような取り上げ方に多少の疑問を感じた。勿論これらの出来事も極めて重要であるが、しかし、日本国民と国家の将来を考える場合、私はメディアが国政選挙にもっと関心を示すように国民に対し報道を行い、また各政党や候補者も国家の安全保障や長期的な展望に基づく国益、並びに国の在り方に対し提言や提案を行うべきではないかと痛感した。

 つまり、私たちのこの国の先輩たちが多大な犠牲の上に作り上げてきた現在の繁栄、発展をどのように維持し、どのように次の世代にバトンタッチするかということをもっと真剣に考えるべきではないかと思う。今回の選挙は今後の日本の行方を大きく左右しうる重要な選挙であり、また国の安全保障は現在と未来を直接結びつける政策が必要とされる課題である。自国と他国、他民族との関わりも避けて通れない重要な課題である。そのような認識と検討項目を忘れないで欲しいと思う。

 確かに経済は重要であるが、目先の利益や数字上の利益だけを追いかけても根本的なところで国そのものの存在を危うくするようなものに発展しないよう十分考慮する必要があると考える。

※『世界日報』(2010年7月19日付)より転載。

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2010年7月22日 (木)

日印の核エネルギー協力に期待する

 今年2月末、日本の民間外交推進協会の主催で「日印原子力フォーラム」が開催された。インドからシャムサラン元外務次官・元首相顧問(環境エネルギーなど)、マニシャンカルアヤル前石油大臣を招き、日本からも原子力及びエネルギー関係のそうそうたる専門家のほかに直嶋経済産業大臣が来賓として挨拶するほか、政務官がパネラーとして出席し会を盛り上げた。
 私はエネルギー問題の専門家でもなければ、核の専門家でもないが、今アジア全体の経済発展と安全保障を考える場合に、日本とインドの強力は極めて重要でありインドと日本が包括的に今既に存在する良好な関係を更に強化できれば、と願う者の1人としてこの問題についても関心を寄せていた。既にドイツ、フランス、アメリカのみならず韓国までが積極的にインドに対し強力を申し出て、活発な売り込み攻勢を掛ける中、日本の良識ある財界人や経済産業省関係者も同様に危機感を抱き積極的な働きをインドに対して行っている。
 一方報道によれば、外務省は日本が唯一の被爆国として原子力供給グループ(XSG)においてもインドとの積極的な姿勢を示してきた。その立場に対して理解できないものではないが、世界の流れを見ると大きな国益において損害であると危惧してきた。
 今年の秋インドを公式訪問することになっているオバマ大統領とインドのシン首相は今までにオバマ大統領から大統領就任後初の国賓としての栄誉を受けており、両者の間には良好な信頼関係が構築されているので、今後政治、経済、エネルギー、安全保障においてまで更に関係が強化されると見られている。
 そのような中において日本が原理原則論をたてにやせ我慢をすることは世界情勢を必ずしも把握していないか、或いは原理原則論を守るべきことによって失うものが大きいのではないか。
 例えば戦後日本の奇跡的経済復興及び成長の背景には当時の政府の積極的な働きかけがあり、総理大臣のことをトランジスタのセールスマンとイギリスから皮肉られると同時に羨望されるように、現在は隣の韓国が大統領を先頭に活発に経済外交を展開しており大きな成果も得ている。インドにおいてもかゆいところに手が届くような柔軟性を示し、積極的に売り込み政策を実施している。
 インドにおいてまだエアコンは部屋を涼しくする目的のみならず社会のステイタスとしての意味合いが強く、そのため多少の騒音があっても体には強すぎる位の冷気を求めているのに、売り込む日本人は現地のニーズを必ずしも把握しておらず、自分の価値基準で精一杯努力しても結果的に不発に終わることもあるそうだ。外務省の原則論もこれに似ているような気がしなくもない。
 ただ幸いにして最近の外務省関係者の発言のニュアンスなどを見ていると、多少変わってきているようにも見受けられるので、折角、森元首相が築き、ナチュラルパートナーシップからグローバルパートナーシップにまで発展している関係をより確実なものにするためには、底辺の文化交流、中小企業の相互視察なども急務であるように思う。今年は答礼としてインド首相が訪日する年でもあるので、両国の関係が包括的に進むことを願いたい。

※『政界往来』(2010年8月号)より転載。

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