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2011年1月28日 (金)

対談 日本が「中国化」される恐怖(ペマ ★ 石平)

領土も国民も脅かされている
中国の正体  こう教えよう

このままでは日本はチベットやウイグルと同じく「中国化」される!

しかし世界は、アメリカの対インド重視をはじめ「中国包囲網」形成へ──。

今こそ日本は「地球市民」という“幻想の教育”から脱却し、国家意識を取り戻せ!

 
八木秀次(以下、八木)
 昨年は尖閣諸島沖のわが国領海で中同漁船が海上保安庁の巡視船に故意に衝突してきた事件をめぐって、政府が犯罪者である船長を釈放するなど中国への弱腰ぶりが目に余りました。獄中の民主活動家、劉暁波氏にノーベル平和賞の授与が決まると猛反発するなど、中国政府は人権弾圧も際立たせました。そうした国の実態を学校現場でどう教えればいいかということについて、チベット出身の政治学者、ペマ・ギャルポさんと中国生まれの証論家、石平さんに語り合っていただきたいと思います。まず石先生、中国で今、何が起こっているのでしょうか?

日本解体のシナリオ

石平(以下、石) 天安門事件以来、中国共産党はどうやって政権を維持してきたかというと、一つはナショナリズムをあおり立ててきたということ、その一環として反日教育もやってきました。もう一つは経済成長戦略。人々に金をもうけさせるということです。2つの戦略はある意味では成功し、この二十数年間、政治の安定を維持してきました。しかし裏目に出たこともあります。反日教育をした結果、外交の足かせになりました。常に国内の反日感情の爆発を恐れなければならなくなったのです。
 経済成長戦略も危ういもので、技術革新で実体経済を成長させるのではなく、お金を大量に発行してバブルを作り上げた結果、深刻なインフレになっています。不動産バブルも弾ける恐れがあります。庶民の生活が圧迫され、政治が不安定になる可能性があります。不安定になると、不満をそらすために対外的に強硬になります。

ペマ・ギャルポ(以下、ペマ) 付け加えさせていただくと、尖閣諸島への挑発は、日米関係がぎくしゃくする中、日本がどう出るか試そうという国外的な問題に加え、国内向けのメッセージがあります。2012年に開かれる次の共産党大会に向けて、軍が影響力を見せつけようとしていることが背景にあります。それから、インターネットの言論統制が限界に来ていて、世論のガス抜きをする必要があります。中国人は中華帝国という意識を持っていますから、ああいうことをすれば国民は喜ぶんです。

八木 ペマ先生がおっしゃるように、普天間基地問題で日米関係が悪くなって、日本側がすきを作りましたね。民主党は小沢一郎氏を団長とする大訪中団を送り(09年12月)、朝貢外交のようなことをしました。天皇陛下と習近平氏のご会見を無埋矢理設定させるなど、押せば大丈夫だと判断したのでしょう。

 八木先生がおっしゃる通り、小沢訪中団以降、中国は日本をなめきっています。

ペマ 小沢氏はあのとき、胡錦濤国家主席に「私は人民解放軍の野戦司令官だ」と言いましたが、本当に軽率です。

 外交の場では信じられない言葉です。

ペマ 総理大臣を目指している人の言う言葉ではありませんね。

八木 日本人の感覚では社交辞令ということなんでしょうが。

石 それは外交の場では通用しません。国際社会の厳しさが分かっていません。言葉一つで国が滅ぶこともあるんです。教育現場でもそういう大事なことを教えていませんね。

ペマ まさにその通りですね。胡錦涛は小沢氏の発言の全体をとらえたと思いますよ。小沢氏は「こちらのお国に例えれば、解放の戦いはまだ済んでいない」と言いました。
 中国共産党が作ったとされる「日本解放第二期工作要綱」*には日本に民主連合政府を作って、その後、日本人民民主共和国を樹立し、天皇を戦犯の首魁として処刑するとあります。小沢氏はそのシナリオ通りに動いて「まだ戦いの途中ですが、ここまでやりました」と報告しているのと同じです

*1972年、西内雅(歴史家・故人)がアジア歴訪のさいに入手した公式文書とされる。中国共産党の日本工作が具体的に記されている。

 民主党政権があと数年続けば、中国共産党のシナリオが現実になりますね。

ペマ そうですね。例えば外国人参政権がそうですが、既に民主党の代表選は外国人の党員・サポーターに投票権があります。大使館の命令ひとつで在日中国人が大量人党して、首相を決めることができるのです。

中国包囲網に参加せよ

 政治家も一般国民も中国に警戒心を持たなければいけません。中華人民共和国の恐ろしい本資をまだ分かっていません。

ペマ ダライ・ラマ法王の代表団と中国が対話に向けて接触し始めた1979年から30年以上たちますが、法王の誠意は踏みにじられ続けています。

 チベットは知らず知らずのうちに中国にのみ込まれていきました。日本人はまさか中国の自治区になるとは誰も思っていませんが、チベット人もウイグル人も最初は想像しなかったのです。中国に対する甘い幻想は捨てなければなりません。例えば、昭和53(1978)年に鄧小平が尖閣問題を棚上げしようと言いました。領土問題などないんだから、棚上げも何もない。たとえばの話、八木先生の腕時計はあくまでも八木先生のものですが、私はそれが欲しくて、「八木先生のものか私のものか棚上げしましょう」と言っているのと同じです。ところが日本政府はその罠に引っ掛かってしまった。逆に喜んだのです。

ペマ そうなんです。当時、私はテレビ番組で「日本のものなのに棚上げも何もない。時間稼ぎだ」と言いました。しかし日本は安心してしまいました。

 安心して尖閣諸島の実効支配も進めませんでした。すると中国は江沢民時代の1992年に領海法を作って尖閣諸島を自分たちの領上だと宣言してしまいました。法律を作れば自分の領土にできると思っている。沖縄だって、いつ中国の領土だと決められるか分かりません。そういう国ですよ。

ベマ 反日デモで、沖縄は中国の領土だと叫んでいましたよ。チベット問題で中国は、最初は平和5原則(1 領土・主権の相互の尊重 2 相互不可侵 3 相互の内政不干渉 4 平等互恵 5 平和共存)でインドをだましました。チベットに入ったことも「われわれはチベットを中国化するわけではありません」と言いました。ところが約束を破ってチベットを征服しました、それだけでなく、国境紛争でインドを攻めました。
 中国は時間稼ぎをするのです。もう一つは相手の出方を見て、先手先手を打つのです。国民に刺激を与えるために戦争しなければななりません。ですから中国は共産主義ではないんです。本質的には領土拡張主義、植民地主義、帝国主義…。

八木 中華思想(中国を文明の中心とし、周辺を野蛮国として侮蔑する思想)…。

ペマ そうです。

 チベットがのみこまれていったプロセスを見ると、中国の本質が分かります。チベットを奪った時代は陸上での拡張でしたが、1980年代半ばから海での拡張になりました。中国は「第2列島線」の内側、つまり台湾、フィリピン、沖縄本島、尖閣諸島、そして日本列島を中国海軍の支配下に置く、あるいは併合しようとしているのです。その第一歩として、中国は昨年から、南シナ海は中国にとっての「核心的利益」だと言い始めました。

八木 周辺諸国はどうすればいいのでしょうか。石先生は、民主主義や人権尊重などの価値観を共有する国家との関係を強化しようという安倍政権の「価値観外交」を評価していらつしゃいましたね。

 昨年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の前にアメリカのオバマ大統領はアジアを、歴訪しました。インド、インドネシア、韓国、日本…。中国には行かなかった。中国の周りの民主主義義国家に行ったのです。オバマが安倍さんの代わりに価値観外交をやっています。

八木 オバマ大統領は最初は中国に好意的でしたね。

 そうです。やっと中国の本性が分かってきたんです。分かっていないのは日本の民主党政権だけです。日本が生きていくには日米同盟を強固にするしかありません。中国を封じ込めることこそ、アジアの力のバランスを保つのです。日本は今そこに気付かないと、大変な危機が訪れます。

八木 しかし民主党政権は中国を盟主とする「東アジア共同体」を目指しています。

 とんでもない話です。強盗が家に入ろうとしているときに、強盗と仲良くなるようなものです。

ペマ アメリカは92年から中国封じ込めの政策に転じ、94年から本格的に動き出しました。98年にインドが核実験を行いました、日本は政府開発援助(ODA)を停止して、政府高官も会わないという制裁を実施しましたが、アメリカは形だけの議会決議をしたものの、それをきっかけにインドから優秀な留学生を受け入れたりして交流を深めました。オバマ政権発足後、初めて訪米した国賓はインドのシン首相でしたし、昨年のオバマ大統領のインド訪問は3泊4日という異例の長さでした。

 あれはすごいメッセージです。

ペマ オバマ大統領はそのとき、「アメリカとインドとの関係は、21世紀を定義づけるようなパートナー関係だ」と言いました。アジアで中国に負けない外交が多少なりともできるのは、免疫があるインドでありベトナムです。日本はそういう国々と組むことが必要です。

八木 各国が中国包囲網を作る中で必ずほころびを作るのが日本です。天安門事件(93年)の後、各国が制裁をする中で、日本は天皇陛下のご訪中のために緩めてしまいました。

 ご訪中で助けられて、中国は元気になったのですが、元気になって何をやったかというと日本たたきです。

八木 反日教育が始まりましたね。

「地球市民」が世界滅ぼす

ペマ 中国は日本に対する心理作戦に既に成功しています。その結果、日本の経済界は国家の利益じゃなくて自社の利益しか考えられなくなりました。中国で商売できなくなったら困るというのです。そうじゃないんだということを教育の場できちんと教えないと、日本は国を維持できなくなりますよ。

 企業も個人も普段は国家の存在を考えずに済んでいますが、最後のよりどころは国家ですよ。21世紀になって、国家がなくてもいいという風潮がありますが、中国や北朝鮮の脅威があるアジアでは国家の存在がますます重要になっています。

ペマ
 私は平成17年に日本国籍になりましたが、それまで40年間、チベットからの難民として無国籍で日本にいました。無国籍ということは外国に出ても、万一のときに保護してくれる国家はないんです。飛行機が落ちても、どこの国も骨を拾う義務はありません。日本人は日本国のパスポートを持っているからこそ守られているんです。よく「私は国際派だ」という人がいますが、国際という言葉自体が、国と国のつながりという意味です。お互いが国家意識を持って、どう付き合っていくかということが国際です。現実の世界がどうなっているかということを学校で教えなければなりません

八木 日本の義務教育を終わる中学校社会科の最後のぺージには「地球市民を目指して」と書いています。「国民になりましょう」ではないんです。ユートピア思想というか、夢物語というか…。

ペマ 偽善者ですね、そういう教科書を作っている人は。

八木 悪意があると思いますね。国民意識を相対化して、日本国民がみんな「地球市民」だという意識を持てば、日本を侵略しようと思っている国にとって一番都合がいいんです。

 そうですね。問題は、日本人が勝手に「地球市民」だと思っても、周辺の国家の国民は誰もそうは思っていません。

八木 憲法教育や政治教育で強調するのは、日本国憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」ですが、まず「平和を愛する諸国民」というのが嘘です。「われらの安全と生存を保持」するために「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」する「われらの努力」ではないんです。自分の国は自分で守ると規定していないんです。

 日本国憲法はまず世界認識を間違違っています。その幻想の上に国民の存立を託すということは、国家の義務を放葉しているということです。

ペマ 資源の問題や地球温暖化など地球的課題を解決するために「地球市民」的な考え方をするのは構いません。しかし国家を否定するのは完全に間違っています。理想を掲げるのは結構ですが、現実を教えなければなりません。それが教育です。

 いや、「地球市民を理想とする』こと自体が日本の国益の障害になっているんです。国家を破壊することを前提とした、悪意に満ちたイデオロギーですよ。

ペマ 「地球市民」と地球的規模で物事を考えることは、区別しなければなりませんね、明治維新の志士たちのほうが、今よりはるかに地球的規模で物事を考えていました。

 しかも国家意識を基本にしていました。

ペマ 今、グローバリゼーションを言っている人は、映画の「007」に出てくる悪人のように世界征服を目指しているんじゃないかとさえ思いますね。日産自動車のカルロス・ゴーン社長は年間8億9000万円の報酬をもらっているそうですが、彼は5000人の社員をクビにしました。5000人にはみんな家族がいるんです。彼がどれだけ日本のことを考えているかというと…。

 そもそも考える義務もありません。

ペマ そうです。グローバリゼーションによって、世界の、一握りの人間が権力と富を手に人れ、その中で抗争が起きる…。そして、「007」の悪人のように世界制覇を考えるような者が出てくるんじゃないかと思いますよ。「地球市民」の素張らしさを本気で信じている純粋な人たちは、それを手伝っていることになるんです。

 ゴーン氏は日本社会の中で仕事をしていますが、日産を辞めてどこかの国に去ったら、もう日本は関係ありません。日本の経営者がゴーン氏のような無茶をしないのは彼らが日本人だからです。日本という民族共同体の中で自分の名誉を考えなければいけないのです。いくらグローバル化といっても、人はあくまで民族共同体の中に根を下ろしているのです。その民族共同体の政治的な形がすなわち国家です。

ペマ 国家意識は教育によって活性化します。

 どこの国の教育も一生懸命、民族共同体の意識、国家意識を教えています。反対のことをやっているのは日本だけです。

八木 よくもっていますね、わが国は。

 よくもっていますよ。不思議ですよ。

ペマ それは、ご先祖さまの努力の結果ですね。、寺子屋だとか、明治以降の教育だとか。しかし、これから先は、その貯金は底をつくのではないでしょうか。

八木 95年に中国の李鵬首相(当時)は「日本などという国は20年後には消えてなくなる」と言いましたが、あと4年ですね。

石 李鵬の発言はばかげていますが、そうなりつつあるのが恐ろしいですね。

ペマ ばかげていますが、彼らは日本解体のシナリオを実際に描いていますからね。だから言えるんです。

八木 新年から暗い話になりましたが、これが日本の現実です。私ども日本教育再生機構が事務局を務める「教科書改善の会」が支援する育鵬社の中学校歴史・公民教科書が今年登場します。国家意識をきちんと教える内容になっていますので、そこに明るい未来を託したいと思います。両先生、今年もよろしくお願い申し上げます。

※『教育再生』(平成23年1月号)より転載。

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