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2016年8月15日 (月)

民間外交推進協会「第190回国際問題懇談会」での講演録

【講演要旨】

   戦後70年間に世界で100以上の戦争が起きており、難民問題が発生した。自分は7歳の時チベットからインドへ亡命した。アジアの戦後の難民1号だ。現在、台湾、北朝鮮を含めアジアは27カ国あるが、1947年のインド独立時には欧米の植民地で、中国は内戦状態だった。主権を回復した日本に続き、多くの国が独立した。共産主義が南下しベトナムは南北に分かれた。アジア各国の赤化を防ぐために67年にASEANが誕生した。インド亜大陸ではSAARC(南アジア地域協力連合)が85年に創設された。日本はいずれもオブザーバーだ。ASEAN各国の法律、行政は旧宗主国の制度であったが、SAARCの諸制度は英国型で一様であり、ASEANよりも域内交流が盛んだ。
 冷戦終了後、中国、ロシアと旧ソ連の中央アジア4カ国で上海協力機構が設立されたが、日本は排除され、発言権ある仲間となっていない。日本は冷戦後も米国陣営とみられている。日本はAPEC(アジア太平洋経済協力会議)のの重要な一員であるが、APECはASEAN統合を邪魔する存在に見えるし、日本への義務付けも多く、不利益ではないかと思う。
  日中戦争で日本が戦った中華民国は、現在の中国の僅か37%の面積で、チベットは入っていない。中国大陸は5千年の歴史が、漢民族の王朝が続いたわけではない。元はモンゴルが中国を侵略して作った王朝であり、チベット、モンゴル、満州の宗教は仏教だ。清朝はチベットに大使の役割を担う「駐蔵大臣」を設置していた。「中華」概念は、清朝を倒し新しい建国の概念として、米国を学んだ孫文が11年に導入したもの。我々は自分たちを中国人と思っていないが、メディアは「チベット族」を中国のプロパガンダに沿った呼び方をする。中国成立の翌年50年に中国はチベットを軍事制圧し17カ条協定によりチベットの主権を奪い、65年に自治区化した。文革後の中国は、30年間で経済力が飛躍的に発展し、軍の近代化に成功し自信をつけた。政治的、軍事的野望も出てきた。中国の近代化により、レアメタルなどのチベットの地下資源価値も上がった。チベットにはメコン川などアジアの水の源流も多い。中国は240万人の軍隊と300万人の武装警察を背景に、自国だけでなく他国にも脅威を与えている。
  日本は「島国」と言われるが、排他的経済水域を足すと面積440万平方キロの海洋大国である。大国意識を持って、国連改革に積極的に指導的な役割を果たすことが大切だ。アジアの繁栄にはバランスが大切であり、キッシンジャーは、「中国の台頭を非軍事的に牽制できるのは、インドと日本の協力しかない」と発言しており、日印関係の強化がアジアの平和と安定に寄与しよう。天安門事件後、西側の対中認識が変わり、米印関係は92年以降徐々に好転した。
  安倍首相も同様の考えで、日印関係はグローバル・パートナーに発展したが、メディアのインド知識不足と、国民の意識の遅れが残念だ。日本はアジア一員と自覚し、国連改革や常任理事国入りを目指し世界に貢献することが重要だ。中国のシルクロード構想が実現すると、日本の自由貿易に支障が出る懸念がある。民主主義国家として法の支配が定着している日本とインドが協力して、ASEANを核とするアジアの仲間に中国を入れる構想が望まれる。日本はかつてチャンドラ・ボースなどアジアの独立運動家を育てた。これからは、共に戦った者同士、平和的支援をし合っていくことが可能だ。米国のように、アジア各国の指導者候補となる留学生を日本で教育する、人材育成を計画的に実施すべきだ。アジアの人々も期待している。

【主な質疑】

Q 戦後のインドの経済政策はソ連に近かった。インド側の変化で日印両国の利害が一致したのではないか。

講師 戦後、多くの独立国で計画経済が流行した。インドがソ連寄りになったのは、米国がパキスタンを支持したため。インディラ・ガンディー元首相も含めインドは親日的だ。

Q 日本はインドに親近感がある。経済関係ではインド向けODAは増加したが、日本企業の投資は多くない。インド留学生も少なく、欧米を向いている。下地はあるので改善余地はあるのではないか。

講師 米国には中国人よりもインド人留学生のほうが多い。お金は持っているが、日本側に英語の障害と、「インド人は貧しい」という意識があった。南アジアの対日感情は悪くなかったが、日本が東南アジアに力を入れていた。

Q 日本の難民対策はもっと踏み込むべきではないか。

講師 欧州は時代により難民の出入りを繰り返してきた移民国家。日本は、インドシナ難民以外に、本格的に受け入れた経験がなく、安易に受け入れるべきでない。日本社会は難民の異文化と宗教を十分尊重し、融和できるのか。偽装難民の流入懸念もある。

  

 ※『FECニュース』(2015年11月1日付)に掲載

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