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2011年3月 1日 (火)

胡錦涛主席に冷たい米政界

軍拡や人権問題に警戒

米中は今や政冷経熱の関係


 中国の胡錦濤国家主席が1月18日から21日までアメリカを公式訪問したことは皆様もご承知の通りである。中国当局は当初「オバマ大統領就任以来、2年間米中関係は安定的発展の流れにあり、新しい積極的な展開を得て、両国のハイレベルの意思疎通は高まっている」とし、この関係を更に深化するためと期待を込めた訪問であった。

 中国の崔天凱外務副部長は訪米前に「中国は今回の訪間を通じ、積極的な協力によって関係を更に発展推進し、新時代の両国関係の発展のために方向性を示すことを希望している」と述べた。確かに今回の訪米は先の中間選挙で共和党にぼろ負けしたオバマ大統領にとっても、またあと2年足らずの任期しか残ってなく求心力を失いつつある胡錦濤氏にとっても、重要であったことは間違いない。

 アメリカ側は国賓である胡錦濤氏に対し、ホワイトハウスでの夕食会に政界、財界、芸能界など各方面から約200人を招き華麗にもてなしたと言われる。このゲストの中には最近やけにはしゃいで中国人の
愛国心を表そうとしている香港生まれの映画俳優ジャッキー・チェンなども招かれていた。歓迎の挨拶でオバマ大統領は「今日米中は互いの利益のために力を合わせることが出来ることを示した」とし、胡主席も「私の訪間の目的は相互信頼を高め、協力的で包括的な米中関係を前進させることだ」と、ともに前向きな発言で成果を演出しようとしたと見られる。

 しかし、大方の評論家たちやアメリカでの評判は日本で伝わっているものとは違い、米国は中国の国家元首に対し、礼を尽くしたが人権問題、経済問題などでは強硬な姿勢を示し、全体的な雰囲気は極めて冷たいものであったとされている。19日の夕食会も共和党所属のベイナー下院議長は欠席し、民主党の実力者、リード上院院内総務も出席予定者には含まれていなかったと報道されている。つまりこの夕食会のリストには華やかさがあっても政界における重鎮たちの姿が無く、軽量のものになったといえよう。現在の中国の人権抑圧や、チベットの不当な占領に対し抗議するデモ隊がホワイトハウスの外で「チベットに自由を」と叫び抗議の声を上げた。

 オバマ大統領は就任当時や就任後はややもすれば中国に媚びるような姿勢をとっていたものの、途中で世論を考慮しアメリカは台湾への武器の売却を決断し、当初見送っていたダライ・ラマ法王との会見も実現した。更にアメリカは南シナ海や黄海において米日韓による合同軍事演習などを実施し、また中国との貿易の不均等にも米中経済摩擦に対して強硬姿勢を取っていた。これらの問題に対し、中国は烈火のごとく不当な干渉であり中国の国益に反するとして中国当局の報道機関などを通して猛烈に反発した。

 昨年はオバマ大統領のインド訪問やインド首相の日本訪問なども、米国が日米韓印を結束させて中国包囲網の形成を図っているとして中国側も強く反発した。米国のゲーツ国防相の昨年の訪中はアメリカ側としては胡錦濤氏の訪米の地ならしのつもりであったのが、中国は新たな次世代戦闘機「殲20」を自力で開発して初飛行を実行し、米国の中国に対する不信感を払拭するどころか増強するような結果を招いた。

 また一部の報道によると、このレーダーに探索されにくい高性能の戦闘機開発技術はアメリカから盗んだものと言われている。これらの状況から判断してみれば今回の胡錦濤主席の訪米は昨年末の温家宝首椙のインド訪問同様、経済的にはボーイング社からの航空機200機の調達などで中国による450億㌦の大型商談が成立し、この商談によって米国で23万5000人の雇用を支援できると言われる。400人の企業人が付き添った温家宝氏もインドでの成果と言えば40ほどの大型プロジェクト及び商談が成立したことだけで、政治的な進展が無かったように、今回の胡錦濤氏の訪問も人権問題、通貨・人民元の問題などにおいて互いに譲歩することなく平行線であった。

 オバマ大統領は人権問題の改善とダライ・ラマー4世側と中国政府の対話の促進と人民元の過小評価の是正を求めたものの、胡錦濤氏は反論こそしなかったが改善への協力姿勢は示さなかった。一時日本と中国の関係について経済関係は熱く、政治関係は冷たいと形容されたが、今や米中関係も印中関係も同じようなレベルのようだ。つまり中国は経済力では確かに良いお客様で無視できない存在になっているものの、政治的軍事的には厄介な存在になっており、それに対する各国の姿勢も強硬かつ冷淡なものになりつつある。

 このまま軍事力を背景に政治的に無茶をする中国は八方塞がりにならないとも限らない。従って北朝鮮や軍事独裁国家など世界の一部と付き合い、属国化し、それ以外とは対立的関係がますます深くなるのではないか。日本も周囲に見習って日中関係においてはっきりものを言える体制を整えることが先決である。尖閣諸島などについても決して譲歩すべきではないのは当然のことである。

※『世界日報』(2011年2月2日付け)より転載。

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