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2010年12月21日 (火)

「再建」のモンゴル政治、我が国現政権も学べ

 11月15日からモンゴル国のツァヒャー・エルベグドルジ大統領が日本政府の招待で公式訪問することになっている。モンゴルは人口273万人、国民一人当たりのGDPが3200$というと決して大きい国でもなければ、豊かな国でもない。普通の国ということになるであろう。

 しかしこの国は二つの面において非常に大きい国である。第一点は日本では相撲界で朝青龍、白鵬両横綱の大活躍で極めて存在感が大きくモンゴルという国の名前を知らない日本人はほとんど無いくらいである。勿論これに関しては旭鷲山と旭天鵬のパイオニア的役割も忘れてはならない。

 そして歴史上モンゴルがアジアの大部分を制覇した時、日本は神々のご加護と有能なリーダーそして国を守るという高い意識を持った日本人によってその制覇を阻んだが、お互いに騎士道と武士道の精神に基づく高い誇りと、国を守ろうとする精神と、国を拡張しようとする精神はお互いに天晴れと認め合ってきたような気がする。それがゆえに日本人の心にモンゴルは大きな存在となっている。

 もう一つの面においてモンゴルは156万強平方キロメートルの広大な国土を有し、世界の資源大国のひとつに数えられる。これは日本にとっては大変魅力的なことであり、日本の将来の発展のためにもこの国と協力し合うことは互いに有益であることをしっかり再認識する必要がある。

 今回中国の漁船による無法な侵入行為がきっかけとなって中国からレアアースの輸出を一方的に停止させられ、脅かしを受けた日本の総理大臣が偶然にも国連でモンゴルのスフバータル・バトボルド首相と会い、レアアースに関する協力を要請したところ快く協力する姿勢を示したと報道された。このモンゴル国は直接国土がつながっている中国、ロシアという隣国の他にある意味で遠く離れた日本を第三の隣国と措定し、日本を重視する外交の基本姿勢を打ち出している。

 このことからもわかるようにモンゴルという国は極めて親日的日本の国連安全保障理事会の常任理事国入りに関しても、ブータン、モルディブと共に一歩前に出て日本を支持する立場を鮮明にしてきた国でもある。これは多額なODAを通じての支援を受けていながら日本に反対する中国やその他の隣国もいる中、大変友好的行為と見るべきであろう。

 モンゴルとチベットは歴史的、文化的、人種的に極めて密接な関係にあり、現在のダライ・ラマ制度の出現にもモンゴルが深く関わっており、「ダライ」も「大海」を示すモンゴル語であり、一時ソ連共産党の抑圧によって禁止されたモンゴルでの宗教は同じチベット仏教である。近年ダライ・ラマ法王のモンゴル訪問は定期的なものとなっており、国民(チベット仏教徒)たちの間には根強い支持者が存在する。

 そもそも古い国同士は昔、お互いに認知する儀式などは必要なかったが19世紀あたりから国家間においてお互いが承認しあい、条約などを交わす慣習が生まれた。1913年チベットとモンゴルはお互いに承認する条約を結んだ経緯がある。しかし残念ながらチベットは中国の人民解放軍に占領され今日5つの行政区に分割され、支配されている。またモンゴルに関しても国土の半分以上もぎ取られ、いわゆる中国の内モンゴル自治区になっており、中国の侵略下でもっとも同化の進んでいる地域の一つである。

 人間が不死身でないように国家も国民の行い次第では消滅するものもあれば、新たに生まれ変わり過去の輝かしい歴史と伝統に基づく国の再生も珍しくはない。今回尖閣諸島問題で私が日本の読者に忠告を促したいのは現在の中華人民共和国という国は過去に侵略の犯罪歴のある国であり、その触手が日本に延びていることに目覚めてほしいということである。その面でモンゴル国民は今、国の独立を勝ち取り、その再建に臨んでいる姿勢は頼もしく感じる。

 1992年以来私はモンゴルの民主化の歩みを直接目で見、肌で感じて来ている。モンゴルの指導者たちは40代から50代が殆どで、現在のエルベグドルジ大統領もエンフバヤル前大統領も40代で大統領に就任されており、二人とも立派な愛国者であると同時にモンゴルの民主化、近代化に信念を持って国の舵取りをしている。

 中国とロシアという常に領土拡張を狙う覇権国家に挟まれるモンゴルと、日本の領土を不当に占領し、或いは領土権を主張する国と対等平等の原則で立ち向かっていくため、今後モンゴルと日本の多面的な協力関係を推し進め、根付かせるため日本側も今回の大統領訪問に対し、その基礎を盤石にするための稔りあるものにしてほいいと願う。中国やロシアからなめられているのは日本国が戦略、戦術を持ち党利党略を超えて国家と国益の認識をしっかり持っていない故であるように思う。その方面においてはモンゴルから学ぶことも沢山あると現内閣に進言したい。

※『政界往来』(2011年1月号)より転載。

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