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2012年6月25日 (月)

中共内抗争表面化の薄事件

毛沢東時代回帰が蠢動 都知事の尖閣購入に支持を

 中国の薄熙来前重慶市共産党委員会書記が解任され、その後、更に権力の中枢である政治局委員からも追放された。しかし、現段階では共産党の党員資格は剥奪されていない模様である。いずれにしても、彼の失脚は大きな政治権力闘争の表面化であることは間違いない。その権力闘争は更に拡大し、政治局常務委員会内部にも亀裂が生じている。しかし、現段階において優位に立っている胡錦濤国家主席グループ、重慶市長の追放で苦境に立たされている江沢民前国家主席側とも、当面この問題の真相を隠すことで利害が一致している。政治局常務委員9名のバランスは、今までは1、習近平国家副主席が、周永康ら江沢民グループに近かったが、最近は習近平が胡錦濤に擦り寄ることで逆転している。
 近年、中国はかつての日本のように奇跡的な経済発展、軍事拡大に成功する一方、貧富の格差が深刻な問題となり、持つ者と持たざる者の関係がはっきりとしている。また、汚職やモラルの低下も極めて著しく、大衆を悩ませている。この現状を憂い、それを対立軸にして現体制に不満を抱く人々の支持を得て、かつての毛沢東時代の共産主義に戻ろうとする勢力との聞にイデオロギー闘争が裏では激化しており、その論争の範囲は政治家、官僚のみならず学者などの間にも表面化し始めていた。
 中国の政治情勢に詳しい中国のインテリから聞く話によると、軍の内部までもこの対立構図が出来つつあり、実際、薄熙来氏の解任直後、北京の首脳部は北京軍区以外から軍を移動までして自分たちの保身に必死になっていたようだ。つまり中国人の反体制側の関係者の話を聞くと、今回の事件は1971年の林彪事件に相当するクーデター未遂事件というのがその本質であって、薄熙来夫人が絡むイギリス人コンサルタントの殺害事件は、事実であるにせよ、現在中国側から世界各国のメディアを使ったその報道が誘導しているところは政治闘争の真相を隠す工作であることに他ならない。
 林彪はソ連へ逃亡中、飛行機が墜落して死亡することで当時の真相は未だに闇の中であるが、今回、薄熙来にまつわる贈賄、汚職に関しては今では中国の文化のひとつであって氷山の一角に過ぎず、
叩けば挨の出ない政治家のほうが少ないはずである。私は中国共産党の一党独裁が完全に崩壊し、真の民主主義が定着するまで解決しないと思う。
 今、アメリカやヨーロッパの国々は正義の旗をかざして、シリアに軍事介入、政治介入しようと図っているが、その正当性は人権と民主主義にあるとするのならば、完全に民主主義と民族自決権を無視し、一方的な植民地支配を続ける中国の政治にこそ世界がもっと積極的に関わるべきではないかと思う。チベットにお
いては4 月19日にもまた2 人の若者が焼身行為をもって中国によるチベットの不当支配に抗議している。
 中国国内では連日のように不平不満を持った民衆がデモ行為などを起こしている。このような状況の中において、今回の薄熙来事件は、当局によるガス抜きとして利用され、中国の真の民主化を更に遠ざけるための口実に使おうとしていることに懸念を抱いている。
 中国の真の民主化は、中国本土において共産党一党独裁支配が崩れ、周囲の国々も植民地支配から解放され、各民族が互いに民族自決権に基づき、対等平等の精神、自由と民主主義が確立されるまで来ないと思っている。
 そのためには今回のような事件は起こるべくして起こったことに過ぎない。むしろ、この事件は小火のうちに消さず、大火事になってもらったほうが中国の将来のためにも、アジアの平和と発展のためにも良かったと思う。日本を始め世界は潜在意識的には中国の現体制の崩壊を望みながら、現実にはその体制を壊すこ
とに何の積極的な行動も取らず、ただ新聞記事で内部闘争の模様を眺めながら、中華帝国の崩壊を願っているだけである。
 シリアなどの国に対して介入するのは、あくまでも国の経済的利益のためであって自由と民主主義はその口実に過ぎず、同様に中国に対しても民主主義と自由を説教する国々も、結局は中国人民および周辺地域の人々の人権を犠牲にしてまで経済的利益を優先していることは明白である。
 そのような国に対して弱腰の世界の指導者の中で、真正面から正義の剣をかざして発言し、行動しているのは石原慎太郎東京都知事だけであると言っても過言ではないであろう。石原知事が尖閣諸島問題で抗議を始めてから政府も抗議する方向を検討し始め、地元地方議会も政府に島を購入して欲しいという決議を出
しているようだが、これは実におかしな話で、政府が今まで何をしてきたのかと逆に聞きたい。
 政府が尖閣諸島を購入したからといって問題解決にならないのは、現状を見ても明白である。私はここで国民が立ちあがり、石原都知事のイニシアティブを支持し、その購入資金を国民が自発的に寄付を募ってすべきであると思う。

※『VIEWPOINT』(2012 年6月号)より転載。

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