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2015年6月

2015年6月24日 (水)

(219) 安保法案の学問的な議論と日本を取り巻く現状

[解説] 安全保障法制関連法案の審議をめぐる状況について。※2015年6月15日収録。

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2015年6月23日 (火)

大訪中団歓迎に騙されるな

国際秩序を脅かす中国
毅然とした姿勢を貫徹せよ

  中国はまたもや日本を騙そうとしている。3000人の大代表団を率いて北京を訪問した二階自民党総務会長たちの歓迎会に習近平主席自ら出向き、「日中関係発展を重視する基本方針は変わらず今後も変わらない」と述べたことで、一部の日本の政治家や言論人、マスコミはほっと安堵を覚える形で中国は日中関係の改善に意欲を示していると評価し、中国側が一歩譲ってきたような解釈をしている。
  同じ挨拶の中で「日本軍国主義の侵略の罪を覆い隠し、歴史の真相を歪曲することは許されない」と習主席が言ったことに対しても、歴史認識問題を巡る原則的な立場を強調し、日本を牽制したと加えている。解説者によっては中国は過去の歴史的問題と現在の日中関係の重要性を分けている、つまり中国は日中関係が重要だということをはっきり示してい ると、習主席の発言を肯定的に見ている。
  また、習主席は両国の関係が順調に発展していないときこそ、民間交流の強化が必要だと述べ、このことに対し二階総務会長も「日中関係を支えているのはその時々の政治情勢に左右されない民間レベルの深い人的交流だ。引き続き努力したい」と習主席の言葉に応えている。確かに国と国の間において民間レベルで交流を深め、親善を促進することは大切である。しかし、それは双方が互いに信頼し、お互いを騙すような裏切り行為をしないという前提が必要だ。中国の今までの言動を見ても、それを 確実に守ったという歴史は残念ながら、無い。そもそも日本の政治家や国民が持っているような個々の自由意思で発言し、行動するような自由が中国には重ねて残念な がら存在していない。
今、中国が低姿勢に出ているのは三つの大きな要因があると私は思う。第一の要因は中国自らの度重なるアジア、特に南シナ海や東シナ海などにおける軍による挑発的な行為に対し、アメリカやアジ の国々が強く抵抗し、その中において先のバンドン会讓やアメリ力の上院と下院の合同委員会で、 安倍首相の毅然とした尊厳に満ちた発言が中国や韓国以外のところで評価されているということ。
  第二に中国のアジアにおける経済覇権を目論んだAIIB (アジアインフラ投資銀行) に対し、日本が少なくとも現段階において中国の思惑通りに進んでいないこと、第三に中国の経済が伸び悩み、 成長に限界を感じていることなどから日本が無視できない存在になっているからである。 だから中国は今、あらゆる手を使って日本を何らかの形で利用していきたい、或いは日本の重要性が高まったからである。
この度、二階総務会長は公然の席で安倍首相からの親書を習主席に手渡したと報じられている。安倍首相の親書の誠意に対しては疑う余地も無いが、あの場で手渡したことは十分に計算された演出であり、少なくとも中国の民衆に対し、安倍首相の親書を日本からの白旗のように中国の人民に印象づける形となった。 つまり、習主席としては自分の方から譲歩したものでなく、日本から頭 を下げてきたということを中国の人民にアピールしたと言える。
それと同時に、あの場での日本軍国主義の侵略の罪に触れ、特に日本側が歴史の真相を歪曲することを許せないとの発言は、安倍首相の戦後70年の首相談話の内容に対し圧力を掛ける狙いがあったと思う。また更に過去の責任は一部の軍国主義者にあり、日本人民も 被害者であったと強調していることも、日本の世論を意識した発言であるとみるべきだ。
アジアの主要国である日本と中国の関係が友好的でありアジアの安定を保つことは、両国のみならず世界にとっても有益であることは言うまでもないが、その国際秩序を著しく脅かし、まさに軍国主義を丸出しにしているのは中国自身の昨今の言動を見れば明白である。
  もう一つのアジアの大国であるインドのモディ首相が5月14日から16日にかけて中国を訪問し、元首並みの手厚い歓迎を受けた。しかし、一方においてはモディ首相の到着日に中国政府のテレビはインドの力シミール州とアルナチャル州抜きのインドの地図を使用した。このことを受けて、インドのメディアは厳しく反論し、民衆も怒りを露わにした。あるインドの新聞は、中国は前からは両手でハグし、その手で後ろから刺すような行為をするのであると強く反発した。これは今まで中国に度々信頼を裏切られたインドならではの反応である。日本ももう十分に同じような反応があってもおかしくないのではないか。
  私は日本から中国に挑発する必要性も理由もないが、今までの姿勢を貫くことが、今後の日中関係を真の意味で半永久的な友好関係を築くため必要であると思う。安倍首相は中国から好まれなくとも尊敬される首相となって、中国との平等の関係を構築するため今の姿勢を貫いていくことを希望する。同様に日本国民も主権国家の国民としての自覚と覚悟を持って世界に対し、主権国家としての存在感を示して欲しい。

※『世界日報』(2015年5月31日付)掲載

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(218) 安倍首相のG7サミットでの活躍

[解説] 今月、ドイツのエルマウで行われたG7サミットについて。問題提起された中国の南シナ­海埋め立てなど。※2015年6月15日収録。

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2015年6月15日 (月)

中国にへつらう国益毀損者

拡張主義の片棒担ぐな 
冷静な分析がいるAIIB

日本には中国共産党の権力者と会うこ とに熱心で、神仏を拝むくらい御利益が あると信じている人たちがいる。村山談話、小泉談話を繰り返すことにも題目を唱えるほどのご加護があると信仰している人もいる。その人々にはどぅやら真の中国を見ることよりも、自分たちが見た い中国しか目に入らないようである。最 近のアジアィンフラ投資銀行(AIIB)への参加についても、日本はバスに乗り 遅れないようにと騒いでいる。
  4月22日のバンドン会議も、会議の歴史的意義や今後の役割を考え、日本がこの会議でいかに存在感をアピールし、アジアの安定と繁栄、そして世界平和に寄与するかというより、習近平中国国家主席に安倍首相が拝謁する機会に恵まれる部分だけにメディアの関心が行った。そ のような方向へ誘導しようとする勢力も活発に動いている。
 習近平と会うことは互いに一国の最高権力者としての対等平等な環境でなければ、会う意味がない。会ってお互いに何 を話し、それが今後日本にとってどのよ うなメリットをもたらすかが重要であ る。中国はバンドン会議を舞台にし、ア ジァのリーダー、発展途上国の味方であ ることをアピールするために演出をした。
  昨年のAPEC首脳会議で、両首脳がったときの習近平の無礼極まる態度は、彼自身の傲慢さを露呈するものにな ったと日本の一部の良識者はあきれ返っただろう。しかし彼自身の中国人民や世界に対しての目的はあれで十分に達成することができた。
  今回、先方からも会談を積極的に実現することが両国の国益になるという認識 を持って臨まない限り、日本側からへつ らって会談を実現する必要はなかった。日本人は礼を重んずる民族であり、それに対しては世界からもそれなりの評価を受けている。だが、伊達政宗公の言葉にあるように「礼も過ぎればへつらうこと になる」ということを忘れてはならない。
中国が実現しようとしているAIIB についても、冷静にその目的と経緯を分析し、現状を把握することが重要である。 中国の目的はあくまでも「一帯一路」の 構想を実現し、まずは経済的覇権を実行することで中華帝国の基盤づくりをしよ うということは、中国自ら明言しているのに、その事実から目を逸らし、あくま でも一部の企業が利益を得ることしか考 えていない。その人々は無意識のうちに自国の国益よりも企業益に盲進してい る。その結果として、日本の国益を失う ことになるのを忘れている。それだけで あればよいが、それ以上に後になって中 国の新しい経済を媒体とした拡張主義の片棒を担ぐことになり、後悔することになるだろう。
   中国は政治的にも経済的にも決して順 調ではない。一党独裁制度の下、政府があらゆるデー夕を管理し必要があれば捏造すら平気なので、ある程度事実を隠すことに成功しているが、真実はそれほど簡単に隠せるものではない。
  一つの単純な例を挙げると、中国のバブル経済最盛期にはチベット犬(チべ夕ンマスティフ)1匹が200万ドル(2 億円)で取引され、チべタンマスティフと赤いフェラーリは中国の富の象徴とな っていた。
  本来チべタンマステイフは毛が厚く、 チベットのような高地でしか生育していないため、中国人に人気が高い。しかし、 皮肉なことに4月中旬、20匹のチべタンマスティフが他の150匹の犬と共にト ラックで屠殺場へ運ばれる途中に発見さ れニユースになった。これらの犬は1匹 5ドル程度の相場で売買され、皮は手袋 などの材料に、肉は食料などになるらしい。
  また、西部大開発として大々的に宣伝 されたにもかかわらず、炭鉱なども閉鎖されており、石炭を輸送する貨車も廃線となり多くの人々は失職した。日本でも紹介されたように建築ラッシュも途中で 放棄され、砂漠の中で廃墟となっている。 従って、中国は大勢の労働者を外国に送 り込み、外国で大きなプロジヱクトなどを進めない限り、国内の開発も限界に来ており、多額の外貨準備高も減りつつあ るのが事実である。
  かつて、文化大革命という大悲劇から 立ち直ろうとした中国は、ダラィ・ラマ 法王に対し独立以外何事についても話し 合いをする用意があると誘い、その後、 実態調査団が本来のチベット領土を满遍 なく訪問した。しかし、1980年代後半になると北京政府は態度と条件を次々と変えたが、法王は誠意を持つて対応し た。ところが今年4月中旬、北京政府は チベットに関する白書を発表し、法王を分離主義者と決めつけ、今後の接触に関 しては謝罪を要求している。
  理屈に合わない話ではあるが、北京政府は次のダラィ・ラマ法王は自分たちが 決めると言ったり、法王が自ら政教分離を実行し、民主的なチベットの土台作り をした行動さえ偽装独立活動の一環と決めつけている。つまり、中国にとって約束事は時間稼ぎ以外意味がないといぅこ とである。

※ 「VIEWPOINT JUNE 2015」 掲載

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2015年6月 8日 (月)

リー・クアンユー氏に思う

小さくとも輝く国造り 
日本はシンガポールに学べ 

   3月23日、シンガポールのリー・クアンユー元首相が91歳で他界したという悲 しいニュースに接した。シンガポールは 1965年8月にマラヤ連邦から独立 し、同年私が日本に来た頃、新聞によく 登場していた人物である。
  シンガポールを含むマラヤ連邦は、1960年代当初、国連においてチベット 問題を積極的に支援していた。リー・クアンユー首相はベトナム戦争においても反共の立場でアメリカを支持したため、 子供でありながら私は彼の言動に興味を 抱き、その後も彼の動向を注目し著書などを懸命に読んだ記憶がある。彼が当時 「私は中国人ではなく、中国系シンガポール人である」といぅ言葉には特に感銘を受けた。
  1980年代初め頃までシンガポール はチベット問題に対しても非常に理解のある国であった。彼は若いときには共産主義も受け入れていたが、60年代から既に資本主義を導入し、独自の民主国家を建設して沢山の優秀な官僚を育てた。私は大学を卒業後、ダライ・ラマ法王の代表として当時アジア太平洋全体を担当しており、法王のシンガポールご訪問の際も寛大なご協力をいただいた。
  戦前及び戦中のアジアのリーダーに次ぐ戦後のアジアのリーダーとしてイン ドのインデイラ•カンジーとリー・クアンユーは世界的にも存在感を発揮していた。後になつて同じ客家といぅことで鄧小平とも理解しあえる関係になり、中国の近代化にも多大な貢献をした。これには感情的に理解できないが、私の人生において最も憧れた20世紀のリーダーの一人であり続けた。ここに生前のご好意に感謝し今日の、小さくとも輝くシンガポールを造ったことに、心から敬意を表したい。国の繁栄は国家のサイズや人口あるいは資源だけではなく、リーダーのビ ジョンと国民の強い意志によることを具現化し、私たちに教えてくれた人物であ った。
 私は今の安倍首相も戦後日本の国家としての真の独立と繁栄のために努力していることは評価するものの、日本国全体 としてはシンガポールから学ぶことが多いように思う。過去の日本のリーダーはシンガポール同様極めて有能な官僚たちを育てたが、近年無能な政治家と無責任なマスコミはそのエリートたちをバッ ングし、多くの人材が民間企業や外資系に流れたことは勿体無いことであった。
 その一つの例が、昨年の日中首脳会談に関する合意文書の英文が双方が擦り合 わせをする前に中国によって一方的に発表され、尖閣諸島が問題としてあたかも日本側が認めたかのような印象を与える ような事件が起きたことだ。私の未熟な 経験から言っても、通常二つの異なる言葉で覚書や合意文書を作る場合には、両国の言葉以外に共通語として英文などに訳し、それを双方が照らし合わせ一語一 句を確認するのが常識である。
 当時、日本では朝日新聞をはじめ、マスコミや元老、言論人は直接対話が両国の関係改善のための第一歩であると、対話をすることだけに注目をしていた。し かし、その対話は害あって得るものは何一つ無かったように私は思う。むしろ中国によって世界中のメディアや専門家に尖閣諸島問題、つまり領土問題があるかのようなイメージを作るのに利用されて しまった。
 今再び日本のメディアや政界の元老、 財界の重鎖、そして宗教までが安倍首相の戦後70周年の談話に侵略と植民地支配を人れるべきだと口を揃えて騒いでい る。
 特に驚いたのは日本カトリック司教団が発表した「戦後70年をへて、過去の戦争の記憶が遠いものとなるにつれ、日本が行った植民地支配や侵略戦争の中での人道に反する罪の歴史を書き換え、否定しようとする動きが顕著になってきてい ます」「日本の中でとくに深刻な問題は、 沖縄が今なお本土とは比較にならないほ ど多くの基地を押しつけられているばかりか、そこに沖縄県民の民意をまったく 無視して新基地建設が進められていると いうことです。ここに表れている軍備優 先・人間無視の姿勢は平和を築こうとする努力とは決して相容れません」という 文面である。
 なぜなら、政教分離は政治が宗教に関与し、利用することを良しとしないのと同様に、宗教が政治に関与し、しかも一方的な価値観であたかも世界に1億2000万人の日本を代表する教団の総意で あるかのように印象付けている。
 安倍首相の諮問機関「21世紀構想懇談会」の座長代理を勤める北岡伸一氏の発言にも落胆した。つまり、日本の社会に対して責任ある立場の人でさえも、今の中国の軍事力増強と経済力に伴う覇権行為がアジア全体でどれだけ深刻なものに なっているか全く認識していないか、ま たは対岸の火事として自分たちに及ばな いと思っているのだろうか。隣の韓国でさえ、済州島の住民が中国の経済侵略に抵抗する運動を起こしているし、韓国政府の中からも中国の露骨な内政干渉に抵 抗する動きがあり、ミャンマーでも主権 に干渉する中国に抗議している。
 リー・クアンユー元首相のシンガポ— ルでさえこの中国の脅威に対し、インド に積極的な関わりを求めている。これら の国々は現実を見据えて生きているが、 日本はどうだろうか。

※ 「VIEWPOINT MAY 2015」 掲載

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(217) 習近平の一帯一路(陸海シルクロード)戦略と中国の南シナ海埋め立て

習近平のパキスタン訪問と、一帯一路(陸海シルクロード)構想。そして南シナ海埋め立­てなど中国の覇権主義について。※2015年5月1日収録。

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2015年6月 1日 (月)

(216) ダライ・ラマ法王の輪廻転生制度について

[解説] ダライ・ラマ法王の輪廻転生制度について。国際社会の議論とチベット人の考え。※20­15年5月1日収録。

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