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2016年8月

2016年8月31日 (水)

(269) 2016参議院選挙の結果と憲法改正

[解説] 改憲勢力が3分の2を超えた参院選について。現在のアジアの状況に対応できる憲法を。※2016年8月8日収録。

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(268) 尖閣諸島周辺に中国公船 オリンピック開催期間中の中国の挑発

[解説] 尖閣諸島周辺に押し寄せて来ている多数の中国船について。リオ五輪と、自国の主権が侵されていることの深刻さを感じていない日本。※2016年8月8日収録。

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2016年8月15日 (月)

【インタビュー】日本は中国のチベット弾圧を直視せよ


ヒステリックに「戦争法案」を叫び平和を貪り続ける日本人こそ中国の植民地とされたチべツ卜民族の悲哀を理解すべきだ

─最近のチベットの状況は?

監視強化の中続く焼身抗議

ぺマ・ギャルポ(以下PG) 今年はチベット自治区ができてちょぅど50年だ。それで中国の警戒が強くなっている。軍の出入りが激しく、監視も強化され ている。しかし民衆は負けていない。焼身抗議は名前や年齢などがわかる人たちだけでも150人ほどになった。若い世代の人たちが街中で独立万歳を叫ぶ運動も見られる。
 中国当局による弾圧は相変わらず激しい。反政府的な人を見つけると逮捕・拘束され、裁判も行われない。最近では高僧のテンジン・デレク・リンポチェ氏(65歳)が7月12日に獄死した。チべッ卜人であれば知らない人はいないほどの方だった。しかし家族には遺体も返してくれない。よほどひどい拷問の痕があるのではないだろぅか。
 中国はチベット支配のために アメとムチを使い分ける。そのや り方は巧妙で、チベット人の中にも羽振りのよい人がいる。経済的に懐柔し、内部分裂を図っているのだ。
 チベット鉄道(青蔵鉄道)が2006年にできてから、チベットへの観光客が年間400万人に増えた。中国政府による奨励の効果もある。当初はチベット人も鉄道の開通を喜んだ。チベットは標高が高く (平均海抜3500m)、 新鮮な野菜などなかなか手に入らない。野菜をはじめ、多くの物資が増えて生活が豊かになるのではないかと考えたからだ。しかし実際は、チベット人の生活が豊かになることはなかった。儲かったのは中国人が経営するホテルだけ。観光客相手の売春まで中国人が取り仕切っている。
 実はチベット鉄道が開通されたのは、チベットに眠る豊富な地下資源を輪送するためだった。チベット開発は、2000年の全人 代(全国人民代表大会)で「西部大開発」が正式決定されてから本格的に始まった。ただし開発がチベット人のためになることは全 くない。採掘する権利はチべッ卜人には与えられず、中国人だけが行つている。「白昼堂々の盜み」とも言われている。炭鉱で慟くチベット人の事故も多い。
 観光客の増加、開発、資源の採掘によりチベットに漢民族がどんどん増えている。中国の対チべッ卜政策は、まず植民地化、そしてチベット文化を破壊して中国人に同化し、 最終的にはすベて中国人とする浄化政策へと進む。このやり方は全く変わっていない。

独立を分離運動として弾圧

─ダライ・ラマ法王の写真所持すら禁止されるなど迫害が一層厳しくなつていると聞く。

PG インドに亡命したダライ・ラマ法王によるチべッ卜亡命政府と、中国との対話は2012年以降完全に途絶えてしまった。法王は現在、チべッ卜の独立を中国政府に求めていない。中国が「独立」といぅ言葉さえ使わなければ、あらゆる対話に応じると言ったからだ。それで法王はチベット自治区を中国の一部と認め、「高度な自治」を要求することにした。しかし中国政府は 現在、その法王との対話に応じなくなった。対話のハ—ドルをどんどん上げているのだ。
 中国政府は法王の海外での活動を分離運動と決めつけ、批判している。海外の要人との謁見も極力実現できないように阻止して いる。この妨害活動に初めて屈したのが英国だった。1989年にノーベル平和賞を受賞した当時は世界中の首脳と会えたが、今は ほとんど会えていない。現在のローマ法王とも会っていない。
 ダライ・ラマ法王は1995年、6歳の少年をパンチェン・ラマ(ダライ・ラマに次ぐ高位の化身ラマ)の転生者として認めたが、 中国政府はこの少年を拘束し (当時7歳)、別の6歳の少年をパンチェン・ラマ11世として無理やり即位させた。7歳の少年にいったい何の罪があるといぅのか。

——習政権になってからのチベット政策は?

チベット人共産党員逮捕も

PG 8月25日、習近平国家主席はチべッ卜自治区50周年にあたり、北京で「分離主義を許さない」と演説した。これは明らかにダライ・ラマ法王に向けた言葉だ。習氏はさらに、「政府と国民はチベットの統一を監視すベ きだ」と強調した。
 昨年からは、チベット人の共産党員幹部らまでもが除名・逮捕されるようになった。最初の逮捕者は17人で、亡命政府とつながっているという罪状だった。その後もチベット人共産党幹部の逮捕が続いている。ニユースで報道されていない人も含めると数百人に上るのではないか。最近 私は、中国政府との対話による平和的な解決は無理なのではないかと強く思っている。

——安倍晋三首相の戦後70年談話が発表され、中国の報道官が非難したが。

PG 中国は総理の70年安倍談話に対し、「軍国主義の侵略の歴史を切断すべきだ」と非難した。しかし中国が日本を非難するいずれの内容も、実は中国がチベットやウイグルなどに対して今行っていることだ。世界はこのことをよく理解するべきだ。21世紀に入り、いまだに植民地支配を続けている国は世界の中で中国以外にない。人権弾圧ならあるだろぅが、植民地支配はない。

植民地支配国と戦った日本

 日本はアジアの国を軍国主義によって支配したといぅが、実際にアジアで日本と戦った国はない。当時のアジアはほとんどが欧米の植民地だった。
 例えば日本がフイリピンで戦ったのは、当時のフイリピンを植民地支配していたアメリカ軍だった。インドネシアにおいてはオ ランダ軍と戦ったし、ミャンマ— ではイギリス軍と戦った。これらの地域では真の愛国者は日本と共に植民地支配国と戦った。
この事実は日本でもあまり知られていない。

——中国は今後、どういう方向に進むのか。

独立運動を離間戦術で阻止

PG 株の暴落など、経済的な危機を煽るような報道が多い。しかし中国は大国であり、そう簡単に崩壊することはないだろう。むしろ1980年代に制定された軍の近代化計画に基づき、着実に軍事覇権を拡大している。そこを注意すべきである。
 中国の戦略を見るときにニつの点を見落としてはならない。
 第一に、中国は毛沢東以来の世界制覇の野望を持ち続けているということだ。たとえ一時的に友好的な態度をとったとしても、その本質は全く変わっていない。
 習氏は就任してから「大中華民族の夢」という言葉を繰り返し使っている。これは中国が歴史的に最も広い領土をもっていた時代を取り戻すという意味だ。
 チベット、ウイグルもしかり、ベトナム、台湾、そして尖閣諸島や沖縄までもこの範囲に組み込まれている。中国の軍事、経 済、政治はそれぞれ独立して存在しているのではない。この目的のために用いられるあらゆる手段の一つに過ぎない。
 第二には、中国の伝統的な兵法の一つである「離間」である。離間とは、仲間を仲たがいさせる心理戦を仕掛けることであり、 敵を内部から崩し、漁夫の利を得ようとする作戦である。この作戦にはさほど金もかからないし、軍を出す必要もない。しかし相手を弱体化させるには効果が高い。小説の『三国志」にもたびたび登場する歴史的な作戦で、中国はこれを最大限利用している。

中国の「戦争」は始まっている

 チベットやウイグル、モンゴルの独立運動も、この離間を使って弱体化されている。チベット人同士を仲違いさせるために、チベットを支援する外国人までも巧みに使う。この結果、内部が分裂してしまう。
 具体的には、最近はインターネットで内部の悪い噂を流すことが多い。昔は口伝え、チラシなどを使ったが、最近ではネッ卜を駆使している。中国のネッ卜戦略はかなりの規模だ。中国当局を批判したり、民主主義や人権、民族の自決を訴えるものはすぐに削除される。この組織力が独立運動の内部分裂のためにも使われている。
 日本に対しては、いわゆる従軍慰安婦問題や南京大虐殺などをでっちあげ、国際社会から孤立するよう仕向けている。アジア諸国では、日本がアジアのリーダーとなることが期待しているが、それに水を差しているのだ。「日本の安倍総理は極右である」「軍国主義化するつもりだ」と宣伝している。明らかに心理戦である。
 中国による戦争はすでに始まっていると言えるのではないか。直接ミサイルが飛んできたわけではないが(ミサイルをいつでも飛ばせる状態にはあるが)、軍事力は実効支配の最終手段として最後のほんの少しの間だけ使えばよい。中国では戦争の大半は心理戦だ。そう考えれば、中国との戦争はすでに始まっている。このことに対する日本の認識は極めて薄い。

世界の変化を解さぬ日本人

─日本人は平和ボケしているとよく言われる。

PG 私はこれまで60数年生きてきたが、そのうち50年間は中国の弾圧と戦ってきた。その私から言わせれば、日本人は世界が変化しているということをほ んど認識できていない。これはとても残念なことだ。
 先日、安倍総理に対して日本の僧侶が「戦争するな」と批判する広告を出した。日本さえ安保法制を作らなければ戦争は起きな いというのだ。戦争は、戦争をしてくる相手がいるからこそ起きる。日本の周辺にはその相手が実際にいるといぅことを忘れている。日本はこれまで長い間平和だったので、幻想の世界にいるのではないか。「戦争をするな」と言いながら、その運動が戦争を引き起こすことが見えていない。
 日本国憲法は1947年に施行された。その当時、アジアにはいくつの国があったのか。その後に独立した国がかなり多い。
 当時の中国にはチベットもウィグルも入っていなかった。領土としては現在の4割程度でしかなかった。中国が現在の範囲になったのは1950年以降のことだ。日本は憲法が制定されて以降、戦争もなく、ほとんど変化はなかったかもしれないが、 世界は大きく変わった。アジアも変わった。日本人はこのことを知るべきだ。

衆院憲法調査会で意見陳述

——ぺマ先生は2004年、衆院憲法調査会の公聴会で意見陳述を行った。

PG 日本には憲法9条があるから平和を維持できたという意見がある。これは大きな勘違いだ。憲法ができた当時、日本の周辺には戦争を仕掛けようという野望を持った国は存在しなかった。ところが1949年に中国が建国し、状況は変わった。ただし当時の中国は、国内の状況を安定させるので精一杯だった。文化大革命では多くの中国人が餓死した。だから戦争をして領土を拡張しようという余裕も能力もなかった。しかしその中国が今や世界第2位の経済大国となった。アメリカの軍事力に対しても、対等ではないにしても空白を作れば入り込むほどの実力をもつようになった。米軍が撤退した南シナ海では、フィリピンやべ卜ナムの領域を実効支配してしまっている。
 日本の周辺には、日本に対して決して友好的ではなく、100万人以上の軍隊を持ち、かつ民主主義の制度も確立していない国が存在する。核兵器もある。日本人が憲法9条を毎日拝んでも、こうした事実は変わらない。

——日本に対してメッセ—ジがあればお願いします。

PG 私は日本に来て、自由がいかに貴重かということを肌身にしみて実感した。しかし日本の中に、 自由社会=経済的自由とだけ考える人がいる。しかし無秩序の自由、傲慢な自由になれば、必ず社会に副作用が生まれる。

共産主義のゾンビ性に注意

 共産主義の歴史を見ると、冷戦で一度は崩壊したように見えたが、中国が防波堤となり、共産主義は残ってしまった。本当は当時とどめを刺しておくべきだった。民主世界が安心したり、 傲慢になったりすると、共産主義がゾンビのように再びよみがえる可能性がある。
 それを考えると、日本でも注意が必要だ。これ以上経済的な格差が広がると、マルクス・レーニン主義的な思想に共鳴する人が出てくるかもしれない。家庭の経済的事情で学校に満足に通えない人もいる。早く手を打たないと、日本が共産化されてしまうのではないか。彼らはかって「革命」を唱えたが’、今は 「人権」を叫んでいる。
 17世紀から20世紀まで、植民地支配は「世界の常識」だった。植民地をもった国は自ら帝国を名乗った。今では誰も「帝国」 を肯定する人はいない。
 しかし、似たようなことが経済の世界では起こっている。「グローバリゼーション」という言葉があるが、経済界におけるグロ—バリゼーションは大抵、弱者に対して残酷だ。
 そのおかげで日本の伝統的な家庭や地域のつながりが失われた側面もある。これは重要な問題だ。日本の良き伝統・文化を失わず、真のアジアのリーダーとなるためにも、日本はもっと良識的な動きを模索する必要があるのではないか。

※『世界思想』(2015年10月号)に掲載

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能力と道徳で知事を選べ

首都のトップも国の顔
テレビの人気投票にするな

 金銭問題で東京都知事が立て続けに辞職した。一都民として実に残念である。東京都知事はロンドン、パリ、北京、ニユーヨークな どの市長同様、国の首都の行政トップとして極めて重要なポストであり、権威、権力は首相の次程度の重要な地位である。フランス歴 代の首相や大統領がパリの市長経験者であることからも分かるように、国の中核である首都の卜ップ は、一地方行政のトップというよりも国の顔のひとつである。
 今回の舛添都知事辞職に関しては、様々な側面から色々な立場の人々がコメントをしているので、特にここで改めてコメントする必 要は無いだろう。ただ一つだけ意見として表れていないものは法律の問題よりも、人間として守るベき道徳の欠如の問題があると思 う。
 しかし、次期知事候補者として舛添氏が辞職を表明した後に挙がっている名前を見ると、残念ながら選挙民にも、また、政党にも、マスコミにもそのような反省は見られなかった。依然として知名度優先の人気投票のような気分で候補者を選ぼうとするような雰囲気がある。 例えば、真っ先に有力候補として名前が挙がっている民進党参院議員の蓮舫さんは、政権にあったとき事業仕分け人として「2位じやだめなんですか」などと述べた。
 ナンバー1を目指すことはバカバカしいというような考えの持ち主を、「ナンバー1」つまり1位の金メダルを夢見て日夜奮闘してきた選手たちが活躍するオリンピックの主催都市の主役にしようとしたことは大きな矛盾である。
 他に名前の挙がった人たちに関しても、テレビやメディアに出る露出度が候響の絶対的な必要条件のように誤認されているように思う。これでは前の2人の知事が辞めなければならなかったことの本質的な問題を見ておらず、何らかの過去の過ちに対する反省の色が見られない。
 次の都知事に対して私たちが望むのは、行政経験豊かで政治に対してに真剣に取り組んできた人物で、派手ではなくても真面目に公約を果たし、都民の幸せを重んじ、国家の利益を追求できる人物である。政治を玩具のように途中で投げ出しては次のポス卜を目指す、タレン卜政治家の名前も挙がったが、私から見ると東京都現職の副知事である安藤立美氏のような行政能力のある人の名前が出てこないのも腑に落ちな
い。
 確かに、地味でありタレン卜性はややもすれば不足かもしれないが、東京都の混乱に終止符を打ち、来る2020年のオリンピックまでに東京都への信頼回復と日本の名誉を取り戻すには適任であると思う。
 日本では、本来であれば良識と公正・公平さをもって真実を追求し、その事実を読者や視聴者に伝え、建設的な世論に貢献すベきメディアが、現在行われている参議院選挙など国政選挙や地方自治の要である東京都の都知事選挙も商業べースでしか考えていない様子であり、AKB48の「総選挙」並みの商業べースでしかこの深刻な問題を取り上げていないように見える。
 例えば、日本の主権が危機にさらされており、今月9日にも中国のスパイの軍艦が日本の領海を侵した問題の重要性に関しては、政治家 になろうとする人々でさえも、このような自国が置かれている危機的状況の認識が希薄であり、目下の参議院選挙で選挙運動に走っている候補者の60%はこの重要な問題を後回しにして経済再建を選挙の争点にしようとしている。国の経済発展は国内外が安定して平和でなければ成し遂げられないものであることを忘れているのではないか。
 NHKの「日曜討論」などを見ていると、共産党、民進党、社民党、生活の党と山本郎となかまたちなどは、国家の安定や安全保障を無視して経済成長を要求し、矛先を安倍首相のみに向けているようだが、それは魔法法使いでもない限り、世界の常識としては期待できないものである。
 今回の中国の度重なる挑発的領海侵犯に対し、日本の外務次官の齋木昭隆氏が夜中の2時に中国の大使を呼び付けて抗議をしたのは、今までの日本から見れば主権国家としての存在を中国だけでなく他の国々にも十分に示すことができたものであり、評価に値する。だが、現段階では海上保安庁中心の巡視船によるパ卜ロールに対し、中国は日本の自衛隊が即行動できないことを読んで隙を見て挑発するに違いない。国会議員になろうという方々は、自国民の生命と財産、国土を守る賁任があることを自覚していなければ国政に出馬する資格などあるのだろう
か。
 最後に今回の都知事選に女性をという動きもある。勿論、女性にも有能な人たちが沢山いることは間違いないし、女性が知事や首相になることも大賛成だが、風潮として女性であることを基準にするのはいかがなものか。いずれにしても私たち選挙民は、人気投票をするのではなく、東京都やこの国の未来を託すに相応しい人物を選ぶことが国民として、都民としての義務であろう。

※『世界日報』(2016年6月27日号)に掲載

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民間外交推進協会「第190回国際問題懇談会」での講演録

【講演要旨】

   戦後70年間に世界で100以上の戦争が起きており、難民問題が発生した。自分は7歳の時チベットからインドへ亡命した。アジアの戦後の難民1号だ。現在、台湾、北朝鮮を含めアジアは27カ国あるが、1947年のインド独立時には欧米の植民地で、中国は内戦状態だった。主権を回復した日本に続き、多くの国が独立した。共産主義が南下しベトナムは南北に分かれた。アジア各国の赤化を防ぐために67年にASEANが誕生した。インド亜大陸ではSAARC(南アジア地域協力連合)が85年に創設された。日本はいずれもオブザーバーだ。ASEAN各国の法律、行政は旧宗主国の制度であったが、SAARCの諸制度は英国型で一様であり、ASEANよりも域内交流が盛んだ。
 冷戦終了後、中国、ロシアと旧ソ連の中央アジア4カ国で上海協力機構が設立されたが、日本は排除され、発言権ある仲間となっていない。日本は冷戦後も米国陣営とみられている。日本はAPEC(アジア太平洋経済協力会議)のの重要な一員であるが、APECはASEAN統合を邪魔する存在に見えるし、日本への義務付けも多く、不利益ではないかと思う。
  日中戦争で日本が戦った中華民国は、現在の中国の僅か37%の面積で、チベットは入っていない。中国大陸は5千年の歴史が、漢民族の王朝が続いたわけではない。元はモンゴルが中国を侵略して作った王朝であり、チベット、モンゴル、満州の宗教は仏教だ。清朝はチベットに大使の役割を担う「駐蔵大臣」を設置していた。「中華」概念は、清朝を倒し新しい建国の概念として、米国を学んだ孫文が11年に導入したもの。我々は自分たちを中国人と思っていないが、メディアは「チベット族」を中国のプロパガンダに沿った呼び方をする。中国成立の翌年50年に中国はチベットを軍事制圧し17カ条協定によりチベットの主権を奪い、65年に自治区化した。文革後の中国は、30年間で経済力が飛躍的に発展し、軍の近代化に成功し自信をつけた。政治的、軍事的野望も出てきた。中国の近代化により、レアメタルなどのチベットの地下資源価値も上がった。チベットにはメコン川などアジアの水の源流も多い。中国は240万人の軍隊と300万人の武装警察を背景に、自国だけでなく他国にも脅威を与えている。
  日本は「島国」と言われるが、排他的経済水域を足すと面積440万平方キロの海洋大国である。大国意識を持って、国連改革に積極的に指導的な役割を果たすことが大切だ。アジアの繁栄にはバランスが大切であり、キッシンジャーは、「中国の台頭を非軍事的に牽制できるのは、インドと日本の協力しかない」と発言しており、日印関係の強化がアジアの平和と安定に寄与しよう。天安門事件後、西側の対中認識が変わり、米印関係は92年以降徐々に好転した。
  安倍首相も同様の考えで、日印関係はグローバル・パートナーに発展したが、メディアのインド知識不足と、国民の意識の遅れが残念だ。日本はアジア一員と自覚し、国連改革や常任理事国入りを目指し世界に貢献することが重要だ。中国のシルクロード構想が実現すると、日本の自由貿易に支障が出る懸念がある。民主主義国家として法の支配が定着している日本とインドが協力して、ASEANを核とするアジアの仲間に中国を入れる構想が望まれる。日本はかつてチャンドラ・ボースなどアジアの独立運動家を育てた。これからは、共に戦った者同士、平和的支援をし合っていくことが可能だ。米国のように、アジア各国の指導者候補となる留学生を日本で教育する、人材育成を計画的に実施すべきだ。アジアの人々も期待している。

【主な質疑】

Q 戦後のインドの経済政策はソ連に近かった。インド側の変化で日印両国の利害が一致したのではないか。

講師 戦後、多くの独立国で計画経済が流行した。インドがソ連寄りになったのは、米国がパキスタンを支持したため。インディラ・ガンディー元首相も含めインドは親日的だ。

Q 日本はインドに親近感がある。経済関係ではインド向けODAは増加したが、日本企業の投資は多くない。インド留学生も少なく、欧米を向いている。下地はあるので改善余地はあるのではないか。

講師 米国には中国人よりもインド人留学生のほうが多い。お金は持っているが、日本側に英語の障害と、「インド人は貧しい」という意識があった。南アジアの対日感情は悪くなかったが、日本が東南アジアに力を入れていた。

Q 日本の難民対策はもっと踏み込むべきではないか。

講師 欧州は時代により難民の出入りを繰り返してきた移民国家。日本は、インドシナ難民以外に、本格的に受け入れた経験がなく、安易に受け入れるべきでない。日本社会は難民の異文化と宗教を十分尊重し、融和できるのか。偽装難民の流入懸念もある。

  

 ※『FECニュース』(2015年11月1日付)に掲載

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遺憾なユネスコ南京事件登録

調査と公平性の追求を/中国に偏向する国連は疑問

 中国がユネスコの世界記憶遺産として南京大虐殺に関する資料を提出し、それが受理・登録されたことに、多くの日本の皆様が驚き落胆したことだろう。私も例外ではない。
 今回の出来事は、国連という国際的組織が中立性を欠いた問題だらけのものであったと認識している。そもそも、まだ十分に立証されていない話に、事実関係を十分な検証もせず、双方の見解を慎重に聞かず、片方だけの言い分を認めたことは極めて残念である。
 私の記憶が正しければ、当時南京大虐殺なるものの記事を書いた記者は、後に台湾で「あれはイギリス情報機関と国民党に依頼されて書いた」と、懺悔のような談話の記事を日本の英字新聞で読んだ。それに関して当事者である国民党の将軍も、その記者の証言を裏付けるような発言をしていたと日本の専門家から聞いている。先の東京裁判は、勝者側の一方的な裁きであったことが歴史的事実であると、だんだんと世界的にも認める人が多くなっていると思う。当時の国際情勢を背景に、日本が自由に発言できなかった環境も、その後一変している。
 私がここで述べたような見解を持って る学者やジヤーナリストが存在していることを踏まえ、ユネスコは慎重に事前調査を行うべきであった。また、中国側の行動と意図を事前に読み取り、それを阻止できなかった日本の関係者も深く反省すべきではないだろうか。一旦登録された偽造の文章でも、それを撤回させるのは容易ではないと認識しつつ、この問題をきっかけに、日本に対する特定の国のプロパガンダへの対応を一段と強化しなければ、今回の教訓を生かすことはできないだろう。
 日本国内には、ユネスコに対する日本の分担金を停止または保留にすべきだとの意見もある。2014年だけでも日本は37億円を負担したという。新聞などによると、これはユネスコの運営費の10・83%に相当するという。確かに巨大な金額である。故に負担金停止や保留を主張する方々の気持ちは分からないわけではないが、ここで日本が分担金を保留または停止することは、国連に対する日本国としての義務を放棄することにつながる。実際、アメリカなども何度か国連機関の負担金未納また機関そのものからの脱退という手段をとっているが、それは必ずしも効果的であるどころか不評を買っている。
 日本は、国連そのものの運営費も長らく多いときでは25%前後を負担してきたために、国連の安全保障理事会の常任理事国になるべきだと主張する人もいた。だがその後、中国を先頭に新しい経済大国が出現することにより、日本の分担金比率はどんどん少なくなっている。一方、 中国の負担金はどんどん増えている。ここで日本が国連の1加盟国としての義務を放棄し、分担金を未納にしたところで、中国は喜んでその肩代わりをする覚悟と意図をもって今回のような行動に出たと考えられないわけではない。
 今、日本は国連改革を主張し、インド、ドイツ、ブラジルなどと共に安全保障理事会の常任理事国を目指しているとき、国連総会の加盟国に対しても、お金で全てを解決しようとする成金的な悪印象を与えることは、日本国の国益にならないと思う。それより正義と真実の旗印の下、今回の手続きの経緯および結論に至るまでの関係各位の言動などを調査し、真正面からユネスコの精神に基づいて公平・平等の実現を追求し続けることが、大切である。
 9月の中国における抗日戦争勝利70周年式典に出席した潘基文国連事務総長の異例の偏向的な行動をみても、国連そのもののありかたに疑問を感じる。国連憲章も日本国憲法も時代の変化に対応できない状況に陥っており、安倍首相の国連での演説は、まさに国連の慢性的諸問題を包括的あるいは抜本的に見直すための時代に即した提言であったと高く評価したい。ただ有言実行はどの時代においても、その社会にとっても大切であるゆえ、日本はむしろ今後分担金を停止するどころか、積極的に国連を中心とする国際舞台で活躍し、日本の存在感を発揮すべきであると認識している。
 かつて、中国は共産党政権設立後20年あまりにわたって、国連における国民党の議席と安全保障理事会の常任理事国の地位を獲得するためにきめ細かい戦略、戦術を展開してきた。中国の意図に賛同するわけではないが、その手段ときめ細かい戦術からは学ぶことも多い。
 今、世界的にアメリカの総合的なカが衰退しつつあるなか、真の民主主義と自由を守るための日本の役割は極めて大きい。日本は今回のユネスコの極めて軽薄な行動を通して日本の過去、現在、そして未来を世界により正確に認知してもらうための良い機会として、継続的に緩むことなくこの問題に関して、資金、人材、知恵を結集して戦うべきである。日本はあくまでも史実の検証に努め、正々堂々の姿勢を貫くことで諸国の理解と共感を 得られるであろう。

※『世界日報』(2015年10月22日付)に掲載

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書評『日本・インドの戦略包囲網で憤死する中国』


著者:石平/ぺマ・ギヤルポ(対談)
発行:徳間書店
定価:本体1,200 円 +税 ISBN 978-4-19-864172-6

インドと中国に詳しいぺマ・ギヤルポ氏と中国専門家の石平氏の二人による対談です。本のタイトノ吟帯は刺激的ですが、内容は深い歴史認識と銳い地政学的分析に基づく情勢分析で、極めて直截で示唆に富んでいます。特に日本人が今後中国とインドの両国にどのように接していけばよいのかを考察する上で必須の書です。 それもそのはずで、二人とも若くして母国を離れて日本で学び、長い日本在住の中で中国やインドやアジア地域の政治・経済・軍事・外交を研究してこられた方です。日本人一般の地政学的認識の甘さを指摘しつつ、日本人が常識として知っておくべき中国共産党政権の闇を暴き、これまた常識として、日本人のインド観を正し、インドを正当に評価することの重要性を教えてくれます。対談はベマ氏が石平氏をインドに案内し、アジアの大国であるインドと中国との比較をするところから始まり、「同じ四川省の生まれと言いつつ、チベットの地からインド回りで日本に来て中国共産党政権から弾圧されている母国チベットの人々のことを憂慮するぺマ氏と、母国・中国のことを心配すればこそ舌鋒鋭い石平氏がここ日本で出会うべくして出会ったと言えます。寛容の精神に基づく世界最大の民主主義国家・インドと人権弾圧・言論統制の覇権主義的独裁国家・中国を鋭く比較分析し、日本のアジア戦略について真剣に語っています。このようなアジアの友人がこの時代にこの日本にいてくれることに感謝します。

※『月刊インド』(日印協会機関紙)掲載

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2016年8月11日 (木)

(268) 尖閣諸島周辺に中国公船 オリンピック開催期間中の中国の挑発

[解説] 尖閣諸島周辺に押し寄せて来ている多数の中国船について。リオ五輪と、自国の主権が侵されていることの深刻さを感じていない日本。※2016年8月8日収録。

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2016年8月 1日 (月)

(267) チベット、聖なる山で起きた炭鉱の採掘に反対する抗議デモ

[解説] 6月にチベット、ンガバの炭鉱で起きた現地住民の抗議デモについて。住民の抗議に応じて採掘を延期した中国政府。※2016年6月24日収録。

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