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2016年8月15日 (月)

遺憾なユネスコ南京事件登録

調査と公平性の追求を/中国に偏向する国連は疑問

 中国がユネスコの世界記憶遺産として南京大虐殺に関する資料を提出し、それが受理・登録されたことに、多くの日本の皆様が驚き落胆したことだろう。私も例外ではない。
 今回の出来事は、国連という国際的組織が中立性を欠いた問題だらけのものであったと認識している。そもそも、まだ十分に立証されていない話に、事実関係を十分な検証もせず、双方の見解を慎重に聞かず、片方だけの言い分を認めたことは極めて残念である。
 私の記憶が正しければ、当時南京大虐殺なるものの記事を書いた記者は、後に台湾で「あれはイギリス情報機関と国民党に依頼されて書いた」と、懺悔のような談話の記事を日本の英字新聞で読んだ。それに関して当事者である国民党の将軍も、その記者の証言を裏付けるような発言をしていたと日本の専門家から聞いている。先の東京裁判は、勝者側の一方的な裁きであったことが歴史的事実であると、だんだんと世界的にも認める人が多くなっていると思う。当時の国際情勢を背景に、日本が自由に発言できなかった環境も、その後一変している。
 私がここで述べたような見解を持って る学者やジヤーナリストが存在していることを踏まえ、ユネスコは慎重に事前調査を行うべきであった。また、中国側の行動と意図を事前に読み取り、それを阻止できなかった日本の関係者も深く反省すべきではないだろうか。一旦登録された偽造の文章でも、それを撤回させるのは容易ではないと認識しつつ、この問題をきっかけに、日本に対する特定の国のプロパガンダへの対応を一段と強化しなければ、今回の教訓を生かすことはできないだろう。
 日本国内には、ユネスコに対する日本の分担金を停止または保留にすべきだとの意見もある。2014年だけでも日本は37億円を負担したという。新聞などによると、これはユネスコの運営費の10・83%に相当するという。確かに巨大な金額である。故に負担金停止や保留を主張する方々の気持ちは分からないわけではないが、ここで日本が分担金を保留または停止することは、国連に対する日本国としての義務を放棄することにつながる。実際、アメリカなども何度か国連機関の負担金未納また機関そのものからの脱退という手段をとっているが、それは必ずしも効果的であるどころか不評を買っている。
 日本は、国連そのものの運営費も長らく多いときでは25%前後を負担してきたために、国連の安全保障理事会の常任理事国になるべきだと主張する人もいた。だがその後、中国を先頭に新しい経済大国が出現することにより、日本の分担金比率はどんどん少なくなっている。一方、 中国の負担金はどんどん増えている。ここで日本が国連の1加盟国としての義務を放棄し、分担金を未納にしたところで、中国は喜んでその肩代わりをする覚悟と意図をもって今回のような行動に出たと考えられないわけではない。
 今、日本は国連改革を主張し、インド、ドイツ、ブラジルなどと共に安全保障理事会の常任理事国を目指しているとき、国連総会の加盟国に対しても、お金で全てを解決しようとする成金的な悪印象を与えることは、日本国の国益にならないと思う。それより正義と真実の旗印の下、今回の手続きの経緯および結論に至るまでの関係各位の言動などを調査し、真正面からユネスコの精神に基づいて公平・平等の実現を追求し続けることが、大切である。
 9月の中国における抗日戦争勝利70周年式典に出席した潘基文国連事務総長の異例の偏向的な行動をみても、国連そのもののありかたに疑問を感じる。国連憲章も日本国憲法も時代の変化に対応できない状況に陥っており、安倍首相の国連での演説は、まさに国連の慢性的諸問題を包括的あるいは抜本的に見直すための時代に即した提言であったと高く評価したい。ただ有言実行はどの時代においても、その社会にとっても大切であるゆえ、日本はむしろ今後分担金を停止するどころか、積極的に国連を中心とする国際舞台で活躍し、日本の存在感を発揮すべきであると認識している。
 かつて、中国は共産党政権設立後20年あまりにわたって、国連における国民党の議席と安全保障理事会の常任理事国の地位を獲得するためにきめ細かい戦略、戦術を展開してきた。中国の意図に賛同するわけではないが、その手段ときめ細かい戦術からは学ぶことも多い。
 今、世界的にアメリカの総合的なカが衰退しつつあるなか、真の民主主義と自由を守るための日本の役割は極めて大きい。日本は今回のユネスコの極めて軽薄な行動を通して日本の過去、現在、そして未来を世界により正確に認知してもらうための良い機会として、継続的に緩むことなくこの問題に関して、資金、人材、知恵を結集して戦うべきである。日本はあくまでも史実の検証に努め、正々堂々の姿勢を貫くことで諸国の理解と共感を 得られるであろう。

※『世界日報』(2015年10月22日付)に掲載

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