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2016年6月

2016年6月26日 (日)

危険極まる中台首脳会談

チベットを軍事制圧「17条協定」との類似性

   中国の習近平国家主席と、台湾の馬英九総統が今月初め、シンガポールで首脳会談を行っ た。「歴史的握手」「一つの中国を確認」などと報じたメディアもあったが、危機感を覚えた関係者も多い。チベット出身の国際政治学者、 ぺマ•ギャルポ氏は、中国の軍事的圧力の下でチベットが結ばされた「17条協定」との 類似性などについて緊急寄稿した。

    習、馬両氏の発言を聞いて、私は「事実上、『台湾の中国併合』に合意したのではないかという懸念を抱いた。それは、中国のチベット占領の一歩である、1951年年5月23日の「17条協 定」と照らし合わせるとよく分かる。
    同協定は、中国がチべ ッ卜東部を軍事制圧した 後、中国の見解を聞くた めに北京に派遣されたチベット政府代表団が、拘束状態で脅しを受け、権 限もないのに結ばされたものだ。17条には、中国人民解放軍のチベット進駐や、チベットの外交権を中国政府に委譲することまで記された。
    今回の会談冒頭、習氏は「(中国と台湾は)『一つの家族』だ。どんな力もわれわれを引き離すことはできない」と語りかけたという。
    17条協定の第1条は「チベット人民は中華人民共和国の祖国の大家族の中に戻る」とある。私は、この「大家族」と17条の「一つの家族」の意味が同じだと思わざるを得ない。
    会談では馬氏が「平和の現状を維持したい」 として、ホットラインの設置や平和的な紛争処理 など5項目を提案。習氏も原則維持の重要性を強調したとという。
17条協定の第4条にも 「チベットの現行政治制度に対しては、中央は変更を加えない。ダライ・ラマの固有の地位および職権にも中央は変更を加えない」とある。
 チベットの現状や、返還後の香港の現状を見れば、中国が「現状維持」を守る気がサラサラないことは分かるはずだ。
 中台首脳が「一つの中国」を確認した以上、台湾で大規模な独立運動が起きた場合、「祖国の治安維持のため」として中国人民解放軍や公安部隊が派遣される口実ができたともいえる。
 現に、米国や日本の情報当局者は「独立志向の強い民進党の蔡英文主席がリードする台湾総統選(来年1月16日)から、新総統の就任式がある同5月までに、中国が動く可能性がある」と分析しているという。
 これは台湾だけの問題ではない。台湾の平和と安全は、日本と北東アジア、西太平洋の安全保障に直結している。中国が台湾を取れば、太平洋に容易に打って出ることになるからだ。
  ぜひ、台湾の人々にはチベットの悲劇から学んでほしい。そして、日本の人々、特に沖縄の人々には、中国が「チベットの次は台湾」「台湾の次は沖縄」と狙っていることを自覚してほしい。

※『夕刊フジ』(2015年11月25日付)に掲載

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2016年6月25日 (土)

ダライ・ラマ法王の死を待つ中国

チベットの国璽を偽造

 九月八日、チベットで、自治区成立五十周年を記念する大規模な祝賀会が開催されました。祝賀会はラサ市のボタラ宮広場で行われ、人民政治協商会議主席・兪正声氏をはじめ、 劉延東副首相、軍総政治部主任•張 陽氏など政府、軍の関係者、六十五人が出席。ラサ市民約ニ万人も参加しました。
 祝賀会では中央政府から次のような祝電が届き、発表されました。
「チベット自治区成立は、チベットの歴史に新しい一べージを開いた」
また一九六五年以降、チベット経済が二十倍も成長していることに触 れ、それは政治の安定、各民族が団 結、中央政府と協力した結果だと明 言。私は、そのデタラメな内容の祝電に怒りを禁じえませんでした。
 たしかに、自治区成立はチベットにとつて歴史的な一ぺージには間違いない。しかし、それはチベット人にとって“屈辱の歴史の始まり”でしかありません。
  一九五〇年、中国はチベットに人 民解放軍を送って侵攻、一九五一年 には中国の一部になるよう求める「十七条協定」を押し付けてきました。こ れは、国際的に見れば、“侵略”以外の 何物でもない。チベットは武力で脅 され、無理やりサインさせられたのです。
  しかもその時、中国は調印に用いるチベットの国璽を偽造しました。チベットの代表は交渉の際に国璽を 持っていましたが、協定の内容が酷いので「国璽は持っていない」と中国側に嘘を伝えると、「国璽ならこちら で用意してある」と言って本物そっくりに偽造した国璽を捺したのです。
   たしかに、昔に比べてチベット経済は発展しました。飛行場をはじめ、 電車、道路などのインフラも整つたのは事実です。しかし経済発展、インフラの恩恵を受けているのは、中国から来た大量の移住者や軍の関係 者、チベットの行政にかかわっている人間だけ。一般のチベット人には 関係のない話なのです。
「政治の安定」という言葉も聞いて呆 れてしまいます。本当に政治が安定 しているのならば、今回の五十周年祝賀会でも、参加者を当局が選定し たり、人民解放軍、武装警察が常に会場を監視したりする必要はないで しよぅ。
 それに、自分の体にガソリンをかけて焼身自殺をする人間が百四十二人も出てくるはずはない。しかも、 この百四十二人という数も身元の判明している人だけ数字です。
 最近は焼身自殺の取り締まりが厳しくなり、焼身自殺者の家族や関係者にも追及が及ぶようになったた め、焼身自殺を図る者は身元がわからないように実行するのです。

パンチェン・ラマ師の安否

 五十周年祝賀会二日前の九月六 日、中国政府は記者会見を開き、「チ ベットでの民族自治制度の成功実績」と題する白書を発表しました。
「一九五九年の民主改革と一九六五 年の民族地域自治制度の実施以来、 チベットでは新しい社会主義制度が 確立され、同時に経済社会発展も歴 史的に飛躍した。経済の急速な発展と社会の全面的進歩によってチべッ トの各民族は確実な利益を得て、人民の生存と発展の権利が保障されるとともに社会は調和し、安定してい る」
   チベット自治制度を正当化するもので、五十周年祝賀会での祝電とほぼ同じ内容でした。
 その会見では現在、中国に拉致され、消息が不明になつているパンチ エン・ラマ十一世についての情報も公表しました。
「ラマ氏は普通に生活を送ってお り、『そっとしておいてほしい」と言 っている」と中国政府は伝えています が、これも本当かどうか疑わしい。
  中国に拉致されてから二十年もの 間、訪中する何人もの指導者たちが パンチエン・ラマ師に会わせてほしいと要請しましたが、中国は応じま せんでした。
  会見であんなことを言つたら、却 つて不自然に思われるのは予想のつ くことですし、本当なら、公の場に出てきてパンチヱン・ラマ師自身の口から発言させたほうが中国にとってもプラスのはずです。
  しかし、そうしなかつた。「公に出 せない事情があるのでは」「すでに殺 されているのでは」と勘繰りたくなり ます。
  なぜ中国はいま、パンチエン・ラマ師の情報を公表し、祝賀会や白書 などで「チベット自治制度は成功している」と世界にアビールしているので しょうか。
  これには、九月二十五日に予定されている米中首脳会談が関係しています。アメリカにはチベットの支持者が大勢いますし、ダライ•ラマ法 王の人気も高い。講演会はいつも满員です。
  来年、米大統領選挙に突入すれば、各候補者が激しく中国を批判するこ とが予想されます。習近平主席は彼らの批判を躲すアリバイとして、「チベット自治制度の成功」を世界にアピールしているのです。

欺瞞に満ちた習近平演説

  五月二十三日に行われた「日中友好交流大会」で、習近平が行った演説に も許せない一節がありました。
「日本軍国主義が犯した侵略の罪を隠したり、歴史の真相を歪曲したり することは許されない。日本軍国主義の歴史を歪曲し、美化しようとす るいかなる言動も、中国人民とアジ アの被害国の国民は決して許さない」   
 どの面下げて言うのでしょぅか。 中国は以前、「チベットは有史以来、中国の一部だった」と言っていました。明らかに歴史の歪曲ですが、 次は元(一二七一〜一三六八)の時 代から一部だったと言い始め、現在 は「古代より中国の一部だった」という曖昧な表現を使っています。
  歪曲した歴史でさえコロコロと見 解を変え、一貫性がない。まったく 信用のできない国です。
  また、習近平は九月三日に行われ た「抗日戦争勝利七十周年式典」での 演説で、軍を三十万人削減することを明言し、メディアは大きく取り上 げました。しかし、この「三十万人 削減」発言の裏を読み、分析したメ ディアはなかったように思います。
  この削減される三十万人は基本的に陸軍で、二〇一二年に失脚した薄熙来と繫がりのある人々だと見られ ています。つまり、三十万人削減は 自分の派閥闘争を都合よく進めるた めの方便なのです。
  それに、陸軍は基本的に本国を守るための部隊。三十万人削減で浮い た分のカネは、外に出て攻擊を仕掛ける海軍、空軍のために使われることは想像に難くありません。ですか ら三十万人削減発言は、手放しで喜 ベるようなことではないのです。
  一九八〇年代、鄧小平が兵力を百 万人、削減したことがありましたが、 その削減された百万人は、公安警察 や武装警察に流れただけでした。習 近平は鄧小平と同じことをしているにすぎないのです。
 今回、もう一つ話題になったのは、 習近平と対立していると見られる江 沢民元国家主席が式典に出席したこ とです。
  なぜ今回、江沢民は出席したのか。中国国内の官製メディアをチェ ックしていると、あることに気が付きました。海外メディアには江沢民の姿が出ていましたが、中国国内のメディアでは江沢民の映っている映像、写真は全部カットされているの です。中国中央電視台から始まつて、人民日報など官製メディアは習近平、プーチン大統領、朴槿恵大統領、潘基文国際連合事務総長の姿を出すばかりでした。
「私たちは決して派閥闘争をしているわけではない」と世界に対してさり 気なく印象付けると同時に、「いまは 俺の時代だ」と江沢民に見せつけるわけです。
  ですが、日本の新聞には「三十万人 削減」と見出しがついているだけで、 深く掘り下げた分析はありませんで した。
  日本のメディアには中国の言葉を 単純に捉えるだけではなく、その裏 にある意図、背景などをしつかりと 分析してほしいと思います。

“三つの勢力”の取り締まり

 中国は昨年から、“三つの勢力”の 取り締まりを強化すると発表しました。
  第一の勢力は分裂主義。これはチ ベット、ウィグルなどを指していま
す。
  第二は過激主義。これは宗教を指しています。ことに近年、中国はキ リスト教徒に対する弾圧を強めてお り、この一年半だけでも五十の教会 を破壊、一千三百人の信者を逮捕したという情報があります。信者だけでなく信者の関係者、弁護士も逮捕している。中国はキリスト教を通じ て、西洋の民主主義が入ってくることがよほど怖いと見えます。
  パデュー大学で社会学を研究するフェンガン・ヤン教授の研究によれ ば、二〇三〇年には中国のキリスト 教人口はニ億四千七百万人に上り、 世界一キリスト教徒を抱える国にな るとの試算があります。ために、いまから弾圧を強めているのでしょう。
 第三はテロリズム。現在、中国は 「テロリスト=ウイグル族」と定義し ています。
 二〇一三年に起きた天安門広場自動車突入事件や、タイのバンコクで今年八月に起きた爆弾テロも中国はウイグル人の犯行だと断定し、弾圧 する口実にしています。
  以上の三つの勢力と中国は徹底的に戦うとしていますが、裏を返せば アメリカや日本以上に、この三つの勢力を中国は脅威に感じているとも 言え、これらへの弾圧はますますエスカレートしていくことが予想され ます。

法王は問題を解くカギ

 三つの勢力と同等に中国が脅威を抱いているのが、ダライ・ラマ法王 の存在です。私はこれまで、チべット問題に関して中国側と十五年間、直接、間接的に交渉などをしてきましたが、彼らは法王をチベット問題 の元凶と思い込んでいる。私は中国 側によくこう言っていました。
「法王は問題を解くカギだ。決して 法王自体が元凶なのではない」
 しかし、私の言葉は理解してもらえず、法王への批判、弾圧は強まるばかりでした。
 中国当局は二〇〇七年、法王をは じめとする活仏の高僧が、生まれ変 わりの子供を探して後継者に選ぶチベット仏教の伝統「活仏転生制度」に 介入し、法王の後継者選びは当局の認定を受けなければならない「チべッ ト仏教活仏転生管理弁法(規制)」をつくりました。
  無神論の共産党が活仏転生にかか わるのですからおかしな話なのです が、偽の後継者を仕立てれば、チべ ットだけでなくチべット仏教の国、モンゴル、ロシア領内のカルムイク共和国、ブリヤート共和国などを掌 握できる。
 この法律に対抗するため、法王は 「自分が最後のダライ•ラマかもしれ ない」との発言をし始めました。法王の影響力は絶大ですから、法王自身 が「自分が最後のダライ・ラマだ」と 発表してしまえば、中国がいくら偽 の後継者を仕立ててもチベット仏教 の国々は信じません。右の法律を無 効化できるのです。

中国の野望を阻止するには

 あまりに恐ろしいことで口に出すことも憚られますが、中国はいま、 ダライ・ラマ法王が他界するのを待 っています。
 中国が二〇〇九年から亡命政府との正式な対話を打ち切ったのも、法 王が亡くなるまでの時間稼ぎが目的でしょう。法王がいなくなれば必然的にチベット、亡命政府が瓦解すると考えているのです。
 中国には昔から囲師必闕(必ず逃げ道を開け、窮地に追い込んだ敵には攻擊をしかけてはならない)という言葉があります。昔の中国には、 まだこの言葉が生きていました。
   一九五九年、ダライ・ラマ法王が チベットからインドに逃れた時のこ とです。途中のヒマラヤ山脈を越える時に、ヘリコブ夕—に乗った中国 の追っ手が法王を発見した。追っ手 は毛沢東に「発砲の許可をください」 と言うと、毛沢東は「放っておけ。い ずれ餓死する」と、追い詰めることが できたにもかかわらず、見逃しまし た。
  ですが習近平体制になって以降、 それが変わってきている気がしてな りません。
  習近平が就任してから掲げている 「中国の夢」はかつて中国が直接的、 間接的に影響を及ぼした地域、国を取り戻すことです。その夕ーゲット のなかにはもちろん、日本の沖縄や 尖閣諸島も入っている。チベット問題、ウイグル問題同様、これらの領土の主権も自分たちの核心的利益で あると言い続けています。
  中国の野望を阻止するためにも、 先述したように、日本などがしっか り中国の動向に目を光らせ、中国側 の言葉を鵜呑みにすることなく、そ の裏にある意図を分析する必要があ るのです。

※『WiLL』(2015年11月号)掲載

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二つの軍事パレードが露呈する中国の矛盾

ラサと天安門広場

   現在中国政府が最も恐れているのは、 中国共産党政府の言う「3つの勢力」で あって、同政府が言う「アメリカ帝国主義の覇権」でもなければ「日本軍国主義の復活」でもない。中国政府の指導者達や公安関係者が国民に常に警戒を呼びか けている3つの勢力とは、①民族分裂 勢力(分離主義者)、②極端な宗教勢力 (極端なと言うのは国際世論を配慮しての策)、③暴力テロ (①、②の勢力と農 民、貧困層などの反発を弾圧するための 口実)の3つである。
 今回中国政府は大々的な「抗日反植民地主義.反帝国主義勝利70年」の式典を主催し、戦ったこともない戦に「共産党 が日本軍と戦って勝った」と国内外に宣伝した。約50か国の首脳に招待状を送ったが、結局参加したのはロシアのプーチ ン大統領、韓国の朴槿恵大統領、他盟友 のパキスタン、スーダンなどの他、上海 機構の"スタン"のつく国々だけで先進 国はほとんど政府代表レベルだけで、首相は参加しなかつた。習近平の目論見は 失敗に終わつたと言えるのではないだろうか。
 最近の中国の反日プロパガンダが激し かったにも関わらず、米国の民間調査機 関が、アジアを中心に調査を行ったところ 、八割の人々は依然として日本に 対して好感を持つていることガが明らかになつた。
    中国は他の国に対しては歴史を遡つて歪曲し、植民地主義、 帝国主義、軍国主義などのレッテルを貼つて非難する一方、自国による侵略行為は「解放」と 主張する。習近平は「歴史の歪 曲は許さない」と言っていたが、 歪曲しているのは中国政府であ る。
  今回の天安門広場での軍事パレ—ドで数多くの新型戦闘機や ミサイルなどの武器を自慢気に 公開し、中国の軍事力の優位生 を強調した。しかし、それらの 新型兵器の実際の機能について知っているのは中国の人民解放軍の関係者だけだ。
  1980年に当時の北京政府 の招待でダライ•ラマ法王のチベット実態調査団員の一員として筆者が北京滞在中、現地での軍事演習を見せてもらったことがある。人民解放軍の広報官に感想 を聞かれて、「映画の撮影場のオモチャ みたいです」と答えたら、自国の力を見 せつけたかった彼は顔色を変えて怒りを表した。中国政府としては私達に共産党指揮下の人民解放軍の圧倒的な力を見せることで、チベットが抵抗すれば木っ端 微塵に制裁すると間接的に示したかった のであろぅ。弾道ミサイルの射程距離が アメリカの内陸にまで至っていると言え ば、世界が怯えるとでも思っているのだ ろうか。
  中国政府は先月、「チベット問題に関 する工作会議」を開くと同時にチベットに関する白書を出した。白書には、中国 政府の下でいかにチベットが発展し人々が幸せになったかを強調するために捏造 されたデータが羅列されていた。かつて は「チベットは有史以来中国の一部であ る」と言い張っていたが、最近はさすがに少し控え目に「古代以来」と曖昧な表 現に変えている。
 しかし、北京政府の矛盾は明らかで、今年の9月8日、その古代以来中国の一 部であるはずのチベットで、共産党政治局常務委員会で4位の地位に当たる政治協商会議の主席は大団体を率いて首都ラサ へ行き、チべット自治区成立50周年の式 典を派手に行った。中共政府は「19 6 5 年のチベット自治区の成立は、チベットの歴史の新たな一ぺージを切り開いた。 40年来、中央政府と各地の大きな支持の下で、チベットは大きく変化した。今日のチベットは、政治が安定し、経済が発 展し、社会が安定し、民族が団結してい る」と述べている。
 実態は全てその反対で自治区とは名ば かりで、実情は自治を奪って一方的に中国に併合し、人権と民族自決権を奪ったに過ぎない。現に集会に駆り出された大 衆の中で、喜んで自発的に参加した人は ほとんどいない。政治が安定しているのなら24時間体制で、軍、武装警察、公安当局が厳重に目を光らせ、無数の監視カメラを設置する必要はないはずである。
 確かに以前よりはインフラが整備され 経済もある程度良くなったが、その恩恵 を一番受けているのは大量の中国人移民と公務員、そしてラサを中心に活躍している売春婦などで、一般のチベット人は そのおこぼれすらもらっていない。民族 の団結がないからこそ中国政府は、ダラ イ•ラマ法王が誠意を持って対話をし、中道路線で平和理に解決しようとする努 力を「分裂分子」と決めつけ、徹底的に戦うと言っているが、こうしたことは習近平態勢の矛盾を露呈しているとしか言 えない。法王の写真を寺、家庭、公の場 から排除し、代わりに今回のラサでの軍事パレードで毛沢東、鄧小平、江沢民、 胡錦濤、習近平の大きな肖像画を持って行進した。
 しかも、これらの血で手が染まった独裁者達の写真を、寺、寺院、教会(最近はキリスト教に対しても激しい弾圧を 行っている)に記念行事の贈呈品として 贈り、飾るように命じている。これは正に宗教弾圧で、それに抗議する140名 以上のチベット人がチベットの自由とダ ライ•ラマ法王の長寿と早期帰国を叫び、焼身行為で訴えている。
 中国の民族虐待、浄化、宗教弾圧に対する抵抗の方法は違っても、各民族、宗教信仰者、人権活動家たちが自分の価値や文化に従い、不退転の決意で抵抗している。その中で最近、多少注目浴びているのはウイグルである。
 195 5年にウイグル自治区が成立され、正式に中国の領土化された。以来チベット同様、ウイグルでは耐えがたい宗教弾圧、同化政策が実行されている。伝 統的な民族衣装を纏うことも許されず宗教的価値観に基づくウイグル人男性の風習である、髭を伸ばす自由まで奪っている。領土、家畜、財産など有形のものは 言うまでもなく、言語や信仰など無形の価値まで奪っている。危険極まる中国の核実験も、古代チベット領、現在のウイ グル自治区で行われており、しかも管理 制度はかなりずさんなものだと聞いている。
 2013年10月28日に中国共産党の心臟邰であるとされている天安門広場 で、ウイグル人一家の車が突入し自爆行為の爆破事件が起きたと報じられた。
 2014年3月に雲南省の昆明駅で無差別殺人事件が起きた際も、中国共産党政府はウイグル人の犯行と決めつけた。翌4月、習近平国家主席はウイグル 自治区を訪問し、現地の武装警察にウイ グル人の抵抗を徹底的に抑えるように要 求した。
  その直後、習近平国家主席がウイグルを出立した4月30日に、ウイグル自治区の首都ウルムチ駅で殺人・爆破事件が起きた。報道によると数人のウイグル人が 駅改札付近で刀を持って人々に切りつ け、身に着けていた爆弾を爆発させ、3 人が死亡し79名が重軽傷を負ったとの報 道があった。
 これらの事件全てが本当にウイグル人 の仕業だという確証はなく、中国当局の 自作自演だという説もある。また、今年 8月18日にバンコクで発生した爆弾事件に関して逮捕された人物像や、犯人とし て逮捕された人物の所持品検査などを証 拠としてウイグル人関与の可能性が高いと首う報道が流れているが、タイの治安当局は慎重な姿勢を示し、今のところはこのような断定を避けている。
 もちろん、いかなる非合法的な暴力も賞賛することは出来ないが、その行為だけを取り上げて批難し、そのような行動 に押しやっている要因を無視する事は不正、不公平であると言わざるを得ない。
 中国政府は信仰を圧殺し、無神論を押し付け、同化(漢化)政策を赤化(共産化) を強制している。1987年チベットで 大規模な決起デモが発生した時、当時の公安トップの立場にいた喬石•党政治局常務委員が指示した「主動的に攻撃し、多大な打撃を与え、現場で勝利する」という中国共産党の戦術を、当時チベットにおける共産党トップだつた胡錦濤が忠実に守り、無差別、無慈悲に殺戮を厳行 した。その政策と戦術は習近平も忠実に継承している。
 北京での「抗日勝利70周年記念行事」 と「チべット自治区成立50周年記念式 典」に共通していることは、自国の不正不当な行為を正当化し、21世紀の覇権主義国家としての中国の野望を明確化していることである。自由と民主主義を掲がる国々は、結束してこの脅威にどう対処するか真剣に考えるべきではないか。

※『 新政界往来』(2015年10月号)に掲載

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2016年6月22日 (水)

(262) 選挙について考える

[解説] 今回は選挙について。チベット亡命政府の選挙とイスラム教徒初のロンドン市長、日本に­帰化した候補者など。※2016年5月14日収録。

※ペマさんへのご質問はこちらのアドレスにお送り下さい。→ pema_gyalpo@rfuj.net

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(261) 中国政府に利用される仏教

[解説] 宗教を道具として利用する中国政府の仏教外交。日本の仏教者へのメッセージ。※201­6年5月14日収録。

※ペマさんへのご質問はこちらのアドレスにお送り下さい。→ pema_gyalpo@rfuj.net

・テーマ曲 愛する父母よ DRENCHEN PHAMA(Beloved Parents)
ソナム・ギャルモ「チベットからの歌声」より

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2016年6月 8日 (水)

(260) 戦闘態勢を整える習近平政権

[解説] インド、ネパール、パキスタン、拡大する中国の軍事戦略。習近平の軍権掌握について。­※2016年5月14日収録。

※ペマさんへのご質問はこちらのアドレスにお送り下さい。→ pema_gyalpo@rfuj.net

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