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2011年1月

2011年1月28日 (金)

対談 日本が「中国化」される恐怖(ペマ ★ 石平)

領土も国民も脅かされている
中国の正体  こう教えよう

このままでは日本はチベットやウイグルと同じく「中国化」される!

しかし世界は、アメリカの対インド重視をはじめ「中国包囲網」形成へ──。

今こそ日本は「地球市民」という“幻想の教育”から脱却し、国家意識を取り戻せ!

 
八木秀次(以下、八木)
 昨年は尖閣諸島沖のわが国領海で中同漁船が海上保安庁の巡視船に故意に衝突してきた事件をめぐって、政府が犯罪者である船長を釈放するなど中国への弱腰ぶりが目に余りました。獄中の民主活動家、劉暁波氏にノーベル平和賞の授与が決まると猛反発するなど、中国政府は人権弾圧も際立たせました。そうした国の実態を学校現場でどう教えればいいかということについて、チベット出身の政治学者、ペマ・ギャルポさんと中国生まれの証論家、石平さんに語り合っていただきたいと思います。まず石先生、中国で今、何が起こっているのでしょうか?

日本解体のシナリオ

石平(以下、石) 天安門事件以来、中国共産党はどうやって政権を維持してきたかというと、一つはナショナリズムをあおり立ててきたということ、その一環として反日教育もやってきました。もう一つは経済成長戦略。人々に金をもうけさせるということです。2つの戦略はある意味では成功し、この二十数年間、政治の安定を維持してきました。しかし裏目に出たこともあります。反日教育をした結果、外交の足かせになりました。常に国内の反日感情の爆発を恐れなければならなくなったのです。
 経済成長戦略も危ういもので、技術革新で実体経済を成長させるのではなく、お金を大量に発行してバブルを作り上げた結果、深刻なインフレになっています。不動産バブルも弾ける恐れがあります。庶民の生活が圧迫され、政治が不安定になる可能性があります。不安定になると、不満をそらすために対外的に強硬になります。

ペマ・ギャルポ(以下、ペマ) 付け加えさせていただくと、尖閣諸島への挑発は、日米関係がぎくしゃくする中、日本がどう出るか試そうという国外的な問題に加え、国内向けのメッセージがあります。2012年に開かれる次の共産党大会に向けて、軍が影響力を見せつけようとしていることが背景にあります。それから、インターネットの言論統制が限界に来ていて、世論のガス抜きをする必要があります。中国人は中華帝国という意識を持っていますから、ああいうことをすれば国民は喜ぶんです。

八木 ペマ先生がおっしゃるように、普天間基地問題で日米関係が悪くなって、日本側がすきを作りましたね。民主党は小沢一郎氏を団長とする大訪中団を送り(09年12月)、朝貢外交のようなことをしました。天皇陛下と習近平氏のご会見を無埋矢理設定させるなど、押せば大丈夫だと判断したのでしょう。

 八木先生がおっしゃる通り、小沢訪中団以降、中国は日本をなめきっています。

ペマ 小沢氏はあのとき、胡錦濤国家主席に「私は人民解放軍の野戦司令官だ」と言いましたが、本当に軽率です。

 外交の場では信じられない言葉です。

ペマ 総理大臣を目指している人の言う言葉ではありませんね。

八木 日本人の感覚では社交辞令ということなんでしょうが。

石 それは外交の場では通用しません。国際社会の厳しさが分かっていません。言葉一つで国が滅ぶこともあるんです。教育現場でもそういう大事なことを教えていませんね。

ペマ まさにその通りですね。胡錦涛は小沢氏の発言の全体をとらえたと思いますよ。小沢氏は「こちらのお国に例えれば、解放の戦いはまだ済んでいない」と言いました。
 中国共産党が作ったとされる「日本解放第二期工作要綱」*には日本に民主連合政府を作って、その後、日本人民民主共和国を樹立し、天皇を戦犯の首魁として処刑するとあります。小沢氏はそのシナリオ通りに動いて「まだ戦いの途中ですが、ここまでやりました」と報告しているのと同じです

*1972年、西内雅(歴史家・故人)がアジア歴訪のさいに入手した公式文書とされる。中国共産党の日本工作が具体的に記されている。

 民主党政権があと数年続けば、中国共産党のシナリオが現実になりますね。

ペマ そうですね。例えば外国人参政権がそうですが、既に民主党の代表選は外国人の党員・サポーターに投票権があります。大使館の命令ひとつで在日中国人が大量人党して、首相を決めることができるのです。

中国包囲網に参加せよ

 政治家も一般国民も中国に警戒心を持たなければいけません。中華人民共和国の恐ろしい本資をまだ分かっていません。

ペマ ダライ・ラマ法王の代表団と中国が対話に向けて接触し始めた1979年から30年以上たちますが、法王の誠意は踏みにじられ続けています。

 チベットは知らず知らずのうちに中国にのみ込まれていきました。日本人はまさか中国の自治区になるとは誰も思っていませんが、チベット人もウイグル人も最初は想像しなかったのです。中国に対する甘い幻想は捨てなければなりません。例えば、昭和53(1978)年に鄧小平が尖閣問題を棚上げしようと言いました。領土問題などないんだから、棚上げも何もない。たとえばの話、八木先生の腕時計はあくまでも八木先生のものですが、私はそれが欲しくて、「八木先生のものか私のものか棚上げしましょう」と言っているのと同じです。ところが日本政府はその罠に引っ掛かってしまった。逆に喜んだのです。

ペマ そうなんです。当時、私はテレビ番組で「日本のものなのに棚上げも何もない。時間稼ぎだ」と言いました。しかし日本は安心してしまいました。

 安心して尖閣諸島の実効支配も進めませんでした。すると中国は江沢民時代の1992年に領海法を作って尖閣諸島を自分たちの領上だと宣言してしまいました。法律を作れば自分の領土にできると思っている。沖縄だって、いつ中国の領土だと決められるか分かりません。そういう国ですよ。

ベマ 反日デモで、沖縄は中国の領土だと叫んでいましたよ。チベット問題で中国は、最初は平和5原則(1 領土・主権の相互の尊重 2 相互不可侵 3 相互の内政不干渉 4 平等互恵 5 平和共存)でインドをだましました。チベットに入ったことも「われわれはチベットを中国化するわけではありません」と言いました。ところが約束を破ってチベットを征服しました、それだけでなく、国境紛争でインドを攻めました。
 中国は時間稼ぎをするのです。もう一つは相手の出方を見て、先手先手を打つのです。国民に刺激を与えるために戦争しなければななりません。ですから中国は共産主義ではないんです。本質的には領土拡張主義、植民地主義、帝国主義…。

八木 中華思想(中国を文明の中心とし、周辺を野蛮国として侮蔑する思想)…。

ペマ そうです。

 チベットがのみこまれていったプロセスを見ると、中国の本質が分かります。チベットを奪った時代は陸上での拡張でしたが、1980年代半ばから海での拡張になりました。中国は「第2列島線」の内側、つまり台湾、フィリピン、沖縄本島、尖閣諸島、そして日本列島を中国海軍の支配下に置く、あるいは併合しようとしているのです。その第一歩として、中国は昨年から、南シナ海は中国にとっての「核心的利益」だと言い始めました。

八木 周辺諸国はどうすればいいのでしょうか。石先生は、民主主義や人権尊重などの価値観を共有する国家との関係を強化しようという安倍政権の「価値観外交」を評価していらつしゃいましたね。

 昨年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の前にアメリカのオバマ大統領はアジアを、歴訪しました。インド、インドネシア、韓国、日本…。中国には行かなかった。中国の周りの民主主義義国家に行ったのです。オバマが安倍さんの代わりに価値観外交をやっています。

八木 オバマ大統領は最初は中国に好意的でしたね。

 そうです。やっと中国の本性が分かってきたんです。分かっていないのは日本の民主党政権だけです。日本が生きていくには日米同盟を強固にするしかありません。中国を封じ込めることこそ、アジアの力のバランスを保つのです。日本は今そこに気付かないと、大変な危機が訪れます。

八木 しかし民主党政権は中国を盟主とする「東アジア共同体」を目指しています。

 とんでもない話です。強盗が家に入ろうとしているときに、強盗と仲良くなるようなものです。

ペマ アメリカは92年から中国封じ込めの政策に転じ、94年から本格的に動き出しました。98年にインドが核実験を行いました、日本は政府開発援助(ODA)を停止して、政府高官も会わないという制裁を実施しましたが、アメリカは形だけの議会決議をしたものの、それをきっかけにインドから優秀な留学生を受け入れたりして交流を深めました。オバマ政権発足後、初めて訪米した国賓はインドのシン首相でしたし、昨年のオバマ大統領のインド訪問は3泊4日という異例の長さでした。

 あれはすごいメッセージです。

ペマ オバマ大統領はそのとき、「アメリカとインドとの関係は、21世紀を定義づけるようなパートナー関係だ」と言いました。アジアで中国に負けない外交が多少なりともできるのは、免疫があるインドでありベトナムです。日本はそういう国々と組むことが必要です。

八木 各国が中国包囲網を作る中で必ずほころびを作るのが日本です。天安門事件(93年)の後、各国が制裁をする中で、日本は天皇陛下のご訪中のために緩めてしまいました。

 ご訪中で助けられて、中国は元気になったのですが、元気になって何をやったかというと日本たたきです。

八木 反日教育が始まりましたね。

「地球市民」が世界滅ぼす

ペマ 中国は日本に対する心理作戦に既に成功しています。その結果、日本の経済界は国家の利益じゃなくて自社の利益しか考えられなくなりました。中国で商売できなくなったら困るというのです。そうじゃないんだということを教育の場できちんと教えないと、日本は国を維持できなくなりますよ。

 企業も個人も普段は国家の存在を考えずに済んでいますが、最後のよりどころは国家ですよ。21世紀になって、国家がなくてもいいという風潮がありますが、中国や北朝鮮の脅威があるアジアでは国家の存在がますます重要になっています。

ペマ
 私は平成17年に日本国籍になりましたが、それまで40年間、チベットからの難民として無国籍で日本にいました。無国籍ということは外国に出ても、万一のときに保護してくれる国家はないんです。飛行機が落ちても、どこの国も骨を拾う義務はありません。日本人は日本国のパスポートを持っているからこそ守られているんです。よく「私は国際派だ」という人がいますが、国際という言葉自体が、国と国のつながりという意味です。お互いが国家意識を持って、どう付き合っていくかということが国際です。現実の世界がどうなっているかということを学校で教えなければなりません

八木 日本の義務教育を終わる中学校社会科の最後のぺージには「地球市民を目指して」と書いています。「国民になりましょう」ではないんです。ユートピア思想というか、夢物語というか…。

ペマ 偽善者ですね、そういう教科書を作っている人は。

八木 悪意があると思いますね。国民意識を相対化して、日本国民がみんな「地球市民」だという意識を持てば、日本を侵略しようと思っている国にとって一番都合がいいんです。

 そうですね。問題は、日本人が勝手に「地球市民」だと思っても、周辺の国家の国民は誰もそうは思っていません。

八木 憲法教育や政治教育で強調するのは、日本国憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」ですが、まず「平和を愛する諸国民」というのが嘘です。「われらの安全と生存を保持」するために「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」する「われらの努力」ではないんです。自分の国は自分で守ると規定していないんです。

 日本国憲法はまず世界認識を間違違っています。その幻想の上に国民の存立を託すということは、国家の義務を放葉しているということです。

ペマ 資源の問題や地球温暖化など地球的課題を解決するために「地球市民」的な考え方をするのは構いません。しかし国家を否定するのは完全に間違っています。理想を掲げるのは結構ですが、現実を教えなければなりません。それが教育です。

 いや、「地球市民を理想とする』こと自体が日本の国益の障害になっているんです。国家を破壊することを前提とした、悪意に満ちたイデオロギーですよ。

ペマ 「地球市民」と地球的規模で物事を考えることは、区別しなければなりませんね、明治維新の志士たちのほうが、今よりはるかに地球的規模で物事を考えていました。

 しかも国家意識を基本にしていました。

ペマ 今、グローバリゼーションを言っている人は、映画の「007」に出てくる悪人のように世界征服を目指しているんじゃないかとさえ思いますね。日産自動車のカルロス・ゴーン社長は年間8億9000万円の報酬をもらっているそうですが、彼は5000人の社員をクビにしました。5000人にはみんな家族がいるんです。彼がどれだけ日本のことを考えているかというと…。

 そもそも考える義務もありません。

ペマ そうです。グローバリゼーションによって、世界の、一握りの人間が権力と富を手に人れ、その中で抗争が起きる…。そして、「007」の悪人のように世界制覇を考えるような者が出てくるんじゃないかと思いますよ。「地球市民」の素張らしさを本気で信じている純粋な人たちは、それを手伝っていることになるんです。

 ゴーン氏は日本社会の中で仕事をしていますが、日産を辞めてどこかの国に去ったら、もう日本は関係ありません。日本の経営者がゴーン氏のような無茶をしないのは彼らが日本人だからです。日本という民族共同体の中で自分の名誉を考えなければいけないのです。いくらグローバル化といっても、人はあくまで民族共同体の中に根を下ろしているのです。その民族共同体の政治的な形がすなわち国家です。

ペマ 国家意識は教育によって活性化します。

 どこの国の教育も一生懸命、民族共同体の意識、国家意識を教えています。反対のことをやっているのは日本だけです。

八木 よくもっていますね、わが国は。

 よくもっていますよ。不思議ですよ。

ペマ それは、ご先祖さまの努力の結果ですね。、寺子屋だとか、明治以降の教育だとか。しかし、これから先は、その貯金は底をつくのではないでしょうか。

八木 95年に中国の李鵬首相(当時)は「日本などという国は20年後には消えてなくなる」と言いましたが、あと4年ですね。

石 李鵬の発言はばかげていますが、そうなりつつあるのが恐ろしいですね。

ペマ ばかげていますが、彼らは日本解体のシナリオを実際に描いていますからね。だから言えるんです。

八木 新年から暗い話になりましたが、これが日本の現実です。私ども日本教育再生機構が事務局を務める「教科書改善の会」が支援する育鵬社の中学校歴史・公民教科書が今年登場します。国家意識をきちんと教える内容になっていますので、そこに明るい未来を託したいと思います。両先生、今年もよろしくお願い申し上げます。

※『教育再生』(平成23年1月号)より転載。

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2011年1月13日 (木)

激動するアジアの中の日本

☆ 第91回安全保障フォーラム(平成二十二年十月二十五日)での講演録 ☆

  前  言

 アジア地域には、中国とインドの二つの大国がある。私は、この二つの国に関係している。
 アジアの他の国から見ると、日本は二つの面で、普通の国ではない。ひとつは、日本の宗教観である。ペルーの炭鉱での落盤事故で三十三人を救出する状況を、日本のテレビや新聞は、連日繰り返し報じていた。鉱夫達が救助された時、皆で国歌を唱って国家への感謝の気持ちを現している姿は、立派であり、また団結の強さを感じさせ感動的であった。この救出が成功したのは、科学の力でも精神力でもない。木当の力は、宗教の力である。人々の信仰心の力である。
 日本には、政教分離の考えから、宗教を排除するような動きがある。それぞれ、人々の崇拝し信仰する宗教の力は、最後の心のより所として作用する。また、日本は、首相や学校の先生でさえ国歌を歌うことに異論を唱える国であり、今や皆が一緒に唱える国歌はないのではないだろうか。これらの二つの点からして日本は、普通の国ではないと思う。
 もうひとつは、『国を守る』という意識の欠如である。アジアの諸国では、日頃から、最悪の場合には軍隊があり、軍隊が『国を守る』という教育がなされている。私が日本に来た頃(一九六五年)、私の同級生は、親が自衛官であることを隠して、身分を偽っていた。親が自衛官であることを隠そうとするのは、日木の自衛官の子供ぐらいであろう。これも普通の国ではないと思う。

  国際情勢の変化

 一、二極化から多極化へ

 戦後から一九九〇年まで、世界は二極化していたが、一九九〇年のソ連の崩壊とともに、二極化が多極化の世界となった。ASEANも、もともとは、ASEAN五ヵ国が、共産党の南下に対して団結したのである。今は、対共産党の目的も消え、ASEAN10の十ヵ国となっている。現在は、ASEAN+3(日本、中国、韓国)に日本が人っているが、日本は、オブザーバーであり、決定権はない。さらには、旧トルコ系であるスタンが付く国々(キルギスタン、ウズベキスタンなど)は、上海機構をつくっている。これにも日本は蚊帳の外である。
 南アジアでは、南アジア地域連合(SAARC)による勢力があり、八つの国が加盟していて、英国制の制度をもち、アジア地域では非常に連帯感が強い。SAARCでは、たとえば、貿易も、自由化しており、医者、弁護士などは、資格があれば、八ヵ国どこの国でも通用する地域社会を作っている。
 印パは、非常に仲が悪いようだが、実は、カシミールの紛争は、現地〈カシミール〉では、戦っているのに、他の地域では、クリケットの試合をやっているように、大婦喧嘩みたいな日常茶飯事なのである。それだけ、インドとパキスタンは関係が深いのである。
 また、南アジア地域連合でも、八ヵ国は、日本を決定権のないオブザーバーとして加えている。その意味で、日本は、どこにも軸足はなく、孤立しているといえよう。
 何故、日本は、孤立しているのかというと、日本は、米国ばかりを見ていた。また、アジアに関しても、日本が発言することや、いろいろと介人することに躊躇してきた。このため、どこにも入ることができず、日本は孤立してしまった。

 

二、一九九〇年後の大きな変化

 米国は、サウジ、イランを支援し、共産主義の非宗教国家と対峙した。しかしながら、冷戦後世界は大きく変わった。このため、サミュエル・ハンチントンは『文明の衝突』で正当性を強調する。
 米国は、戦争をする場合は、必ず正当性を作り出す。たとえば、日本が経済大国となった時、日本叩きのために『ジャパン・イズ・ナンバーワン』を書き、米国の中に危機感を煽っておいて、日本叩きの正当性を証明している。また、日本の安保理人りが主張された時も、結局、日木を支持したのは、モンゴル、ブータン、モルジブの三ヵ国であった。最も日本の安保理人りに反対したのは、米国であるという隠された事実を日本は、もう一度考え直さなければならないであろう。

 

三、中国の台頭および米国の疲弊

 中国は、四つの近代化で、ランド・パワーからシー・パワーに変貌しており、米国のニクソン大統領は、日本とは頭ごなしに、一九七二年に米中関係改善を成し遂げている。その時点から、インドは、バングラデシュとパキスタンに囲まれた。
 インドは、バングラデシュの独立を支援し、米国は、パキスタンを支援した。インドはこのため、旧ソ連と組むしかなかった。選択肢は、旧ソ連と組むしか方法はなかったのである。一九九〇年頃、米国は、中国を助けたことを疑問視し、その後、インドを対中国の牽制国として、オルブライト国務長官が、大変持ち上げた。クリントン大統領がインドに行って、さらにインドは大国であると称賛した。もちろんインドが核を保有したことも当然であるが、インドと米国の貿易も活発化している。
 日本も二〇〇八年に森首相がインドを訪問している。以後、相互に首相クラスが相互訪問している。今日は、インドと日本がEPA協定(日・インド経済連携協定)を締結するという画期的な日になることをうれしく思っている。
 米国は、戦争により疲弊(人的、経済的)しており、次第に衰退している。今後、力を蓄えてくるのは、中国であり、これに対抗できるのは、インドぐらいであろう。米国は、軍事力の面でも衰退しており、米国の本音は、韓国、日本にも力をつけて欲しいと思っている。韓国からは、三万人の軍人が撤退し、日本からは、八千人が撤退するように、米国の経済的疲弊は、海外の軍事力の展開にも影響をおよぼしている。
 アジアにおいて、多少とも中国に対抗できるのはインドしかないと米国は思ったのである。ただし、チベット問題では、インドは、中国に対して屈辱的な敗北を味わっている。
 インドは、チベット問題に対しては、心の準備をしていなかった。ネール首相は、周恩来首相を信頼していた。このため、中国との関係から、十七ヵ条協定(一九五一年五月)をのむようにチベットに勧めていた。ネール首相は、中国のいう「インドと中国は兄弟である」というキャッチフレーズを信じて疑わなかったのである。現実は、違ったのである。

 

四、インドと日本

 インドと日本は、「ナチュラル・パートナー」となりうる関係である。特に、中国に対しての戦略的パートナーとしての価値がある。EPA締結により、日本とインドの貿易関係は、多分に日本が有利であり、インドは不利な点が多い。他方、インドは、「損をしても、長期の利を得る」ことを考えている。
 また、インドは、東アジア共同体では、日本がイニシアティブをとって、リーダーとなりうると思っている。ただし、中国をいれたASEAN+3ではなく、ASEAN+米国、日本、韓国、ニュージーランド、豪州、インドなどを入れた機構が必要であると思っている。ASEAN+3では、日本は、恨みに思っている国に囲まれる。反面、インドと日木は、民主主義という同じ価殖観を持っており、対中国という観点から、インドは十分戦略的パートナーとなりうる国と思う。

 五、インドと中国

 中国は、経済、軍事、政治的な力を伸ばしている。特に、スリランカの港などを押さえている。海軍力を展開し、あちらこちらに手を出している。これで各国の反応を見ているのである。華僑は、五千万人が労働者として、外国で活躍しており、印僑も、約二干万から三干万人おり、印僑は、華僑と異なり、ハイレベルな知識人であり、国会議員やオピニオンリーダーとして活躍している。
 インドと中国は、四月、偶発事件の勃発防止のため、ホットラインを設置したが、中国は、うまくいけば、そのままで、うまくいかなければ、ホットラインを使うなどしたたかである。

 

六、インドと韓国

 韓国は、日本に追いつき追い越す勢いがある。韓国企業は、インド人が欲しいものを作る。他方、日本企業は、ブライドがあり、インド人のいうことには、耳を貨さない。例えば、インドでは、冷房が効いていることがステータスであり、うるさい音や強力なクーラーの方がいいのである。日本企業は、エコのため、静粛性などの性能を全面にアピールしているが、インドでは価値観が異なるのである。韓国では、大統領までがインドにやってきて、上手に商売をやっている。今のままでは日本は、自己満足に陥っており、商売も危ないと思う。

  今後、日本はどうしたらいいのか

 

一、日本のアジア回帰

 日本が、アジアに機軸を置くことである。どこまでがアジアであるかも問題である。私は、アジアは、少なくともトルコまでがアジアに包含されると思う。日本は、アジアの一員であるというアピールをすべきである。

 

二、人材の育成

 米国のフルブライト奨学生制度は米国に留学する学生を奨学金で支援し、米国のための人脈を造ることが目的である。
 中国から日本に留学している学生を見ると、大変かわいそうである。日本に留学する時、ブローカーにお金を取られ、さらには、借金を重ね、苦労して卒業している。中国のGNPは、世界第二位の経済力であるが、国民一人一人は、まだ貧しいのである。この状態では、帰国すると、反日運動の真っ先に立つことになる訳である。日本へ留学した子弟で、有名な知識人は、マレーシアのマハティール首相と中国の趙首相の子弟ぐらいである。有名人の子弟で日木へ留学する者がほとんどいないのが実情である。
 英国は、留学生を大切にしており、将棋の駒として使っている。留学生の育成についても、国策として考える必要がある。

 

三、インドとの戦略的パートナーを確立

 インドと日本は、安令保障上、対中国の牽制として、戦略的な関係を築けるであろう。中国は、人口約十三億人の大国であるが、インドもパキスタンおよびバングラデシュなどを併せると、約十三億人となる。特に、日本からの提唱によって、APECでの日木のリーダーシップが期待される。長期戦略として、日本は、インドと手を組み、インドはAPECに加人して共同歩調をとることである。日本は、積極的外交により、G8やAPECなどで、アジアの一員としての長期戦略を確立することが必要である。

  今後日本の『国を守る』意識としてどうしたらいいのか

 

一、情報収集活動

 ウサギは、周りの敵に対して、長い耳を持って情報を収集している。日本も憲法を改正して、情報活動を活発にして、わが身を守るべきである。日本は、憲法第九条があり、中国は、日本が憲法の制約を受けていることを知っている。だから今回の尖閣諸島問題のように無理難題を突きつけてくるのである。お金をどういう風に使うかはいろいろとあろうが、判断のための情報収集にお金を使うのが賢明である。米国に頼らない日木独自の情報組織を持つことである。このために政策(長期戦略)を作るべきである。

 

二、皇室への敬い

 現在の日木を見ていると、テレビの評論家が話す、皇室に対する言葉使いおよび態度など非常に腹立たしいものがある。(外国人の私が言うのも何ですが)国民は、もっと皇室を敬うべきである。我々は、皇室こそ日本の中心的存在と思っているが、最近、日本人の皇室を重んじる風潮に欠ける発言が大変気になる。皇室こそ、日本民族の中心の柱であり、我々のダライ・ラマ法王も民族の柱である。さらにいえば、学校の教育にも「皇室への敬い」の内容をもっと人れることである。

 

三、国家のビジョンがない国家

 以前の日本の共通の夢は、「先進国に追いつけ、追い越せ」がビジョンであった。今は目標を失っているように思われる。明確なビジョンを持っている国は、間違いなく発展する。今は、衣食住も足りて、目的を失っているような日本が見える。外から見ていると、日本は、外交は自民党がしっかりやり、内政、例えば東京都、神奈川県、大阪府など主要部市部では野党がしっかりやるように、棲み分けがはっきりしていた。大変上手い使い分けをすると思っていたしかし、今は、外交も内政もめちゃくちゃである。今後の日本の位置づけとして、現状をしっかり認識することである。過去を見ると、将来が見えてくるものである。
 要は過去に何をやったかである。これが今後の将来の糧となってくるのである。今は過去の財産を食いつぶしているだけである。過去と現在と未来は、それぞれ繋がっているのである。

  質疑応答

 

米国などの留学生などの育成について

 米国は、フルブライト奨学生制度など、他国の要人の子弟を留学させている。日本でも、宮澤喜一氏などは、米国に留学したコアになる人物であった。留学生にも、玉葱のように何層もの人間関係がある。要は、玉葱の核(コア)の部分を作ることである。インドも日本の外務省の留学生ブログラムによって何人もの留学生のプログラムがあったが、ほとんどは、技術系・農業系の留学生であり、要人の子弟はほとんどいなかった。

 

中国観について─鄧小平の考え方

 鄧小平は、「ねずみを取る猫は、いい猫である」など非常に現実主義派である。私が、中国に行った時、鄧小平は、いい人であると思った。実は違ったのである。当時、チベットは、ダライ・ラマ法王を擁立していたが、鄧小平は、チベットが「民族自決」を唱え、ソ連と共闘することを最も恐れたのである。このため懐柔策を使ったのである。中国は、中国四千年の歴史というが、歴史的には日本が古い。中国は、まだ、中華人民共和国ができて、わずか半世紀である。中国は、「力」を信じている。説得力には「力」が必要なことを過去の教訓から学んでいる。

 

日本とインドは、どのような戦略的関係が必要か

 インドは、チャンドラ・ボースなど歴史的にも日本に近い人物がいる。バジパイ首相などは、日本贔屓である。インドと日木の基礎的な繋がりは、第二次大戦後、日本が復興したが、まだ、日本からのODAをもらう国もなかった。そんな日本に対して、最初に来日したのがネール首相である。その時、初めてインドは、日本のODAをもらう国となったのである。日本の皇室を初めてお迎えしたのもインドである。ちなみに、インド国内において、アンケート調査をすると、インド人の好きな国は、日本、米国、英国の順である。他方、三十年間、日本との交流が絶えていることも真実である。インドとしては、「いまさら」という感があることもまた疑いのないことである。
 また、インドは、非同盟諸国のリーダーでもある。百十ヵ国の非同盟諸国のリーダーである。前回の常任理事国の時、米国は、日本に「拒否権のない常任理事国」ではと打診している。
 米国こそ、もっとも日本に安保理常任理事国になってほしくないのである。外交面では、いい格好をしても本音は異なるのである。今後の国連安保理常任理事国は、日本とインドがもっとも相応しい国である。現在のインドと日本は、相思相愛の関係にも似た関係であろうと思う。
 経済的には、インドは、中束へのマーケットの入り口である。いすゞ自動車はこのため、インドのみならず、今後は中東のマーケットを狙っている。インドは、パキスタンなどイスラム諸国と友好な関係をもっているのである。

 

対中国戦略として日本は、今後どうしたらいいのか

 日本としては、特に「スタン」とつく国との友好をもっと深めるべきである。日本の戦略として、中国を牽制するためには、中国を包囲するような国々との友好が必要である。ウズベキスタン、アフガニスタン、カザフスタンなど、今は中国に近い国もあるが、木来は、中国に信頼感をいだいていない。この地には、レアアースなどの鉱物資源が牲冨である。
 さらに、インドとは、「2+2」の軍事交流を活発化させることや、レアアースなどの希少価値の鉱物資源の確保する観点からも注目したい。
 また、日木の閣僚で、もっともインドに貢献があったのは、野呂田元大臣であった。野呂田元大臣は、インドの最高の勲章を授与されている。この最高勲章は、日印関係会長であった桜内義雄元衆院議員でもなく、森元首相でもない。インドが、一九八九年の核実験後、各国の断絶に会い、大変困った時に助けてくれたのが、野呂田元大臣だったのである。インドは礼に対しては、礼で応える国である。
 ただ、インドは、多民族国家である。文化も異なる。このたの、言葉の定義づけをする必要があるのも否めない。他方、中国も、多民族国家である。漢民族に対して、孫文は、「中国の五民族」といい、「中華民族」とは、胡錦濤主席が初めて使った言葉である。
 このように、中国と付き合うのは戦略的忍耐が必要である。最後になるが、インドと中国は、ヒマラヤを越えたトランスヒマラヤレールウェイを建設中である。これが出来ると、マラッカ海峡を越えての海上からの輸送が一変する。将来は、この地域に、壮大なベンガル経済圏が出来上がるであろう。(文責:編集者)


〈参考〉
○上海協力機構(SCO)─中国、カザフスタン、タジキスタン、ロシア、キルギス、ウズベキスタン(六ヵ国)
○南アジア地域協力連合(SAARC)─バングラデシュ、インド、ネパール、ブータン、モルディブ、パキスタン、アフガニスタン、スリランカ(八ヵ国)
○東南アジア諸国連合(ASEAN)─ラオス、タイ、カンボジア、マレーシア、ミャンマー、インドネシア、フィリピン、シンガポール、ブルネイ、ベトナム(十ヵ国)

※『郷友』(平成23年1・2号)より転載。

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インドとの関係強化の年に

自主独立の精神に学べ

日本は「三原則」から脱皮を

 昨年はとにかくインドがもてた年であった。12月には中国の温家宝首相とロシアのメドベージェフ大統領訪問で最後の仕上げをしたが、その間にアメリカのオバマ大統領、フランスのサルコジ大統領、イギリスのキャメロン首相が訪印している。つまり全ての国連安保理常任理事国がインド詣でをしたことになる。

 これはインドがただ単に経済力をつけたからだけでなく、地政学的にアジアの平和と安全に対し、アメリカの総合的力が衰退する一方、中国が急激な軍事大国になりあがり、アジアの覇権国家としての野望を表しているからでもあると言えよう。中国は現在日本のみならずアジアの殆どの国と国境問題や領海問題を抱え、しかも近年軍事力を著しく強化し、挑発的な行為に出ている。

 これら世界の大国あるいは核保有国は勿論それぞれのお国事情により、目指すものには多少違いがあるものの、それぞれが精一杯地球的規模でものを考え、自国の国益を増大しようと励んでいることは言うまでもない。インドもしたたかであり慎重に今の状況を踏まえ舵取りをしている。その中でもインドは日本に対し、極めて温かい眼差しで見ており、例えばEPA(経済連携協定)の日本との締結に関しても、首相自ら長期的展望で促進するように周囲に指示を出したと言われる。そしてインドの首相は2000年以来、慣例となっている日本訪問を実現し、両国政府首脳は現在の良好な関係に満足するとともに、更に多方面において協力を深めることを含んだ合意書などに署名している。

 関係筋によると日本インド両首脳は中国に関しても率直な意見交換ができ、インドは中国との国境問題に関する接し方などについて自国の経験を提供した。勿論、両首脳は中国を刺激すまいと慎重に言葉を選んでいる様子も窺える。しかし現実問題としてこのやっかいな中国という、世界の常識や慣習を無視し続け、未だに植民地を抱え、さらに領土拡張を着実に狙っている国に各国が手を焼いていることも紛れもない事実であろう。

 日本の新しい防衛大綱もこの辺を一応考慮し、中国からの脅威を正確に把握した軍備配置なども行っていることは、この20〜30年の政策からは少し普通の国らしさを感じさせるものである。しかし一方、依然として防衛費を削り、武器輸出三原則の維持を見ると、私はまだまだ日本が現実の世界から離れ、幻想の世界、つまり他国が意図をもって平和主義を日本に染み込ませることで日本の安全保障に対して手かせ、足かせを掛けていることに気がついていない日本人が多いことに強い危機感を覚える。先のインド首相の訪日に対し、両国政府関係者は大変満足しているようである。特に両国の外交官がこの2年間ほど大変な苦労を重ね尽力されたことつぶさに見ている者としてはそれに異論が無い。

 今の国際環境を考慮し将来のアジアの平和と安全を考えた場合、インド首相訪日の際により具体的な成果を期待していたのも事実である。特に原子力技術などをも含むエネルギー問題に対し、より具体的な協力関係を期待していただけに残念でならない。'その理由は日本側の核に関する三原則など憲法9条に見えるような、手かせ、足かせを掛け原則論から抜け出せない時代遅れな世論とマスコミにその責任があるように思う。

 隣の韓国が日本より何歩も先に進んでインドとの関係に積極的に動いており、核の平和利用も含め現実的な路線を大統領自ら積極的に働きかけをしている。インドの隣のパキスタンといい、韓国の隣の北朝鮮の核は、中国の絶大なる協力と後押しを得て、その政権を維持するだけでなく核の拡散に手を染めていることを、インドと韓国は互いに共通の認識としている。従って、この両国が密接な関係に発展することは当然のプロセスであり、両国間には既に自由貿易協定も結ばれている。

 韓国も日本同様、毎年のインド政府首脳との相互訪問を提言しているが、今のところインドは従来の友好関係にあったロシアと日本との間にのみ、このような関係を持つことで、日本を戦略的クローバルパートナーとして重要視しようとしている。昨今、日本の世論調査など見ても少しずつ中国の実像を認識し、他方インドを巨大な併罫罫難て㌔茄羅勧持の主役であることを認識しつつあるように思う。

 しかし、それが具体的な行動や意味のある関係を構築するにはまだまだ人材不足であるように思う。役人同士や企業のトップがメディア向けの調印式を華々しく行うよりも、日印両国間の学術交流、観光促進においては仏跡巡礼に加えエコツーリスムや医療ツーリズム、中小企業の視察などを通して草の根の交流に両国が力を入れる方が遥かに建設的であり急務であろう。

 加えてインドは長い植民地からの解放以来「自主独立」を尊び、自国の自主自立を阻む如何なる手かせ足かせにも応じないのがネール以来の一貫した姿勢である。日本もそろそろ独立国家として、この精神に学ぶべきではないだろうか。

※『世界日報』(2011年1月5日付)より転載。

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2011年1月10日 (月)

(5) チベット難民とチベットの現状


[解説] ペマ・ギャルポのつぶやき第5回は、ネパールで追い返される亡命チベット人とチベットの現状について。
(7分28秒)

2011/01/03

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(4) 中国語教育に抗議するチベット人学生たち


[解説] ペマ・ギャルポのつぶやき第4回は、チベット本土や北京で中国政府の中国語教育の政策に抗議するチベット人学生たちについて。

2010/12/27

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(3) ダライ・ラマ法王と胡錦濤国家主席の訪日

[解説] ペマ・ギャルポのつぶやき、第3回は「ダライ・ラマ法王と胡錦濤中国国家主席の日本同時滞在」。日本政府と中国政府のチベット問題に対する姿勢について。ダライ・ラマ法王が訪問する国の政府に圧力をかけてきた中国政府。そして2010年11月、横浜APECと広島ノーベル平和賞受賞者世界サミット開催で、同時期に訪日したダライ・ラマ法王と胡錦濤中国国家主席。

2010/12/20

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