« アパホテル書籍問題 | トップページ | 明快だったトランプ演説 »

2017年2月12日 (日)

法の精神護った韓国裁判官

朴裕河教授への判決が良識

 韓国の裁判官が法の精神を護良識と司法の独立性を示した。新聞報道によると「韓国の朴裕河・世宗大学教授(59)が著書『帝国の慰安婦』で『自発的な売春』といった描写により元慰安婦の名誉を傷つけたとして名誉毀損罪に問われた裁判で、ソウル東部地裁は25日無罪を言い渡した」とあった。私は昨年10月に韓国を訪問した時、朴教授の学問的な著作が不当なバッシングを受けているのを見聞した。中には朴教授を「売国奴」扱いするような表現も飛び交っていた。
 今回の訴訟は検察側が「『(慰安婦が)日本軍と同志的な関係にあった』という部分など35カ所の表現で名誉を傷つけたと主張し、 懲役3年を求刑」していた。
 これに対して裁判官は「『同志的な関係と記述した部分など、30カ所は意見の表明で事実を明示したと見ることはできない」と判断。さらに「『すべての慰安婦が自発的に慰安婦になった』と断定したと見ることは難しい」とし、告訴人の名誉が毀損されたとは言い切れないと極めて數智に富んだ公正な判断を下した。
 私は以前、朴教授の本の内容に触れた際、一人の学者が真実を追求し、事実で検証しよろとする客観的な学問研究成果であって、特定の立場や先入観に基づく著作ではないと思った。その上で韓国での彼女に対するバッシングは言論、学問の自由への抑圧であるように思った。
 この度の裁判官の『学問の自由は憲法で保障された基本権で、名誉毀損の故意性については厳格に判断しなければならない」という見解は、韓国憲法の番人として、東京裁判の時のインドのパール判事同様、周囲の環境に屈することなく、公平、公正に良心と法の精神に忠実であり、特定の国や団体を贔屓したものではない。
 私は1970年代の後半から80年代にかけて、ダライー・ラマ法王の代表という立場で頻繁に韓国を訪問した。その時の韓国の高官、教授、高僧たちは、私が日本で勉強し日本語ができるといろだけで大事にしてくださった。ホテルの職員、タクシーの乗務員、店の店員皆が親しみを込めて日本語で接してくれた。責任ある立場の方々は、皆さん日本に友人をお持ちで、私は日本と韓国は隣国として非常に友好的な関係にあるという印象を受けた。両国の良好な関係の恩恵を私も十分に受けたものだった。
 しかし、一人の安っぽい人道主義者の元軍人の捏造と、真実を十分に検証もしていない、その場逃れの軽率で無責任な政府高官の談話によって、両国関係が冷え込み悪化してしまった。これは両国両民族にとって非常に残念であるだけではなく、東アジアの繁栄と平和にとって大きな損害である。
 あくまでも私個人の意見であるが、韓国は制度上は民主国家であっても実質は発展途上であるように思っていた。だが、今回の裁判官の法律家としての良心に基づく判決は、韓国の民主国家としての健在ぶりを世界に見せた。韓国の政治家たち、運動家たちも素直に歴史を見つめる勇気と敷智を持って裁判官の判決を受け止めることを期待する。
 アメリカのトランプ政権 はアジア、特に同盟国を今後も継続的に重視するだろうが、アメリカの総体的な力が低下している厳しい現状の中、日韓の協力関係は両国のみならず東アジアの安全保障と発展に寄与する。

※『世界日報』(2017年1月31日付)に掲載

|

« アパホテル書籍問題 | トップページ | 明快だったトランプ演説 »

国際」カテゴリの記事