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2014年2月28日 (金)

天地人の条件揃う日印関係

深い信頼感示すインド
半永久的な結びつきが可能


 日印関係がより一層進化した。昨年日月末からロ月の初めにおける今上陛下、皇后陛下のインド公式ご訪問に続き、今年1月初日には安倍首相がインド政府のご招待で主賓として独立記念日に出席された。これはインド政府としては極めて近い国々に対する特別待遇であり、インド政府が国内外に対し日本の重要性と日印関係の良好さを示すものであった。
 世界日報のこの紙面で長い間日印関係の重要性を訴え続けてきた私としては、この上ない喜びである。この両国は地政学的に考えても、互いに関係を強化することは理にかなっている。また歴史的・伝統的・文化的にも強い結びつきを持っており、特に両国の関係において互いに憎悪を抱いた過去はない。
 ただ残念なことに冷戦構造をはじめいくつかの要因により、その潜在的力を両国の関係に発揮できなかった。しかし、冷戦構造の崩壊と両国を取り巻く環境の変化において、今両民族、両国は互いの重要性を認識し始めている。特に日本国民と政府が中国に抱いていた幻想が、中国の行いによって現実に目覚めさせられていることが大きな要因のひとつになっているのではないだろうか。日印両国はともに中国と領土、領海の問題を抱えており、中国によって主権を侵されるという現実に直面している。
 今回の安倍首相のインド訪問の際、両国の安全保障に関わる首相補佐官同士が意見交換をしたと報道された。内容については知る由もないが、このような地位の担当者同士が形式ではなく、実務的に面会したということが中国をはじめ対外的に立派なメッセージを発信したことになる。
 また、インド政府はアルナチャルプラデシュ州の開発に関しても日本の協力を要請したと聞く。この地域はインドの安全保障上極めて重要な地域であり、長い間簡単に外国人が自由に出入りできなかった。以前、アジア開発銀行がこの地域の開発に協力した時、身勝手な中国は猛烈に反対したことがある。
 このような繊細な地域において、日本に対しインドが協力を要請していたとすれば、
これはインド側としては大変な信頼と長期的な友好関係を前提としたものであると認識すべきであろう。政府の直接協力は勿論、両国政府の慎重な計画と合意に基づき、日本の民間からの協力も有効に行うべきである。
 私は子供の頃、ヒマラヤの山を越え、このアルナチャルプラデシュ州で再び命を拾ったような経験をしている。特にこの地域にはチベット仏教、チベット文化圏など日本人にとっても馴染みやすい要素が沢山ある。
 日本とインドの関係は一政権や一時的な国際環境に左右されるようなものではなく、半永久的な強い結びつきで両国が共存共栄する関係として確立してもらいたい。そのためこの好機を逃さず、政府レベルのみならず民間レベルでの関係に力を注ぎ、民間外交を積極的に推進すべきであると考える。
 その側面から言うと、仏教発祥の地であるインドと日本の関係において、仏教界の役割と責任が大きいように思う。かつて日中関係が一時的に盛り上がった時、毛沢東の文化大革命においてことごとく破壊されたものを復興・復元するにあたって日本の仏教関係者は積極的に惜しみない協力をした。しかし残念ながらそれは中国の観光促進に役立ったかもしれないが、中国の仏教精神の復興にはさほど役に立っていないし、ましてや日中友好の永遠の絆にも役に立っているとも思えない。
 また、竹の子のように発生した姉妹都市や友好団体も一方的に日本からのギブ・アンド・ギブで、ギブ・アンド・テイクの状況は作れなかったように思う。しかし、インドの場合にはギブ・アンド・ギブではなく、ギブ・アンド・テイクの形でお互いに最初から互いのメリットとデメリットを補えるような関係を作れば、誇り高いインド人は精一杯日本人の善意に応えようとするだろう。
 勿論、物事の過程においてはインドのほうが理屈っぽく、面倒さい面もあるだろうが、ヒューニズムの精神はインドのほうに残っていると私は思う。具体的な民間交流として留学生の交換、観光の促進、中小企業の技術交流を中央政府は勿論のこと、各大学や地方自治体そして経済団体は長的計画として促進すべきである考えている。
 最近、日本もインドを重視し有能な大使を派遣している。そ象徴的な方が斎木外務次官(元ンド大使)である。インド側は私が知る範囲だけでも2名の元大使と2名の元次席大使が外務官僚のトップ、すなわち外務次官になった。「天の時、地の利、人の和」が時代を変える条件としているが、今、日本とインドにおいてまさにその条件が揃いつつある思う。
 日印関係は一総理大臣、一政権を越えて行うべきことであり、その基礎は変わらないと確信しているが、今の安倍首相の情熱とインドの重要性に対する理解は高く評価すべきであろう。インドは現在、既に来年の総選挙に向かって熱くなっているが、どの政党がどの人物が政権をとるにしても日本に対する基本的な考えは変わることがないだろう。  ※『世界日報』(2014年2月24日付)より転載

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