« 2011年5月 | トップページ | 2011年7月 »

2011年6月

2011年6月26日 (日)

(30) 遊牧民がひき殺された内モンゴルの事件

[解説] 草原の乱開発に抗議してトラックにひき殺された遊牧民の事件とそれをきっかけに起きた日本や世界各地の抗議行動について。※2011年6月10日収録。

|

(29) ダラムサラ「チベット人総会」報告

[解説] 5月にインドのダラムサラで行われた「チベット人総会」の報告。ダライ・ラマ法王の引退と、約400年続いたガンデンポタン(チベット行政府)の改革。民主化について。※2011年6月10日収録。

|

(28) アジアの経済発展と中国の領土拡張

[解説] 経済発展するインドと中国。領土、領海を拡張する中国と周辺国はどう交渉をしていけばいいのか?※2011年5月16日収録。

|

(27) 2012年の中国共産党

[解説]中国政府の首脳が入れ替わる2012年について。中国、チベット、ウイグル、南モンゴルに良い変化はあるのか?

|

(26) 温家宝首相訪日とチベット

[解説] 2011年5月21日から22日に日中韓首脳会談のために訪日した中国の温家宝首相について。穏健派といわれている温家宝首相にチベット人たちが抗議する理由とは。

|

大阪府の国歌起立斉唱条例

国守り継承するのは義務

「国家国旗に敬意」は当然

真剣に考えるよい契機

 この度、橋下徹大阪府知事のイニシアティブで、全国初の「君が代起立条例」が6月3日同府議会で可決成立した。新聞などによると橋下知事が代表を務める地域政党「大阪府維新の会」56人とみんなの党1人、無所属2人を含む59名の賛成多数で、公明、自民、民主、共産など48名の反対を退け可決となった。条例は「学校での服務規律の厳格化」を目的として今後実行し、不起立を繰り返した教職員に免職を含む懲戒処分を課すことなどを内容とした条例案を9月の議会に提出する構えでいる。

 世界の常識としては自国の国歌、国旗に対し尊敬を表すことは当然のことであるが、日本では未だに冷戦時代のイデオロギーから抜け切れない人々がいるようで、このような条例を作らなければならない実態こそ滑稽に思う。それ以上に今回のことで私が特に驚いたのは、自民党の府議会議員たちが反対票を投じたことである。彼らは政治的理念や立派な思想を持っている人物ではなく、ただの政治屋で国家の基本的な重要課題でさえ政局にした理念なき集団であることに悲しみさえ覚える。

 保守とは本来「守るべきもの」があっての保守のはずなのに、自民党の府議会議員たちはその基本すら認識しておらず、保守と名乗るに値しない人々であることが分かった。自民党の現
在の体たらくは初心を忘れ、立党の精神である自主独立の精神から離れ、長く政権の座につくことによって利権党化し、単に政権の旨みのみに関心を持ち、理念理想無き政党に落ちてしまった姿だ。

 私は日本国籍を取ってまだ間もないが、四十数年間、特に青年時代には多くの日本人の大物政治家たちの姿を見て、自民党に信頼と敬意と親しみを感じてきた。1960年代から70年代頃までの政治家は、自民党に限らず今日に比較したらより高度な政治理念とイデオロギーを持っていたように感じた。より広い視野、より明快な理念を持ってお互いに堂々と戦うっており、その価値観は安易に譲れないものとして、守り抜こうとした姿を見た時に政治のタイナミズムを感じられた。

 ところが、最近の菅降ろし問題などを見てもま政治家たちは理想や理念や愛国心ではなく、権力獲得のための争いで国の将来や世界の平和などは眼中に無いように見受けられる。そして政治権力の頂点である総理大臣も単に人気商売にされ、軽んじられているように思う。その責任は政治家のみならずメディアにも大いにある。政治家の真の実力や経験、人格などよりも大衆受け、メディア受けするかどうか、あるいはマスコミの好き嫌いで論じられていることや、バフォーマンスの巧拙で左右されていることも極めて残念でならない。

 今、菅首相を引き下ろそうとしている人々や、その後釜としてメディアがプロモートしようとしている人々の方が、菅首相よりも優れており、菅首相ができないことを国民に提供できるようには見えない。総理大臣になる人が、せめて当選7、8回を果たし、政治家としての経験と人脈、特に共通の夢と理念を分かち合い、その人を支えて行こうとする仲間と部下がいなければ最近見ているように、総理大臣は短命になるのは当然である。

 私が見た昭和時代の政治家たちは少なくとも政党や派閥を超えて国益ということに関しての優先順位並びにお互いの役割を活かしての国への貢献ができていた。ここに橋下知事と仲間たちに敬意を表するとともに、このような法を作らなければならない日本の異常な状況から、一日も早く正常な国家になることを心から願いたい。かつて中国はイギリスから香港の主権が返還された時、真っ先に行動したことの一つに学校教育の中で子供たちに中国の国歌を教え国旗を扱う作法を徹底したことがある。私は敵ながら天晴れであると感心した。

 日本の国歌・国旗は日本国民の自由意志によって選出された議員によって議会でも正式に認められたものであると私は認識している。民主主義を宗教のように信仰し、民主という言葉を真言のように唱える教師たちは、特に法治国家の一員として私は教え子たちに良い模範となる意味でもこの国会の場で国歌・国旗として認められたものに関しては、敬意を表することこそ議会制民主主義を強固にする手段ではないかと思う。

 日本では、お子様ランチ、右翼の街宣、スポーツイベントなどでは国旗がよく使われているようだが、残念ながらこのような場での国旗の扱い方はかえって世界の常識とは少しかけ離れており、本人たちの意図と反して国旗の品格を下げているとも感じる。この際、国旗に関する常識を学校のみならず社会に広く認識してもらう良い時期かもしれない。

 そのような意味で今回の大阪府議会の条例化は国歌・国旗に関して日本社会に真剣に考えてもらう良いきっかけを作ったようにも思える。民主主義国家においては、一人ひとりがその国の主であると同時にその国を守り、子孫に継承させる義務があるはずである。

※『世界日報』(2011年06月12日付)より転載。

|

チベット改革仕上げる法王

中国支配の弾圧は続く
ハンストで抗議する青年ら

 今回はチベット間題について報告したい。皆様ご存知のようにダライ・ラマ法王は400年続いた宗政一致の政治制度に自ら終止符を打ち、チベツトの王としての政治的権力および行政の最高責任者としての地位を退く、と今年3月10日に発表された。もちろん法王は熟慮を重ねた決断である。亡命政権の議会と内閣は法王に考えを直していただくよう再三嘆願したが、法王の決意が固く、最終的には内閣も議会も承諾せざるを得なかったようである。

 議会は内閣の主席大臣と議会の正副議長ら5人からなる小委員会を結成し、今後の法王の地位などについて研究し、議会に報告するとともに法王の新たな地位に関する暫定憲法の見直しをすることになった。またこれを受けて、内閣と議会は第2次チベット人大会を5月21日~24日に行った。チベットの各難民キャンプ、各宗派の代表など大勢が集まって今後のチベットのあり方について検討を加えた。チベットの人々の総意として、今後も法王には何らかの形でチベットを導いていただきたいということになり、元首の地位にとどまっていただきたいと陳情する方針を議会は採択した。しかし、法王のご意思は固いようである。今後、チベット民族にとって法王をどう表現するかは第14回議会でまとめる方向だ。

 法王はこの数年北京政府との平和的なチベット問題の解決を求めて、対話路線を歩んで来たが、中国側の不誠実な対応のため2009年10月以降は進展がない。長きにわたって法王のご意思を尊重し北京政府との平和的解決に対し、多少の期待を持っていた人々でさえも、北京側の時間稼ぎのような対話には強い不審と不満が湧いてきている。

 そこで法王が今まで努力した結果、北京政府が一向に誠意を示さないばかりか後退するような発言や言動に、法王もかなり中国のやり方に落胆を隠せず、だからと言って対話路線を諦めることもできないため、中国の当局に対してもまたチベットの不満分子に対しても匙を投げたとも言えよう。

 もう一つ法王の政治の第一線から退く理由は、法王ご自身の長年のライフワークとして「近代チベット民主化の父」として、ご自分が健在なうちに民主化を図り、国民から直接選ばれた人物に政治的権限を委ねるとともに、その人を支えていく覚悟を示されたものと思う。

 法王はインドに来て間もない時期からご自分がチベットで実現しようと思っていた改革を実践実行するため、チベットの民主的な憲法の草案をまとめ自らの地位をも憲法の中に規定するなど様々な民主改革を行ってきた。そして今回は総仕上げのような気持ちで政教分離をより明確化し、他の民族から強制されなくともチベット人は自ら変わる能力があることを示されたのだと思う。

 法王はまた一方において中国政府によって所謂チベツトの活仏制度そのものに千渉しようとしている中国に先手を打つため、自ら政教分離をすることで、チベットのみならずチベット文化圏のより多くの方々に影響を及ぼすことで、世界の平和の指導者として貢献しようとなさっているのではないだろうつか。

 即ち、チベットのみならずチベット文化圏の法王としてチベット仏教が盛んな国々、モンゴルやインドのラダック、ロシアのブリヤートや、カルムィキア共和国、そして今増えつつある西洋の仏教徒などへ影響を及ぼすことによってチベットという狭い世界よりも、全世界を意識した広い意味でのリーダーになることで正義と平和を追求されるのだ。

 しかし、悲しいことに中国はここを逆にチャンスと見て、今、中国支配下のチベット国内の弾圧はより強くなっており、現在も今年3月に焼身自殺をした青年僧侶の死を悼み寺院に集まった周辺の人々を始め、約2000名の入々が体よく寺院に閉じ込められ、未だに外部と接触できないような状態に置かれている。この状況を打破しようと世界各地で署名運動やデモなどが行われている。

 ニューデリーではチベット青年会議のメンバーを中心に無期限のハンガーストライキに突入している。この青年たちの活動は、まさに法王のご意思通りの平和的な手段で抗議を続けており、純粋な気持ちで世界にアピールしようとしている。しかし、残念ながら世界各国の政府は人権をお経のように唱えてはいても、実際チベットの人権などに関心を持ち中国政府に対し中国の行うことが非人道的で、社会の常識に反するものであり、そのような人権の抑圧を看過できないと訴える人はほとんど現れず、結局、力が強い者には正義も通用しないというのが今の物質文明の世界の風潮であるのかもしれない。

 5月21日から中国の温家宝首相が来日した。私はこの時期に日本の政治家たちや財界のトップがチベット問題のみならず、現在中国の下で苦しんでいるあらゆる政治犯の皆様を釈放し、その人々の人権が回復できるように日本が中国にアドバイスをするようになることは、日本にとっても、中国にとっても有益ではないかと思う。

※『世界日報』(2011年06月1日付)より転載。

|

« 2011年5月 | トップページ | 2011年7月 »