《証言》 中国は世界一の侵略国家だ

2008年3月 7日 (金)

9. 中国は噴火寸前

石平 そんな国の東アジア共同体とやらに日本の政治家はすぐ騙される。

ペマ あの騙されている人たちは、市場としての中国を見ているのでしょうが、魚を釣るにはエサがいりますからね。市場はエサです。

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 そもそも昔、日本が言っていた大東亜共栄圏と東アジア共同体とどこが違うのか。

石平 おかしいのは、その同じような東アジア共同体を唱えている中国が、大東亜共栄圏を唱えた日本は悪だとぐちぐちと言っていることですね。
 ところで、チベットの今後はどうなるのでしょうか。

ペマ チベットのアキレス腱はダライ・ラマ法王の寿命です。ですから中国共産党が崩壊するのとどちらが早いかという時間との闘いです。
 今年、法王は七十三歳になられますが、大変お元気です。しかし、法王がおられなくなったら、チベットをまとめ上げ、世界に向けてインパクトを与えることができる人がいなくなります。
 私が中国政府によく言うのは、「ダライ・ラマ法王は問題ではなくて、問題を解く鍵だ」ということです。もし例えば、法王に何かあれば、チベットはインド派ができたり、アメリカ派ができたりとバラバラになります。中国もそれは恐れています。
 それから中国が抱える内部矛盾の問題があります。今までの中国の歴史を見ると、すべて中国は外からではなく、内から腐敗しています。農民問題を中心とする格差問題、軍閥の問題、地方閥の問題があります。チベットやウイグルを押さえるために中国は莫大なカネをかけています。
 チベットに置いている軍隊は公式では二十七万人ですが、実際には正規の軍隊以外も入れると五十万人はいます。それを維持しなければならない。
 これだけのカネをかけていることについて、今、豊かになっている本来の中国にいる人々が、果たして我慢できるでしょうか。なぜ我々の税金でそんなところにカネをかけるのか、という不満が必ず噴き出すでしょう。

石平 では中央政府がこのまま弱体化すると、チベットに軍隊を置いておくこともできないということですね。

ペマ 私は北京政府にはもう選択の余地はないと思っています。まず、除々に民主化していくということです。その場合、いきなり民主化すると大混乱に陥るので、民主社会主義的な要素を取り入れて、除々に民主化する。
 それから、一億人以上の人口がいる国で連邦制を採っていないのは日本と中国くらいです。ですから、連邦制のようなものを実現していくということです。
 これらを行わずに今の体制のままで突き進むと、転覆するしかないと思います。その転覆はチベット人などが起こすのではなく、中国人自身が起こすことになる。それは農民かもしれないし、特定の宗教団体かもしれませんが、チベット人などは後に加勢するくらいの役割でLよう。いつでも火を点ければ爆発する噴火寸前の火山帯のようなものです。

石平 中国経済はもう頭打ちの状態になりつつあります。そして現在、経済成長している最中でも、大量の失業者が出ている。いったん中国の経済が停滞すれば、もっと大量の失業者が出て暴動が起こるでしょう。  
 その時、ペマ先生が言われたようなソフトランディングの方法が一つはあります。しかし、その一触即発の時こそ、まさに大帝国的、ファシズム的になり、周辺諸国になりふり構わず侵略する。それを日本は地政学的に避けることができません。

ペマ 一九七〇年代に中国が外国に留学生を最初に送った時、鄧小平は中国にはたくさんの人口がいるから、千人のうち一人帰ってくればいいと言いました。実際には四〇パーセントの人が帰ってきています。この四〇パーセントの、外の自由な民主主義の空気を吸って帰ってきた人たちが、今、日本で言えば部長クラスになっています。
 中国に何かが起こってこの人たちが中央政府から命令をされた場合、彼らは今までの中国人のようには動かないと思います。また、彼らとネットワークしている海外にいる中国人がいる。日本にもアメリカにも七万人程度いますが、彼らが内部の人たちを養っているので影響力は大きい。
 法輪功を取り締まれという中央政府からの命令に対しても、彼らは一度では動きませんでした。二度、三度とお達しがあってもなかなか取り締まらないわけです。
 中国は一党独裁であっても、このような乱れが出ています。つまり統制しきれていない。これがますます、今後、乱れていく可能性が高い。そうなった時にオリンピック、あるいは万博を一つの境にして、変わると思います。
 いい方向に変わるか、悪い方向に変わるかは、周りの国々も含めて、それぞれがどういうふうに中国に関わるかによって違ってくる。

石平 ペマ先生の言われるように、いい方向に変わる可能性もあります。では誰が中国をいい方向に変わらせるのかと言えば、アメリカと日本です。特に日本の役割は大きい。
 日本は常に「中国が中華帝国的な侵略行為に出るのであればこれを断固、阻止する」という明確なメッセージを出さなければなりません。すでに尖閣諸島の問題で中国の第一歩は出ています。ここで既成事実を作られれば、最後は日本省になってしまうのです。

ペマ 周辺諸国のためにも、日本の役割は大きいと思います。ですから私たちが中国に騙された歴史を教訓にして欲しいですね。

(了)

□ Will-2008年3月号より転載 □

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2008年3月 6日 (木)

8. 台湾の次は沖縄だ

石平 問題は日本人は中国のこのような実態を知らないし、知っていても自分たちの身には及ばないと思っていることです。
 領土の話で言えば、台湾が自治区になれば、次は沖縄。沖縄が自治区になれば、次は本土です。

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 中国の実体経済はすでにかなり衰弱していて、今、経済を支えているのは外国の投資です。海外輸出も頭打ちの状況ですから、オリンピック後にいつ破綻するかわからない。すると中国はどうするか。
 内部の破綻を、外部を侵略することによって取り戻すしかありません。

ペマ ただ中国は、チベットやモンゴルやウイグルについて、精神的にはまだ中国だと思っていないという現実もあります。例えば中国共産党の幹部学校の卒業式では、そこで初めて赴任先を告げられる。チベットに行けと言われた卒業生は夜の飲み会になると、みんな泣くのです(笑)。たいていはコネがなくて、貧乏くじを引くことになった人たちです。
 ですから対外的には五十五の民族がいると言っているけれども、実際には植民地か属国くらいにしか思っていません。
 しかし最近では政治犯以外の軽犯罪者は、チベットなどの自治区に志願すれば、刑を免除されます。するとガラの悪い元犯罪者が国からの融資をもらって、自治区に定着していく。かつてのオーストラリアのようなものです。そうして現地の住民よりも中国人の人口を多くするという政策です。内モンゴルは完全に中国人のほうが多くなりましたし、チベットも場所によっては申国人のほうが多くなってしまいました。

石平 そういう意味でもあの青蔵鉄道は、チベット滅亡への序曲ですよ。

ペマ まさに、先ほどから出ている近くの者から麻薬を打つ手法です。チベット省、ネパール自治区への第一歩でしょう。ですから私は常々日本政府に、ネパールの王室を支援するようお願いしてきました。国王も皇太子もよい人物ではありませんでしたが、王室があることで何かが起こった時に民族の求心力が高まるからです。
 日本はこういう問題に疎く、東アジア共同体などと言っていますが、マレーシア、インドネシア、タイ、カンボジア、ラオスにどれだけの華人、華僑がいるかということです。そして誰が経済を握っているか。これは目に見えないもう一つの中華思想のテリトリーです。

石平 なりふり構わぬ戦術ですね。

ペマ インドは少し違って多様性の中の統一性というものを目指しています。しかし中国は統一、同化ということが第一義です。
 細かい政策で言えば、チベットに対して次のようなことを行いました。チベットの伝統的な服は、布団に帯をしたようなもので、帯をとると、そのまま布団にして眠れるようになっていました。そこで中国は長い間、その伝統衣装を作るために必要な長い生地を売らないようにした。着物を短くせざるを得ないようにしたのです。そうすることによって、少しずつ中国の着物に似てくるからです。中国はそういうふうにして、文化や宗教の本来の意味や価値をわからないようにしていきます。
 私はいつも思うのですが、日本軍が中国に対して残虐行為を働いたなどと中国は言いますが、日本人に中国人の言うような残虐行為を行う発想はありませんね。あれは自分たちがやったことではないでしょうか。腹を割き、胎児を引きずり出したりする習慣は日本にはありませんよね。

石平 全くその通りです。恥ずかしながらあれは我が漢民族の習慣です。そして、日本軍が残虐行為を行ったということにして、自分たちの罪を消そうとしたわけです。

ペマ 実際、チベット人に対して中国人は残虐行為を働いてきました。例えば女性を拷問にかける時に、下から唐辛子の煙を立てて、女性の陰部に棒を突き立てたりしています。そして竹の先を割ったもので乳房を引き裂くようなことをする。

石平 文化大革命の時ですか?

ペマ その前からです。文化大革命の実験という位置づけでしょう。今はすべて文化大革命が悪かった、自分たちも同じように大変だったということにしてしまおうというスタンスですが、その前があった。

石平 文化大革命の時は肉体的に支配しようとしましたが、今は精神的、文化的に支配しようとしているのではないですか?

ペマ もちろんそうです。今はある程度の経済的、宗教的自由を与えて、支配しようとしています。しかし、宗教的自由というのは本当はありません。なぜなら布教活動ができない。

石平 それはもう宗教ではないですね。

ペマ 布教活動はできないけれど、儀式はできる。そうするとますます宗教の意味がなくなってくるのです。

石平 中国の五十五の民族の大半は、今、自分たちの文化を持っていない。

ペマ 五十五の民族というのは実態がなくて、カモフラージュなんですよ。例えば中国には共産党以外に七つの政党が存在すると言いますが、あれは皆、共産党からカネをもらっています。それと同じように、チベットやモンゴルやウイグルを小さく見せるために、五十五の民族を作っているわけですね。

石平 おかしいことに、それらをさらに中華民族というものの中に入れますね。もともとどこにも存在しない中華民族というサラダボールの中に、漢族、チベット族、モンゴル族と入れた。さらに、これから武力行使でどこかの国を獲れば、それはまた中華民族というサラダボールに入れられます。

ペマ さっきから石さんが、「チベット族」と言うでしょ? それも長い問の同化政策で刷りこまれたもので、私たちからすれば「チベット人」です。

石平 そうだ。チベット人ですね。確かに日本族とは言わないですからね。

ペマ 一度、中国の人民画報に「残留孤児」を「大和族」と書かれたことがありました。私はすぐに、「日本の皆さん、おめでとうございます。これでやっと私たちと同等になりましたね」と書きました。もちろん皮肉です。すると撤回しましたね(笑)。

(続く)

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2008年3月 5日 (水)

7. 松下幸之助も取り込まれた

石平 このような歴史が何を意味するかと言うと、チベットが自治区でなくなる日には、ネパールやパキスタンが自治区になるということです。

ペマ そうなります。その前触れとして、マオイスト(ネパール共産党毛沢東主義派)があります。当初から中国は「マオイストとは無関係」「毛沢東の名を汚す」と言っています。しかし、私は昨年ネパールに行って取材してきましたが、マオイストの人たちは時代錯誤もいいところですが、文化大革命当時の毛沢東のバッジをつけているのです。

石平 なつかしいですね。

ペマ マオイストのような人たちを活動させるような環境を中国は作ります。
 例えば、昔、松下幸之助さんの著書で「中国共産党のような国は絶対に認めない」という文章を読んだことがあります。また、笹川良一さんもはっきりと「自分は蒋介石に恩を感じているから共産主義などとんでもない」と言っておられました。しかしその二人とも、中国がうまく取り込みましたね。
 どういうふうに取り込むかというと、松下さんや笹川さんのような方にお金を渡しても仕方がないので、名誉を与えるのです。松下幸之助さんの場合で言えば、鄧小平は松下さんが書いた本をたくさん取り寄せて読み、松下さんが訪中した際に「あの本は素晴らしかった」などと言う。すると松下さんは「そうか!」といい気分になるわけです。
 笹川さんの場合は、彼はA級戦犯です。靖国神社にはA級戦犯が祀ってあるということで中国は首相参拝に内政干渉しているはずです。しかし、笹川さんから援助を受けているとは何も言わない。そういうところはきちんと使い分ける。戦術的なことが中国はとても上手い。
 今、中国は十三億の市場と労働賃金が安いということをエサに日本からの投資を引き出しています。しかし、きちんと調べるとよくわかると思いますが、たくさんの日本人が中国の刑務所に入っています。どういう人たちが刑務所に入っているかというと、皆、成功した人たちです。
 成功すると税金を払わなければなりません。その税金の支払いでもめたりすると、別件逮捕する。その人の名誉にかかわるような罪、例えば女性絡みなどで逮捕します。すると家族も表だって騒げません。しかし、これについて日本人は全く知らない。もっと知るべきです。
 私は中国の学生に、「中国は経済発展していると言うが、これは清朝末期と同じ状況なのではないか」と言っています。中国の経済は、日本やユダヤなどの経済植民地になっているのではないか。その状況の中で得をするのは、幹部の子どもだけです。
 一般の中国人の唯一の利益は、外国の工場ができればそこで働けるということです。しかし、そこで働けば働くほど、毛沢東以来やってきた農業の自立は失われます。
 ですから私は、今の中国は遅かれ早かれ、大きな変化が必ず来ると思っています。アメリカやヨーロッパはその変化を誘導しようとしています。
 アメリカやヨーロッパはかつて東ヨーロッパに行ったことと同じことをしています。一方では外交関係において少しずつ圧力をかける。他方においては、莫大なカネをかけて民主化を支援しています。日本はそれに乗り遅れています。日本はそこを注意しなければならない。

(続く)

□ Will-2008年3月号より転載 □

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2008年3月 4日 (火)

6. 狡猾な”麻薬”戦術

石平 でもチベットのようにやられてしまったら、免疫が出来ても遅いですよ。

ペマ そうですね。中国に対していちばん免疫を持っているのはベトナムですね。

石平 そう、ベトナムは中華帝国に反抗することでアイデンティティーを保ってきた国です。

ペマ インドも少しは免疫が出来てきたし、韓国も北朝鮮も出来ましたね。最近の世論調査では、中国人のいちばん嫌いな国の一位は韓国です。なぜかと言えば、韓国や北朝鮮は長い歴史の中で絶えず自分たちの独立を維持するために、中国と戦ってきた歴史があるからです。
 先日、盧武鉱大統領が北朝鮮を訪れた時に金正日が、「朝鮮戦争を終わりにしたい。そして中国を抜きにしてアメリカと直接交渉したい」と言いましたね。「なるべく中国に借りを作りたくない」という、長年、中国と接してきて彼らが得た教訓です。
 残念ながら日本はまだ中国に痛い目に遭わされていないから、わからないのだと思いますね。でも本当は
すでにもう日本のあらゆる部分が麻薬を打たれたような状態ではあります。

石平 今、麻薬の話が出ましたが、昔、漢民族は黄河流域にいましたが、どんどんとその領土を広げています。その方法が麻薬を打っていくというものです。まず、いちばん近い者を懐柔する。つまり麻薬を打つ。例えばチベットに対しては、先ほど出たように給料を払うとか鉄道を作るということが麻薬です。

ペマ もっと遡れば、七世紀から九世紀のチベットはとても人口が多く、強い国でした。その時、明朝はチベットに軍隊を送るよりも僧のスポンサーになることを考えた。そしてチベットの僧に大師という称号を与えたため、チベット人は喜んで人ロの二五パーセントが僧になりました。すると、その二五パーセントの男性は結婚しません。そのうえ、どんどん平和主義になりました。
 それまでチベットは騎馬民族ですから、戦車もない時代には非常に強い国だったわけです。しかし僧が増えて平和主義になり、軍事力は衰退した。これが中国の麻薬、智恵です。

石平 そういうのはうまいんですよ、我が漢民族は(笑)。そうしていちばん近い者に麻薬を打って懐柔します。そして遠い国を外臣国と認定します。形だけ中華帝国に服従していればよくて、その代わりに莫大な援助を行います。
 今、中国には自治区がたくさんありますが、あれは自治がなくなってから自治区となります。

ペマ そうですね(笑)。

石平 貴州省や雲南省などは昔、いろんな民族が住んでいた場所です。それを外臣国、次は自治区として形だけ朝貢していればよいとします。しかしだんだんに軍を派遣し、既成事実を作って占領し、自治区ではなく省とする。
 ですから順番としては漢民族に近い貴州を獲り、貴州を獲ったら雲南を獲り、雲南を獲ったらチベットを獲る。こうして広がっていくわけです。今、チベットは自治区ですが、あと十年経ったら自治区ではなく、省になってしまう。

ペマ 今の青海省はほとんどがチベットの領土でしたし、雲南省にもチベットの自治県が三つほどありました。
 そもそも、中国は我々を少数民族だと言いますが、彼ら億単位の人口に比較すると少数であるだけで、世界の人口で考えると、六百万人といえば世界中の国々の半分より上の人口を持つ国です。しかし中国は既成事実を作ってどんどんと中国だと認めさせるのです。
 私が頭にきているのは、アメリカは日本を同盟国だとしていますが、最近のペンタゴンの文献には尖閣諸島を日本名で書いた後にスラッシュ(/)を引いて、中国名を書いています。中国はこういうところから少しずつ既成事実を作り、後に「前からこう書かれているではないか」と言い張ります。
 このような中国人のやり口に負けた原因の一つは、私たちチベット人にあるということを反省しています。あまりにも仏教を信仰しすぎました。僧を大事にしましたが、その僧こそが中国から肩書きをもらい、寄進してもらい、どれだけ立派な寺を建てたかを競うようになってしまった。

(続く)

□ Will-2008年3月号より転載 □

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2008年3月 3日 (月)

5. 台湾の次は日本を獲る

石平 これは日中関係にも重要なことだと思います。
 一九五〇年代、中国にとって、いちばんの友好国はインドでした。その友好関係を使って、戦略的にチベットを獲る。インドの協力がなければチベットを獲ることはできないからです。しかし一九五九年になって、完全にダライ・ラマを追い出すことに成功し、チベットに対する支配を完全にしてからは、インドを獲りにいくわけです。

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ペマ そうですね。

石平 日中関係もまさに同じ構図ですよ。例えば今は、日本に対して微笑外交をしている。それはまさにこれから台湾をチベットのように支配下に入れるためには、日本の協力、あるいは妥協がなければならないからです。日本を懐柔して台湾を獲った後は、日本を獲りに来るということを歴史が教えています。

ペマ しかし日本はそこまで見ていませんね。今回の福田首相の訪中でかろうじて評価できるのは、温家宝首相が福田首相の言葉を平気で「台湾の独立を支持しない」というふうに意図的に変えて発表した時、福田首相は即座にうまく改めました。
 中国はこうやって既成事実を作っていく国です。あの時、福田首相が黙っていれば、「日本は台湾の独立に反対した」と言われるようになる。そうやって我々チベット人もインドも、既成事実を作られ、騙されてきました。
 日本にとって中国は隣国ですからつきあわざるを得ませんが、それはあくまでも対等、平等の原則をもってのつきあいであるべきです。
 今の日本の外交はチベットの諺で言うと、「灯明に蛾が飛びつく」だと言えます。つまり、目先の利益に飛びついて結局、死んでしまうということです。日本人は中国のマーケットの魅力しか見ていない。しかし、中国は一晩で全てのカネを没収する可能性もある体制なのです。
 もう一つ、小泉元首相は靖国神社参拝を前倒しして八月十三日に行いましたが、あの参拝を十五日に行っていれば問題はすべて解決していたと思います。それを前倒ししたため、これならまだ「行くな」と言うことができると中国は思った。
 我々の経験から言うと、中国はある程度、力を崇拝します。そしていつも脈を見ていて、ここまで行ける、もっと行けると考える。

石平 そうしながら相手に幻想を抱かせますよね。譲歩したらいいことがある、もっと譲歩したらもっといいことがあると。

ペマ そう。それから相手の中に入って自分の味方を作ります。我々が中国に交渉に行く時、勉強するために二週間ほど早く現地入りします。その時、中国は案内をしながら、誰を懐柔すればよいかというのを見極めている。毎晩、我々が何を話したかを全て書き留めて、それを分析し、その分析を元に分断工作をします。

石平 おそらく訪中した日本の国会議員は全員やられていますね。

ペマ そうです。そして、競争心を煽るために差をつけます。

石平 まさに先日、日本がやられましたね。まず、小沢一郎民主党代表を北京に呼び、感動させた。感動した小沢民主党代表は中国に対する「朝貢外交」を恥ずかしげもなくやってみせた。すると、後から訪中した福田首相は、小沢代表以上の友好姿勢を示そうということになり、キャッチボールして見せたりする(笑)。こうして中国は懐柔していく。
 その中国の鍛え上げられた罠に、与党と野党のトップがまんまと引っかかるというのが今の日本です。一人も見識ある議員がいないのか。

ペマ まだ日本は免疫ができていないですからね。

(続く)

□ Will-2008年3月号より転載 □

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2008年3月 2日 (日)

4. 解放軍「侵略」の歴史

石平 ここで確認しておきたいのですが、中国の断続した歴史の中で、チベットは中国の行政下に入ったことは一度もないのですか?

ペマ 一度もありませんね。それを示すのによい例があります。チベットでは昔、中国からの大使のような役職のことを「アンバン」と呼んでいました。漢字では「駐蔵大臣」と書きます。中国の文献を通して研究する日本の学者は、これを勘違いして、駐蔵大臣を「駐チベット総督」のように訳し、中国もそのような権限があったと説明しているのですが、それは全く違います。
 ダライ・ラマ法王への謁見も何日も前から申し込まなければならなかったし、英国の代表と中国の代表のどちらを上に座らせるかということで抗議を受けた記録文献もあります、そういう意味で駐蔵大臣は単なる大使、代表にすぎなかった。

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石平 直接の行政支配はなかったということですね。

ペマ 一九五〇年までは、チベット人は中国に対して税金を払ったことはありません。しかし、五〇年に中華人民解放軍がチベットを軍事制圧します。そして五一年に、中国とチベット政府は「中央人民政府と西蔵地方政府の西蔵平和解放に関する協議」(十七カ条協定)を締結し、チベット全域が中国の実効支配下に組み入れられ、その後、ダライ・ラマ法王は北京で憲法を作る時に全人代に出席しています。
 それ以後、中国はチベット人から直接、税金を取っていませんが、逆に役人に給料を支払っています。この給料をもらったことはまずかったと私は思っています。

石平 つまり、チベットが中国の実効支配下に入ったのは、人民解放軍が入ってきたからだということですね。軍隊を派遣して他国に入り、自分たちの国の一部だとする。それは明らかに侵略です。

ペマ その通りですよ。いわゆる十七カ条協定も国際法に照らし合わせると非合法的な条約です。なぜならば、チベットの全権大使は印鑑を持っておらず、中国が用意した印鑑を押したんですね。
 残念なのは一九五六年にダライ・ラマ法王がインドに行った時、あの条約は押しつけられたものだと言えば国際的に反論するチャンスでしたが、それを言わなかった。ダライ・ラマ法王には、中国となんとかなるだろうという期待感があったのでしょう。

石平 今の日本と同じですね。

ペマ そうです。その期待感で、条約を批准していないと訴えるチャンスを逃してしまいました。チベット問題は一九一一年から国連に提訴していますが、この間、国連は三度の決議をしています。中国軍の即時撤退、チベット人の人権の回復、平和的な解決の三つです。しかし何も進まない。
 インドの初代首相であったジャワハルラール・ネルーと周恩来は「平和五原則」を掲げてアジアの発展を目指していたため、国連でチベット問題を取り上げると欧米が介入してくることを恐れたということもあります。インドが仲介すると言っていたわけです。
 しかし一九六二年に中国軍がいきなりインドに入ってきて、ネルー首相は命を縮めることになりました。それからインドと中国は二度にわたって交戦することになります。

(続く)

□ Will-2008年3月号より転載 □

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2008年3月 1日 (土)

3. 私もペマ先生も騙された

ペマ 中国は力がない時は、耳障りのいいことを言うのが常ですね。一九七七年に鄧小平が三度目の復活をしました。その時は中国経済をなんとかして立て直さなければならない状況でしたから我々とも一時、停戦しなければならなかった。ですから私は一九八○年に三カ月間、チベットの代表として北京政府の招待で中国とチベットに行きました。

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 当時、胡耀邦がやっと総書記になったところでしたが、彼は「独立という言葉以外はなんでも話し合いましょう」と言いました。さすがに公式の場では言いませんでしたが、食事の場などで、「我々は連邦制を研究している。新しい憲法を作るので案を出してくれ」と言っていました。私はそれを信じて連邦制の素案まで作りました。その素案の情報を産経新聞が聞きつけて、「中華連邦構想」として当時の産経に大きく掲載されました。ですが、私は産経新聞に文句を言ったのです。「中華」では困る、「中華・中央アジァ連邦構想」としてもらわないと、と。
 ところが、一九八二年になって実際に憲法を改正する時には、中国から呼ばれもしなければ何の連絡もありません(笑)。つまり、中国は時間稼ぎの時の作戦として、譲歩するかのように見せたりしますが、絶対にその通りにはならない。

石平 尖閣諸島についても、日本の援助が必要な時には棚上げしておいて、日本の援助が必要でなくなると自分たちの領土だと言い始める。そして軍艦も出す。
 私は中国共産党に小学生の時から騙されてきましたし、ペマ先生も先ほどのお話のように騙された。日本も同様に騙されているわけです。

ペマ それは中国共産党だけではなく国民党も同じで、中華の思想なのです。孫文が中国にとって偉大な人だったことは認めますが、周囲にとってあれほど迷惑だった人はいません。
 中国の歴代皇帝とダライ・ラマとの関係は、お寺と檀家の関係と同じだと言えます。ですから中国のほうから毎年、チベットに絹などの贈り物をおくってきていた。元朝以来、歴代の中国皇帝は、ダライ・ラマに貢いだわけです。中国皇帝はそうして、ダライ・ラマから権威を与えてもらった。そういう意味で、お互いに補い合ってきました。
 元も清もいわば満州、モンゴル、チベットの連合政府です。元朝というのはどう考えても中国ではありません。モンゴルが中国を植民地にしたというのが真実です。清朝も同様です。
 中国にはメンツがありますから、孫文はこのように多数である中国人が少数民族によって押さえられてきた歴史を、中華という概念で変えようとした。つまり、ずっと中国という国が続いてきたかのような歴史を描こうとしました。孫文に必要だったのは、自分たちの民族の誇りを取り戻すことだったからです。
 日本人は中国五千年の歴史などと言いますが、中国の歴史は途切れています。中国大陸の歴史は五千年でしょうが、王朝は次々と変わり、途切れている。日本と同じように一つの国の歴史として語ることはできません。

(続く)

□ Will-2008年3月号より転載 □

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2008年2月29日 (金)

2. 「中華」を発明、歴史改竄

ペマ 先ほど石さんが「私は漢民族ですが」と言われましたが、その漢民族という意識を作ったのは孫文ですよ。

石平 漢民族という言葉を使い始めたのは、確かに日本の明治維新の頃で、孫文が言い始めたと言われています。

ペマ 孫文は国民国家を作ろうとしたのです。それまでは民族国家でした。孫文は「アメリカ合衆国」のような「中華合衆国」を作ろうとした。その時に彼が発明したのが「中華」という言葉でした。彼は自分たちだけが中国人ではなくて、みんなが中国人だと言うために、自分たちは中国人の中の「漢民族」だという考え方を作り出したわけです。
 その一環として、私たちチベット人をチベット「族」にして、五族共和と言い始めた。ですから、中国人も騙されているわけです。

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 中国のいちばん悪い点は、歴史を作文、つまり改竄することです。それは外国だけではなく、自国民を騙すことになっている。

石平 中国の政権は昔から、騙すことで成り立っていると言えます。本当のことが明らかになると一日たりとも政権がもたない。
 ペマ先生が言われたように近現代は脱植民地支配の時代です。しかし中国は時代に逆行し、ますます植民地支配を拡大しています。その中華的植民地支配主義を始めたのは誰かと言えば、孫文です。
 孫文は「中華民族をもって少数民族を同化させる」と堂々と主張しています。「我が党は今後も民族主義において努力する必要がある。満族、モンゴル、チベットを我々漢族に同化させて、一つの大民族国家を形成する」と言っているのです。

ペマ 中国の国旗は大きな星と小さな四つの星が描かれていることからもわかるように、いまだに漢民族とそれ以外の少数民族は平等ではありません。
 毛沢東も一九二五年までは、ソ連の連邦制と同じように、いわゆる少数民族の人たちは自分たちの意志によって、中華民国に入ってもいいし、分離独立してもいいという考え方をしていました。二五年の共産党大会まではそう言っていたのです。
 しかし自分が政権を取ると、言うことが変わってきた。

石平 ここに中国共産党の公式文書があります。一九二二年、中国共産党の第二次全国人民代表大会記録で、「我々が目指すのは中華連邦である。中華連邦というのは漢民族中心で、チベット、モンゴル、ウイグルの各民族が、中華連邦に加入するか離脱するかは自由である」と主張しているのです。「中国共産党の歴史を勉強したのか」と言ってこの公式文書を胡錦濤国家主席に見せてやりたいと思いますね。

(続く)

□ Will-2008年3月号より転載 □

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2008年2月28日 (木)

1. 中国は唯一の植民地大国

石平 私は漢民族ですが、漢民族は歴史上、近現代まで、チベットに対してひどい行いをしてきました。チべットから見れば、漢民族に侵略され続けた歴史だったと思います。私は謝罪するような立場にはありませんが、今日は改めてこの場を借りてお詫びしたいと思います。

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ペマ・ギャルポ(以下、ペマ) 石さんの気持ちは非常に有り難いのですが、チベット人はそういうふうには見ていません。チベット人は基本的に仏教の考え方で物事を見るので、「罪を憎んで人を憎まず」なのです。
 大きな歴史という枠で見れば、お互いに様々な禍根を残しています。私は兄を二人、祖母を二人、中国共産党に殺されていますが、それは戦争ですから仕方がありません。
 大事なことはいまだに、この二十一世紀においても植民地を持っている国は中国だけであるということです。一九四〇年後半から五〇年代初めは、独立国が世界中で五十数力国しかない状況でした。
 しかし、第二次世界大戦が一つのきっかけになり、今日ではアジア・アフリカ諸国の植民地だった国が独立国となっています。その後の社会主義の崩壊によって、さらに独立国は増加し、国連加盟国は現在、百九十ニカ国にもなる。
 それなのに、中国だけがいまだに、チベット、ウイグル、満州を植民地としているのです。

石平 そうですね。東ヨーロッパの国々もソ連崩壊によって次々と独立しました。

ペマ 中華人民共和国の地図を改めてよく見てみると、広西チワン族自治区や内モンゴル自治区、寧夏回族自治区など、「〜族自治区」というものがありますが、これらは、かつて中国が一度も物理的に支配したことがない地域です。
 もちろん、宗主権的なものはあったと思います。例えば、チベットの中で政府から圧力がかからないように、中国から肩書きをもらってきて自分の力を誇示するということはあった。しかし物理的な支配というものはなかったのです。
 そういう見方をすると、今の中国の領土の六三パーセントがいわゆる少数民族、チベット、モンゴル、ウイグルで占められている。
 石さんだけではなく、今の中国自身がこのことを直視しなければならないと思います。なぜなら、中国がいちばん騙しているのは中国の国民だからです。

石平 そうなんですよ。

(続く)

□ Will-2008年3月号より転載 □

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