中国論

2016年6月25日 (土)

二つの軍事パレードが露呈する中国の矛盾

ラサと天安門広場

   現在中国政府が最も恐れているのは、 中国共産党政府の言う「3つの勢力」で あって、同政府が言う「アメリカ帝国主義の覇権」でもなければ「日本軍国主義の復活」でもない。中国政府の指導者達や公安関係者が国民に常に警戒を呼びか けている3つの勢力とは、①民族分裂 勢力(分離主義者)、②極端な宗教勢力 (極端なと言うのは国際世論を配慮しての策)、③暴力テロ (①、②の勢力と農 民、貧困層などの反発を弾圧するための 口実)の3つである。
 今回中国政府は大々的な「抗日反植民地主義.反帝国主義勝利70年」の式典を主催し、戦ったこともない戦に「共産党 が日本軍と戦って勝った」と国内外に宣伝した。約50か国の首脳に招待状を送ったが、結局参加したのはロシアのプーチ ン大統領、韓国の朴槿恵大統領、他盟友 のパキスタン、スーダンなどの他、上海 機構の"スタン"のつく国々だけで先進 国はほとんど政府代表レベルだけで、首相は参加しなかつた。習近平の目論見は 失敗に終わつたと言えるのではないだろうか。
 最近の中国の反日プロパガンダが激し かったにも関わらず、米国の民間調査機 関が、アジアを中心に調査を行ったところ 、八割の人々は依然として日本に 対して好感を持つていることガが明らかになつた。
    中国は他の国に対しては歴史を遡つて歪曲し、植民地主義、 帝国主義、軍国主義などのレッテルを貼つて非難する一方、自国による侵略行為は「解放」と 主張する。習近平は「歴史の歪 曲は許さない」と言っていたが、 歪曲しているのは中国政府であ る。
  今回の天安門広場での軍事パレ—ドで数多くの新型戦闘機や ミサイルなどの武器を自慢気に 公開し、中国の軍事力の優位生 を強調した。しかし、それらの 新型兵器の実際の機能について知っているのは中国の人民解放軍の関係者だけだ。
  1980年に当時の北京政府 の招待でダライ•ラマ法王のチベット実態調査団員の一員として筆者が北京滞在中、現地での軍事演習を見せてもらったことがある。人民解放軍の広報官に感想 を聞かれて、「映画の撮影場のオモチャ みたいです」と答えたら、自国の力を見 せつけたかった彼は顔色を変えて怒りを表した。中国政府としては私達に共産党指揮下の人民解放軍の圧倒的な力を見せることで、チベットが抵抗すれば木っ端 微塵に制裁すると間接的に示したかった のであろぅ。弾道ミサイルの射程距離が アメリカの内陸にまで至っていると言え ば、世界が怯えるとでも思っているのだ ろうか。
  中国政府は先月、「チベット問題に関 する工作会議」を開くと同時にチベットに関する白書を出した。白書には、中国 政府の下でいかにチベットが発展し人々が幸せになったかを強調するために捏造 されたデータが羅列されていた。かつて は「チベットは有史以来中国の一部であ る」と言い張っていたが、最近はさすがに少し控え目に「古代以来」と曖昧な表 現に変えている。
 しかし、北京政府の矛盾は明らかで、今年の9月8日、その古代以来中国の一 部であるはずのチベットで、共産党政治局常務委員会で4位の地位に当たる政治協商会議の主席は大団体を率いて首都ラサ へ行き、チべット自治区成立50周年の式 典を派手に行った。中共政府は「19 6 5 年のチベット自治区の成立は、チベットの歴史の新たな一ぺージを切り開いた。 40年来、中央政府と各地の大きな支持の下で、チベットは大きく変化した。今日のチベットは、政治が安定し、経済が発 展し、社会が安定し、民族が団結してい る」と述べている。
 実態は全てその反対で自治区とは名ば かりで、実情は自治を奪って一方的に中国に併合し、人権と民族自決権を奪ったに過ぎない。現に集会に駆り出された大 衆の中で、喜んで自発的に参加した人は ほとんどいない。政治が安定しているのなら24時間体制で、軍、武装警察、公安当局が厳重に目を光らせ、無数の監視カメラを設置する必要はないはずである。
 確かに以前よりはインフラが整備され 経済もある程度良くなったが、その恩恵 を一番受けているのは大量の中国人移民と公務員、そしてラサを中心に活躍している売春婦などで、一般のチベット人は そのおこぼれすらもらっていない。民族 の団結がないからこそ中国政府は、ダラ イ•ラマ法王が誠意を持って対話をし、中道路線で平和理に解決しようとする努 力を「分裂分子」と決めつけ、徹底的に戦うと言っているが、こうしたことは習近平態勢の矛盾を露呈しているとしか言 えない。法王の写真を寺、家庭、公の場 から排除し、代わりに今回のラサでの軍事パレードで毛沢東、鄧小平、江沢民、 胡錦濤、習近平の大きな肖像画を持って行進した。
 しかも、これらの血で手が染まった独裁者達の写真を、寺、寺院、教会(最近はキリスト教に対しても激しい弾圧を 行っている)に記念行事の贈呈品として 贈り、飾るように命じている。これは正に宗教弾圧で、それに抗議する140名 以上のチベット人がチベットの自由とダ ライ•ラマ法王の長寿と早期帰国を叫び、焼身行為で訴えている。
 中国の民族虐待、浄化、宗教弾圧に対する抵抗の方法は違っても、各民族、宗教信仰者、人権活動家たちが自分の価値や文化に従い、不退転の決意で抵抗している。その中で最近、多少注目浴びているのはウイグルである。
 195 5年にウイグル自治区が成立され、正式に中国の領土化された。以来チベット同様、ウイグルでは耐えがたい宗教弾圧、同化政策が実行されている。伝 統的な民族衣装を纏うことも許されず宗教的価値観に基づくウイグル人男性の風習である、髭を伸ばす自由まで奪っている。領土、家畜、財産など有形のものは 言うまでもなく、言語や信仰など無形の価値まで奪っている。危険極まる中国の核実験も、古代チベット領、現在のウイ グル自治区で行われており、しかも管理 制度はかなりずさんなものだと聞いている。
 2013年10月28日に中国共産党の心臟邰であるとされている天安門広場 で、ウイグル人一家の車が突入し自爆行為の爆破事件が起きたと報じられた。
 2014年3月に雲南省の昆明駅で無差別殺人事件が起きた際も、中国共産党政府はウイグル人の犯行と決めつけた。翌4月、習近平国家主席はウイグル 自治区を訪問し、現地の武装警察にウイ グル人の抵抗を徹底的に抑えるように要 求した。
  その直後、習近平国家主席がウイグルを出立した4月30日に、ウイグル自治区の首都ウルムチ駅で殺人・爆破事件が起きた。報道によると数人のウイグル人が 駅改札付近で刀を持って人々に切りつ け、身に着けていた爆弾を爆発させ、3 人が死亡し79名が重軽傷を負ったとの報 道があった。
 これらの事件全てが本当にウイグル人 の仕業だという確証はなく、中国当局の 自作自演だという説もある。また、今年 8月18日にバンコクで発生した爆弾事件に関して逮捕された人物像や、犯人とし て逮捕された人物の所持品検査などを証 拠としてウイグル人関与の可能性が高いと首う報道が流れているが、タイの治安当局は慎重な姿勢を示し、今のところはこのような断定を避けている。
 もちろん、いかなる非合法的な暴力も賞賛することは出来ないが、その行為だけを取り上げて批難し、そのような行動 に押しやっている要因を無視する事は不正、不公平であると言わざるを得ない。
 中国政府は信仰を圧殺し、無神論を押し付け、同化(漢化)政策を赤化(共産化) を強制している。1987年チベットで 大規模な決起デモが発生した時、当時の公安トップの立場にいた喬石•党政治局常務委員が指示した「主動的に攻撃し、多大な打撃を与え、現場で勝利する」という中国共産党の戦術を、当時チベットにおける共産党トップだつた胡錦濤が忠実に守り、無差別、無慈悲に殺戮を厳行 した。その政策と戦術は習近平も忠実に継承している。
 北京での「抗日勝利70周年記念行事」 と「チべット自治区成立50周年記念式 典」に共通していることは、自国の不正不当な行為を正当化し、21世紀の覇権主義国家としての中国の野望を明確化していることである。自由と民主主義を掲がる国々は、結束してこの脅威にどう対処するか真剣に考えるべきではないか。

※『 新政界往来』(2015年10月号)に掲載

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2016年3月24日 (木)

ダライ・ラマ法王の死を待つ中国

チベットの国璽を偽造

九月八日、チベットで、自治区成立五十周年を記念する大規模な祝賀会が開催されました。祝賀会はラサ市のポタラ宮広場で行われ、人民政 治i会議主席•命正声氏をはじめ、 劉延東副首相、軍総政治部主任張 陽氏など政府、軍の関係者、六十五 人が出席。ラサ市民約ニ万人も参加しました。
祝賀会では中央政府から次のような祝電が届き、発表されました。
「チベット自治区成立は、チベットの歴史に新しい一ページを開いた」
 また一九六五年以降、チベット経済が二十倍も成長していることに触 れ、それは政治の安定、各民族が団結、中央政府と協力した結果だと明 言。私は、そのデ夕ラメな内容の祝 電に怒りをじえませんでした。
  たしかに、自治区成立はチベットにとつて歴史的な一ぺージには間違 いない。しかし、それはチベット人にとって々屈辱の歴史の始まりでしかありません。
  一九五〇年、中国はチベットに人民解放軍を送って侵攻、一九五一年には中国の一部になるよう求める「十七条協定」を押し付けてきました。こ れは、国際的に見れば“侵略”以外の何物でもない。チベットは武力で脅 され、無理やりサインさせられたの です。
  しかもその時、中国は調印に用いるチベットの国璽を偽造しました。
チベットの代表は交渉の際に国璽を 持っていましたが、協定の内容が酷 いので「国璽は持っていない」と中国側に嘘を伝えると、「国璽ならこちらで用意してある」と言つて、本物そつくりに偽造した国璽を捺したのです。
 たしかに、昔に比べてチベット経済は発展しました。飛行場をはじめ、 電車、道路などのインフラも整つたのは事実です。しかし経済発展、インフラの恩恵を受けているのは、中国から来た大量の移住者や軍の関係者、チベットの行政にかかわっている人間だけ。一般のチベット人には 関係のない話なのです。
「政治の安定」という言葉も聞いて呆れてしまいます。本当に政治が安定 しているのならば、今回の五十周年祝賀会でも、参加者を当局が選定したり、人民解放軍、武装警察が常に会場を監視したりする必要はないで しよう。
 それに、自分の体にガソリンをかけて焼身自殺をする人間が百四十二人も出てくるはずはない。しかも、この百四十二人という数も身元の判 明している人だけの数字です。
 最近は焼身自殺の取り締まりが厳しくなり、焼身自殺者の家族や関係者にも追及が及ぶようになったた め、焼身自殺を図る者は身元がわからないように実行するのです。

パンチェン・ラマ師の安否

  五十周年祝賀会二日前の九月六 日、中国政府は記者会見を開き、「チ ベットでの民族自治制度の成功実績」と題する白書を発表しました。
「一九五九年の民主改革と一九六五年の民族地域自治制度の実施以来、 チベットでは新しい社会主義制度が 確立され、同時に経済社会発展も歴 史的に飛躍した。経済の急速な発展と社会の全面的進歩によってチべットの各民族は確実な利益を得て、人民の生存と発展の権利が保障されるとともに社会は調和し、安定してい る」
 チベット自治制度を正当化するもので、五十周年祝賀会での祝電とほ ぼ同じ内容でした。
  その会見では現在、中国に拉致され、消息が不明になつているパンチ エンラマ十一世についての情報も公表しました。
「ラマ氏は普通に生活を送つており、『そつとしておいてほしい』と言 つている」と中国政府は伝えていますが、これも本当かどうか疑わしい。
  中国に拉致されてから二十年もの間、訪中する何人もの指導者たちが パンチエン・ラマ師に会わせてほしいと要請しましたが、中国は応じませんでした。
  会見であんなことを言つたら、却 つて不自然に思われるのは予想のつくことですし、本当なら、公の場に 出てきてパンチエン・ラマ師自身の 口から発言させたほうが中国にとってもプラスのはずです。
  しかし、そうしなかつた。「公に出せない事情があるのでは」「すでに殺されているのでは」と勘繰りたくなります。
  なぜ中国はいま、パンチエン・ラ マ師の情報を公表し、祝賀会や白書 などで「チベット自治制度は成功して いる」と世界にアピールしているので しようか。
  これには、九月二十五日に予定さ れている米中首脳会談が閨係してい ます。アメリカにはチベットの支持 者が大勢いますし、ダライ•ラマ法 王の人気も高い。講演会はいつも満杯です。
 来年、米大統領選挙に突入すれば、 各候補者が激しく中国を批判するこ とが予想されます。習近平主席は彼らの批判を躱すアリバイとして、「チ
ベット自治制度の成功」を世界にアピールしているのです。

欺瞞に満ちた習近平演説

 五月二十三日に行われた「日中友好交流大会」で、習近平が行った演説にも許せない一節がありました。
「日本軍国主義が犯した侵略の罪を隠したり、歴史の真相を歪曲したり することは許されない。日本軍国主義の歴史を歪曲し、美化しようとす るいかなる言動も、中国人民とアジアの被害国の国民は決して許さない」
どの面下げて言うのでしょぅか。
 中国は以前、「チベットは有史以 来、中国の一部だった」と言っていま した。明らかに歴史の歪曲ですが、 次は元(一二七一〜一三六八)の時 代から一部だったと言い始め、現在 は「古代より中国の一部だった」という曖昧な表現を使っています。
  歪曲した歴史でさえコロコロと見 解を変え、一貫性がない。まったく 信用のできない国です。
  また、習近平は九月三日に行われ た「抗日戦争勝利七十周年式典」での 演説で、軍を三十万人削減することを明言し、メディアは大きく取り上 げました。しかし、この「三十万人 削減」発言の裏を読み、分析したメ ディアはなかったように思います。
  この削減される三十万人は基本的に陸軍で、二〇一二年に失脚した薄熙来と繫がりのある人々だと見られ ています。つまり、三十万人削減は自分の派閥闘争を都合よく進めるた めの方便なのです。
  それに、陸軍は基本的に本国を守るための部隊。三十万人削減で浮い た分のカネは、外に出て攻撃を仕掛ける海軍、空軍のために使われることは想像に難くありません。ですか ら三十万人削減発言は、手放しで喜 ベるようなことではないのです。
 一九八〇年代、鄧小平が兵力を百 万人、削減したことがありましたが、 その削減された百万人は、公安警察 や武装警察に流れただけでした。習 近平は鄧小平と同じことをしている にすぎないのです。
今回、もう一つ話題になったのは、 習近平と対立していると見られる江 沢民元国家主席が式典に出席したことです。
 なぜ今回、江沢民は出席したの か。中国国内の官製メディアをチェ ックしていると、あることに気が付きました。海外メディアには江沢民の姿が出ていましたが、中国国内のメディアでは江沢民の映っている映 像、写真は全部カットされているのです。中国中央電視台から始まつて、人民日報など官製メディアは習 平、プーチン大統領、朴槿惠大統領、潘基文国際連合事務総長の姿を出すばかりでした。
「私たちは決して派閥闘争をしているわけではない」と世界に対してさり 気なく印象付けると同時に、「いまは 俺の時代だ」と江沢民に見せつけるわけです。
 ですが、日本の新聞には「三十万人 削減」と見出しがついているだけで、 深く掘り下げた分析はありませんで した。
 日本のメディアには中国の言葉を単純に捉えるだけではなく、その裏にある意図、背景などをしっかりと分析してほしいと思います。

“三つの勢力”の取り締まり

 中国は昨年から、“三つの勢力”の 取り締まりを強化すると発表しました。
 第一の勢力は分裂主義。これはチベット、ウィグルなどを指しています。
 第二は過激主義。これは宗教を指しています。ことに近年、中国はキリスト教徒に対する弾圧を強めており、この一年半だけでも五十の教会を破壊、一千三百人の信者を逮捕したといぅ情報があります。信者だけでなく信者の関係者、弁護士も逮捕している。中国はキリスト教を通じて、西洋の民主主義が入ってくることがよほど怖いと見えます。
 パデュー大学で社会学を研究する フェンガン・ヤン教授の研究によれば、二〇三〇年には中国のキリスト教人口は二億四千七百万人に上り、 世界一キリスト教徒を抱える国にな るとの試算があります。ために、いまから弾圧を強めているのでしよう。
 第三はテロリズム。現在、中国は 「テロリスト=ウイグル族」と定義し ています。
 二〇一三年に起きた天安門広場自動車突入事件や、タイのバンコクで 今年八月に起きた爆弾テロも中国はウイグル人の犯行だと断定し、弾圧 する口実にしています。
 以上の三つの勢力と中国は徹底的 に戦うとしていますが、裏を返せば アメリカや日本以上に、この三つの勢力を中国は脅威に感じているとも 言え、これらへの弾圧はますますエスカレートしていくことが予想され ます。

法王は問題を解くカギ

 三つの勢力と同等に中国が脅威を 抱いているのが、ダライ・ラマ法王 の存在です。私はこれまで、チベット問題に関して中国側と十五年間、直接、間接的に交渉などをしてきましたが、彼らは法王をチベット問題 の元凶と思い込んでいる。私は中国 側によくこう言っていました。
「法王は問題を解くカギだ。決して法王自体が元凶なのではない」
 しかし、私の言葉は理解してもらえず、法王への批判、弾圧は強まるばかりでした。
 中国当局は二〇〇七年、法王をはじめとする活仏の高僧が、生まれ変わりの子供を探して後継者に選ぶチベット仏教の伝統「活仏転生制度」に 介入し、法王の後継者選びは当局の認定を受けなければならない「チべッ ト仏教活仏転生管理弁法(規制)」をつくりました。
 無神論の共産党が活仏転生にかか わるのですからおかしな話なのです が、偽の後継者を仕立てれば、チべ ットだけでなくチベット仏教の国、
モンゴル、ロシア領内のカルムイク共和国、ブリヤート共和国などを掌 握できる。
 この法律に対抗するため、法王は 「自分が最後のダライ・ラマかもしれ ない」との発言をし始めました。法王の影響力は絶大ですから、法王自身 が「自分が最後のダライ•ラマだ」と 発表してしまえば、中国がいくら偽 の後継者を仕立ててもチベット仏教 の国々は信じません。右の法律を無 効化できるのです。

中国の野望を阻止するには

 あまりに恐ろしいことで口に出すことも憚られますが、中国はいま、 ダライ•ラマ法王が他界するのを待っています。
 中国が二〇〇九年から亡命政府との正式な対話を打ち切つたのも、法王が亡くなるまでの時間稼ぎが目的でしょう。法王がいなくなれば必然 的にチベット、亡命政府が瓦解すると考えているのです。
 中国には昔から囲師必闕(必ず逃げ道を開け、窮地に追い込んだ敵には攻撃をしかけてはならない)という言葉があります。昔の中国には、 まだこの言葉が生きていました。
 一九五九年、ダライ・ラマ法王が チベットからインドに逃れた時のこ とです。途中のヒマラヤ山脈を越える時に、ヘリコプターに乗った中国 の追っ手が法王を発見した。追っ手は毛沢東に「発砲の許可をください」 と言うと、毛沢東は「放っておけ。いずれ餓死する」と、追い詰めることが できたにもかかわらず、見逃しまし た。
 ですが習近平体制になつて以降、 それが変わってきている気がしてな りません。
 習近平が就任してから掲げている 「中国の夢」はかつて中国が直接的、 間接的に影響を及ぼした地域、国を 取り戻すことです。そのタ^~ゲット のなかにはもちろん、日本の沖縄や尖閣諸島も入っている。チベット問 題、ウイグル問題同様、これらの領土の主権も自分たちの核心的利益で あると言い続けています。
 中国の野望を阻止するためにも、 先述したように、日本などがしっか り中国の動向に目を光らせ、中国側の言葉を鵜呑みにすることなく、そ の裏にある意図を分析する必要があ るのです。

※ 『 WiLL 』 (2015年11月号) 掲載

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2016年2月17日 (水)

中国 習政権の野望にどう立ち向かうか

  皆さんこんにちは。きょうは奥野先生の非常に重要な勉強会で話す機会をいただきまして、心から感謝しております。
  私は、来年の12月で日本に来て50年になります。その間に四十数年間、学生時代から 先生のご尊父様にもお世話になり、そして今日までこうやって日本で生活できるのも、ある意味ではご尊父様のおかげでもあります。日本は海外から、難民に冷たいとかいろいろ言われておりますけれども、ご存じのょうに先生のお父様は難民救済活動をしてくださって、現在日本には1万人以上の難民が生活しております。そして毎年その人たちを集めて励ましの集会もやっていただいております。ただ、日本が難民をたくさん受け入れていると言うと、近くの国々から偽装難民がたくさん来る可能性もありますので、余り大きい声で、私たちは日本からそういう恩恵を受けているということを言えないのが非常に残念だと思っております。
  それと同時に、私個人的には、奥野誠亮先生は日本の国会議長になると、ずっと子どものときから思っていて、なるのが当たり前だと思っていました。しかし、最終的にはなれなかったんです。それは私からすると、自民党のいろんな方々がどこかの国に対して気兼ねをしているからであります。どこかの国に気兼ねして自分の国の政治ができない国は、主権のない国家と同じです。そういう意味で、奥野先生のためだけではなくて、日本という国が自分の主権を主張できないというところが非常に残念だと思っております。しかし、きようの話は内政問題ではなくて、中国のことを特に話すようにということを先生からご指示いただいていますので、これから少し中国の話をしたいと思います。
きようの中国の話は、3つに分けて話をしたいと思います。まず1つは、中国、少なくとも現在の中華人民共和国という国の体質というか性質というか、それについて話をしたいと思っております。2番目に、中国を中心とする世界情勢が今どう変わったかということと、最後に、日本はどうすべきかということを私なりに話をしたいと思います。ただ、これは全て私個人の責任において話すことであって、決して奥野先生と事前に相談したことではありませんので。奥野先生の勉強会ですから問題ないと思いますけれども、もし問題があったら、全て私個人の責任ですので、そこは間違わないようにお願いします。

  中国の歴史は100年に過ぎない

そこで、まず中国についてですけれども、何よりも私が日本にいて一番気になるのは、日本人が中国に対して抱いている幻想であります。きよう多分この会場には70歳以上の方々もいらっしやると思いますけれども、わずか70年前、 皆さん想像してください。日本人はよく、「中国は広い」と か「中国5、000年の歴史」とかおっしゃいますけれども、本当にそうでしようか。モンゴルは、日本が先に来たのです。日本が満州国という非常にいい国をつくつたから、自分たちのほうから進んで日本に来てもらいました。その後、蔣介石が1947年にモンゴルを侵略して自治区にしました。それを追認したのがス夕ーリンです。1955年、東トルキスタンを侵略しました。そして自治区にしました(新疆ウィグル自治区)。1965年、チベットが中国の自治区になりました。
  確かに日本は中国と戦っております。中国の領土で戦っております。しかし、日本の皆さん、誰かチベット人を殺しましたか。殺していないと思います。なぜならば、チベットは主権国家だったから、中国の戦争に行く必要がなかったのです。それだけでも日本人がちゃんと考えていただければ、現在、広い広いという中国は、あの940万平方キロメートルのわずか37%が中国であり、残りは全て他民族、他国であります。チべットだけでも中国の25%を占めているのです。240万平方キロメートルです。
  また、日本の皆さんは、「中国は5,000年の歴史がある」 とおっしゃいます。あの大陸の歴史は5,000年あります。中国の歴史は5,000年ありません。中国という名前がついたのは1911年、中華民国ができてからです。それ以前は、逆からいくと、例えば清朝はモンゴル人が中国を侵略してつくった国です。中国がモンゴルを侵略したのではありません。その前の明は確かに中国の王朝です。しかし、その前の元は、モンゴル人が中国を侵略してつくった国であって、中国がモンゴルを侵略してつくった国ではありません。ですから、どこから「中国5,000年の歴史」などという発想が来るのかわかりません。

    日本は、アジアと戦ったのではない

  同じく、日本の方々が大きな誤解をしていることがもう 1つあります。日本はアジアに迷惑をかけた、アジアと戦ったと思っていらっしゃいます。本当ですか。違いますよ。 日本は、例えばインドのコヒマとか、そういう領土で戦ったけれども、それは英国軍のインド人です。無理やり英国に連れていかれたインド人です。自由意思のインド人は、日本とともに戦ったのです。ビルマもそうです。英国人の命令で、英国の軍隊として戦った人はいます。しかし、 自由意思のビルマ人は、アウン・サン・スーチーのお父さんたちは、日本とともに戦ったのです。途中から変わりました。フイリピンもそうです。インドネシアもそうです。そうやって考えてみると、フランス軍と戦ったベトナムは、ベトナム人が最初から自発的に日本と戦っていないのです。これも日本人の大きな勘違いです。

  中国政府の本質は、領土拡張主義にある

  ですから、まず中国について申し上げますと、1947年、モンゴルを侵略した蔣介石も、その後のチベットやウィグルを植民地にした毛沢東も同じです。彼らは政権が替わっても指導者が替わっても、根本的に領土拡張主義は変わっていないのです。そして周囲の国々に対して、自分たちがかつて間接的、直接的に一度でも影響力を及ぼしたところは全て自分の領土であるという概念は変わっていないのです。ですから、日本では、例えば鄧小平に対して陳雲は強硬派であって、鄧小平は改革派だとか、李鵬に対して江沢民と区別したり、そういう余計な期待を持つのです けれども、それは彼らの権力闘争であって、中国の根本的な政策には全く関係ないのです。
  きょうは時間の関係でいきなり今の習近平のほうにいきますけれども、その中国を皆さんごらんになってください。皆さんが広いと思っているのは、全部日本が戦争で負けた後です。日本が負けた後にあんなに広くなったのです。そして彼らは、共産主義政権を助けてくれた、共産主義政権のスポンサーであり先生であったソ連とも戦ったのです。それも領土問題で戦いました。
  戦後、1947年にィンドが独立し、49年に中国が中華人民共和国になって、一時、新しいアジアのリーダーとして、そして「平和五原則」の名のもとで、兄弟分の契りを交わしたネールと周恩来。しかし、1960年代に中国はインドも侵略しました。今でも640万平方キロメートルの領土を中国が取ったままです。同じ共産主義者のベトナムに対しても、領土問題で戦争しました。つまり、アジアの中では自分が一番だ、自分がアジアを支配すべきだという中国のDNAは変わッていないということを覚えておいていただきたいと思います。

  近代化に進む中国を侮るな

1970年代においては、中国は長い内戦、革命戦争、その後は文化大革命などで経済はほとんど破綻寸前でありました。実際私は、1980年に3力月間中国へ 行きました。まだそのとき北京には、いわゆる北京の迎賓館というか、北京飯店しかなかったのです。私たちは 国民招待所というところに泊まりました。そのときはまだ女の人は化粧なんか許されていませんでした。そして街には自転車とほこりしかなかったのです。
そのとき日本は、中国は50年も遅れているというようなことをおっしゃっていました。日本で、ある民族派の勉強会に行きました。そうしたら、私の前の講師の方が、我々日本人は優秀である、どこそこの国とどこそこの国みたいに馬鹿じやないとおっしゃいました。しかし、その国が、1977年、鄧小平が3回目に復帰してから、いわゆる「4つの近代化」を掲げ、日本よりもある意味では早く近代化に成功しました。私はそのときの勉強会で、前の先生が、私の聞き違いでなければ、日本人は優秀であって、どこそこの国とどこそこの国の人は馬鹿だとおっしやったけれども、私はそういうことをおっしゃるのが馬鹿だと思いますということを申し上げました。
日本人が優秀であるということは世界中がわかっていたのです。なぜかというと、あの戦争でほとんどが廃墟と化した後、わずか20年で日本は自分の国を立て直しただけではなくて、アジアの国々を助ける立場になりました。そして1970年代の後半から80年代、世界中が日本に注目をし、「日本の奇跡」とか「ジャパン・アズ・ナンバーワン」 とか、100冊以上の日本研究の本が出ました。それだけでも日本人が優秀であるということは間違いないのです。 「必要は発明の母」というように、人々は苦難に直面すると優秀にならざるを得ない部分があると思います。
最近、日本の軍事の専門家とか自衛隊も、中国は日本より20年くらい遅れているから、我々のほうは大丈夫とおっしゃっていますけれども、私はそれもちよっとどうかなと思います。なぜかというと、この20年間あるいは30年間、中国の経済力、軍事力、そして発言力はどんどん増しております。特に中国は「4つの近代化」以来、海軍、空軍に力を入れております。海軍、空軍に力を入れるということは、ただ海軍、空軍にお金を使っているわけではありません。目的があって使っているのです。戦略があって使っているのです。

 

アジアでの軍事大国化を進める習近平

その中国は最近、皆さんご存じのように習近平になってから、軍の改革、そして軍の再編成をしております。今まで中国は7つの軍区がありました。これを5つにし、そして今までは党と政府それぞれの中に軍事委員会というのがありました。この軍事委員会の主席が事実上、同時に国家主席でもありました。しかし、今までの軍事委員会だと、特に陸軍が強いのです。だから、習近平は新たに連絡協議会みたいものをつくって、そこも自分が主になって、そして自分が気に入った将軍たちを常務書記みたいな形で使って、軍の統率、統一を図っております。
  1990年、ソ連の崩壊とともに、アメリカが一番強い国 になりました。しかし、それも長くは続きませんでした。世界各国で、韓国で、フィリピンで、日本で、アメリカの軍は要らないといぅ運動が起きました。どこがそれをリモコン式に操作しているかはともかくとして、現実問題として、 アメリカのほうもそんなに感謝もされないんだったら引き揚げようということで、フイリピンから引き揚げました。引き揚げたらどうなりましたか。すぐ中国が入ってきました。そして韓国から3万人、日本から8,000人の軍人を引き揚げる。
  アメリカは今、経済が低下しただけではなくて、モラルも低下しました。かつては、少なくともアメリカの人たちは、自分たちは世界のために、自由のために戦っているということを信じていました。しかし、そのアメリカは今現在、半分以上はアジア、アフリカ、あるいは隣国からの移民です。この人たちにとっては、アメリカの建国の理念などは関係ないのです。彼らは、少しでもお金を儲けて、少しでも楽な生活を求めて来ている人たちです。かつてヨーロッパ大陸から渡ってきた、自分たちは神様から選ばれた人だという使命感を持った人たちではないのです。ですから今、アメリカが世界のあっちこっちにお金を使うこと、また自分たちの子どもが他の国のために死ぬことを支持する人が少なくなりました。
  一方、中国はどうでしょうか。少なくとも1945年、日本が戦争に負けてから今日まで70年間、反日教育をしてきているのです。それはただ単に日本が憎いというだけではないのです。彼ら自身の国民に対して、いろんな不満とかそういうものをそらすはけロが必要です。もう1つは、常に自分たちの夢、共通の夢が必要です。その共通の夢は何か。彼らからすると、祖国が一番繁栄したときに、間接的、直接的に影響を及ぼした全ての領土を回復することによって初めて中華帝国が完成するということです。彼らはそれを遠大な夢として、みんな受け継いできています。そのために中国は、1972年に日本工作会議というのをやりました。その日本工作会議は、日本を最終的には共和制にし、そして天皇制、特に当時、昭和天皇にさきの戦争の全ての責任をとってもらって処刑すべきだというのが彼らの考えでした。そのときの第二次日本工作会議の資料はまた皆さん別のところで、国会図書館でも調べていただければわかりますけれども、全部あのシナリオのとおりに今までやってきております。
最初は、まず中国のイメージをよくしよう。日本と仲よくすることが大事だ。そのためには、民間交流、民間外交を一生懸命やる。それからスポーツに関しては、例えばわざと負けてあげることも必要だ。そしてマスコミのコントロールの仕方についても細かく書いてあります。そのとおり中国はやっております。
中国にとって、条約というのはただ時間稼ぎの1つの手段にすぎません。日本の場合には、条約、紙にサインしただけではなくて、ロで約束したことまで縛られるのです。 河野談話、村山談話、福田ドクトリン、そういう自分が勝手に約束したことで自分を縛るのです。憲法9条もそうだと思います。先ほど奥野先生はスイスについておっしゃられましたけれども、スイスは、世界的に自分たちが中立であることを認めさせて、そして中立を保ち、しかも全ての国民は年に1回軍事訓練を受ける、そういうことをやっているからできるのです。日本国憲法は、世界人権宣言と国連憲章と、ある意味でセットとしてでき上がりました。 しかし、それが完成して間もなく朝鮮戦争が起きて、現に アメリカ自らがあの憲法を無視するような形で、日本に自衛隊をつくるように協力を要請してきました。
  今、日本の周りに中国は240万人の軍隊を持っております。300万人の公安部隊、武装警察を持っております。そしてミサィルの数は、あと5年すればアメリカよりも多くなるんじゃないかと言われております。もちろん空母もつくって、向こうのほうから近くまで移動できるようになりました。潜水艦もたくさん深化できるものをつくっております。それによって今、アジアの国々はみんな怖がっています。しかし、単独で中国と戦える国はありません。ですから、みんな、どこかが頑張ってくれないか、頑張つてくれるとしたらどこだろうといったときに、日本、あとはインドです。ですので、今、中国がどんどん 攻めてきている。
  例えば、中国は力し 信用していないと思いま す。皆さん、新聞をちよっと調べてください。先ほど奥野先生がおっしゃった集団的自衛権、たしかまだ国会では通ってなくて、 ただ内閣が決議しただけで、日本の領空、領海を侵すことが一時とまったの す。最近になってまた中国からいろいろ、李先念の娘、鄧小平の娘、ああいう人たちが来て、自民党の長老たち、古賀先生とか野中先生とかああいう方々に、我々のお父さんたちがあんなに頑張ったのに、今、安倍に全部壊されるのはもったいないですというようなことを言って、そして周りから圧力をかけて自民党の中で安倍先生をなるべく孤立させ、世界的 には慰安婦問題、南京大虐殺問題、きちんと法に基づいて調べたら何の立証もできないような、実態のないようなものに対して、あたかもそれが真実であるかのようなキャンぺーンを張ってやっているのです。
  ですから、ミサイルを発射する、あるいは飛行機から爆弾を落とすことだけが戦争ではありません。ある意味ではもう戦争は始まっているのです、日本の中に孔子学院をつくって。今アメリカではやっと気がついて、シカゴ大学、 ペンシルベニア大学は孔子学院を追い出しています。しかし、日本では今むしろ勢いがついています。同じように中国の大使館員の証言として、少なくとも日本には2,000人 の工作員がいるということです。そしてその工作員の人たちは、もちろん国を売る人は日本人にはいないと思いますけれども、自分自身気がつかないうちに利用されている人が日本国内にたくさんいるのです。

   

中国は力を第一に考える

  中国は1972年にやっと国連に入りました。皆さん、中国は多民族国家だ、中国は56の民族がいると言うのですけれども、あの根拠は何でしょうか。根拠はないのです。ただ、国連ができたときに52カ国だったから、それよりも多くつくろうということで無理に56の民族をつくったのです。そのときに中国は、我らこそ国連であるということを言うために。そういうふうに中国は芸が非常に細かいのです。
  私の個人的な意見では、中国という国を、どこか地図上にはさみで切るようにして無視はできないのです。少なくとも13億の人間があそこにいることは事実です。そしてアメリカの次ぐらいの軍事力、軍隊を持っていることも事実 です。そして何よりも一党独裁ですから、右向けと言えば 右を向きやすいです。そういう統率力があるのも事実です。ですから、中国を軽視したり無視することは決してよくないと思います。では、中国が理解できることは何か。 それはあくまでも力だと思います。そしてその力というのは、もちろん経済だけではありません。例えば人間同士が話すときも、歴史的にも向こうが攻めてきたらこっちも反論できるぐらいの力を持っているかどうかだと思います。

   

世界に広がる中国の工作

  中国は今、アジア各国に中国語の若いボランティアの先生を送つております。表向きはみんなボランティアです。実際上は全部、民族統一工作部の工作員です。彼らの世界戦略は、外交、防衛あるいは民間の教員とか、例えば日本に華僑教師会というのがあります。昨年あたりまで日本に七十何名かの教授がいるのです。そしてその人たちは 教授会をつくっているのです。主権国家日本の中において、彼らは定期的に中国の大使館からいろんな指示を受けています。勉強会をやっております。
  習近平はますます中国の中において権力を集中化し、独裁政治をさらに強化しております。一番最初、彼がぶつかった壁は公安部でありました。なぜ公安部か。それは 1977年、鄧小平が復活したときに、まだ鄧小平には壁がいっぱいありました。楊尚昆あるいは王震、陳雲という、彼らが言う第二世代の革命をやった人たちがまだ健在だったのです。そして軍は彼が思うようにできなかった。楊兄弟が軍をほとんど牛耳っていました。そこで、彼は新たに公安部をつくりました。そして軍隊から100万人の人たちをそこに移しました。しかし、彼がつくった公安部、最初は自分の基盤としてつくったけれども、それをそのまま江沢民が継承しました。そして江沢民はそれを自分のベースにして、やがて300万人以上の武装警察にして、国内のさまざまなテモを抑え始めました。中国当局が認めているところでも年間200万件ぐらいのデモがあるわけですけれども、それらは今、ことごとく武力、暴力を使って鎮圧しております。
ある意味では、あの国はいつ爆発してもおかしくないような国です。貧富の差があります。軍閥があります。中の権力闘争があります。それと同時に、今、経済も、日本は中国から追い出されたら困ると思っているのですけれども、実際の中国の経済は、アメリヵ、日本、韓国、台湾の投資がなかったらどうにもならないのです。経済もある意味ではモザイクみたいもので、日本を追い抜いてGDP第2位の世界大国になったといっても、13億5000万人の人たちに 平均で幾ら収入があるかというと、下から数えたほうが早いのです。きれいな水を飲めない人たちがまだたくさんいるのです。同じ中国の中でも、都会では身分がない人たちがまだたくさんいるのです。人間として存在しても戸籍上存在しない人たちが、中国政府が認めたところでも 5,000万人、実際は1億人以上いるのです。二重の国家権力、党と政府、二重の経済、闇の経済と表経済、 そしてまた、「黒人」といって、事実上存在するのに存在しない人たち、この矛盾を中国は抱えているのです。だから、中国の一番の敵は中国自身です。中国の矛盾です。それをいつも助けているのが日本だったりアメリヵなんです。

   

本当の世界を知らない中国指導部

現在の中華人民共和国の7名の政治局常務委員は、外国の留学、短期留学は行っていますけれども、1人しか本当の世界を知らないのです。周恩来とか鄧小平の時代にはフランスに行ったり、それから李鵬たちの時代にはソ連に行ったりしていました。今の彼らは、私と同じ世代の人たちです。習近平は、私と同じ1953年6月生まれなんです。しかし、私が日本で勉強している間、彼は田舎に追い出されて、そして毛沢東語録だけ持って、あとは畑仕事をしていたのです。こういう人たちの世界観というのは私たちの常識のようなものはないと思います。1911年10月、習近平は、いつでも戦争できるような体制に入りなさいという指令を出しました。それは、彼が軍事委員会の主席になってから最初の大きな指令だったと思います。ですから、基本的には中国はいつでも戦争できる体制をとっているのです。
  その後、例えば日本の領海などにも入って、多分、脈を見ています。日本がどう出るか、そして世界世論がどう反応するかということを見ながらやっていると思います。その間にたくさんの中国人が、自分たちの親戚、恋人などを外国に送り、どんどんお金を外国に持っていきました。クリントン元国務長官は、2017年には今の中国は存在しないだろうと言っていました。なぜかというと、金持ちがみんな逃げているからです。
  その中国は今、強い国に対しては非常に低姿勢で出ております。そして、「行ける」と思うところに対しては強く出ております。幸いにして、アジアにおいては、1つは台湾ですけれども、台湾の学生たち、若者が立ち上がって、中国は今回だけは経済的に統合するようなことを失敗しました。なぜ中国がそれに乗り出したか。それはアメリカが許しているからです。アメリカは、さきの防空識別圏のときも、副大統領が中国まで行って、一応形の上だけ抗議をしたのですけれども、実際上は新しい大国として中国を認めたのです。そしてアジアにおいては、アメリカと 中国が大国であると、それに元気づけられて、中国は、香港に対しても台湾に対しても挑発的に出てきました。 しかし、台湾においては、幸いにして若い人たちと学生が それを阻止しました。
  香港においては、香港を返還するとき、向こう50年間は一国ニ制度をとり、そしてそれまでの全ての制度を尊重 するということを書いているのです。これはチベットのときもそうです。チペットを中国が併合したときに、1951年、17条条約でも同じことを書いています。しかし、自治を尊重するなどという ことは、そのとき既に破っているから、英国がそれを期待したがおかしいと思うのですけれども、それでも英国と中国の国家間の約束です。国際的な約束です。しかし、それを今回破って、全人のほうで中国の行政長官は北京政府が選んだ人たちの中からマルバツ式に選びなさいということで、今、学生たちは 一生懸命頑張っております。
  世界中が、中国はどう出るかと言っていますけれども、それは世界の注目次第だと思います。世界が無関心でいれば 天安門事件と同じ運命になるでしょうし、世界が注目していれば多少妥協するだろうと思います。しかし、妥協したとしても、普通の選挙をやらせるということは しないと思います。せいぜい行政長官の首を切るぐらいでおさめるようにすると思います。中国は今、夜中に学生のリーダーたちをつかまえて引っ張っていっています。そして最終的には、もしかしたらにせの学生の指導者と話し合いをする可能性もあります。そういうことができるのは、ああいう共産主義国家だからです。

※「奧野信亮と明日の日本を語る会」(平成26年10月20日)での講演録

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2014年6月16日 (月)

暴走中国 その覇権主義的本質 5

もくろむ安倍首相の孤立・弱体化
親中議員やマスコミの洗脳を解き

日本は断固立ち向かえ 

 中国による当面の対日工作は、まず史実的に立証されていない「南京大虐殺」や「慰安婦問題」などの問題を喧伝して、日本のイメージダウンを図ることである。同時に、安倍晋三政権下で軍国主義が復活しようとしているという「偽りの恐怖感」を煽り、日本を孤立させることだ。
 世界的に反日運動を展開する「世界抗日戦争史実維護連合会」はよく知られている。最近、米国各地で慰安婦像を設置している韓国系反日団体などと連携を強めている。
 日本国内では、従来の親中派議員や財界人、ジャーナリストを総動員して、1960ー70年代のように、自民党などの保守陣営に接触している。日中国交正常化前後の日中関係の再現を謀り、安倍首相の孤立・弱体化をもくろんでいる。
 
自主憲法で力強い国を再建

  旧来からの日中友好団体に加え、新たな民間団体が「平和と友好」を掲げて、日本の宗教団体や資金の豊富な財団などと、さまざまな名目での学会やシンポジウム、フェアなどを開催している。ここでも、「日中友好の妨げは安倍政権」との洗脳を試みている。
  実はこの民間団体は、中国人民解放軍と強い結びつきがある。そして、沖縄にターゲットを絞って、自民党や沖縄県の関係者に近づき、深く入り込んでいる。中国軍は東アジアの海洋覇権を握るため、沖縄を「第2のチベット」にしようとしているのだ。
  こうした動きに対し、日本はただ呆然(ぼうぜん)と成り行きを見守るのではなく、断固として中国に対峙する姿勢を示すべきである。中国が成長したとはいえ、日本人の想像以上に中国の日本に対する依存度は高い。日本が毅然とした態度で臨めば、時が味方になるはずだ。
  安倍政権の「積極的平和外交」「戦後レジームの脱却」路線を貫くことは、日本の独立を守り、他国の侵略を防ぐために重要である。国民は安倍首相を支持し、国益に害を与えるような政治家や団体には、厳しい目で監視・批判すべきだろう。
  日本の弱点は、自虐的歴史認識の下で、過度な罪悪感を抱いて真実や現実から目をそらす偽善者が多いことだ。日本人にはなかなか理解しがたいようだが、中国に通じる言葉は正義でも真実でも、謝罪の言葉でもない。彼らが理解できるのは「力」のみである。今日本がやるべきことは、自主憲法に基づく力強い国の再建である。
  一方、中国の潜在的脅威は、国内における汚職問題、根強い政府への不信、軍閥、地方閥、民族問題、共産主義下のご都合主義的資本主義の矛盾など慢性病である。
  日本人はこれらを認識したうえで、媚びへつらいの外交から、主体的外交に転換すべきだ。日中両国が時代にふさわしい対等平等な関係を築いてこそ、ともにアジアの発展と世界の平和に寄与できるだろう。

※『夕刊フジ』(2014年5月24日付け)より転載。 

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暴走中国 その覇権主義的本質 4

祖国のために立ち上がる学生、民衆
アジア諸国が台湾、タイから学ぶこと

「内政干渉は断固阻止」

 中国はアジア各国に内政干渉を行っているが、少なくとも台湾とタイでは、その謀略が、良識ある学生や市民によって見事に阻止されている。
 台湾では今年3月17日、学生と市民らが立法院を占拠した。決起の直接の理由は、台湾と中国のサービス分野の市場開放を目指す「サービス貿易協定」の批准を阻止するためであった。
 馬英九総統と国民党の指導者らは近年、中国共産党とよりを戻すような動きを活発化させていた。中国は経済をエサに台湾への影響を強めていた。台湾人の多くは「できれば独立したい」と思っているが、現実的は現状維持で妥協している。ただ、中国の一部になることは拒んでいる。
 今回の「太陽花学運」(=ヒマワリ学生運動)と呼ばれる社会運動の真の目的は、中国政府が4月16日に出した「両岸関係の平和的発展のプロセスを破壊し、妨害するものだ」という談話が最も正確に表現している。まさに勇敢な学生と市民は、祖国を守るために立ち上がったのだ。この事件後、馬総統の支持率は10%台に落ちている。
 タイでは昨年11月25日、政権反対派(=黄色シャツ軍団)が政府の主要機関を占拠した。インラック前首相率いる政権が、実兄であるタクシン元首相らに特赦を与えようとしたことに反発したのだ。
 タクシン氏復帰に抵抗したのは、中国政府がタクシン氏を媒体として、タイの国体にまで干渉しようとしたことに危機感を覚えたのである。黄色シャツ軍団は「救国」にとりあえずは勝利し、インラック氏は失職した。
 中国の習近平国家主席の〝家臣〟のように成り下がった韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の運命も、韓国国民の覚醒にかかっている。このように、アジア各国では祖国を「中国の魔の手」から救うため、国民が立ち上がって闘っている。

日本国民も積極的な政治関与を

 日本では、安倍晋三首相が積極的に「日本再建」と「平和的安定」のために健闘している。外国の不当な内政干渉を突破して靖国神社に参拝をしたのは、日本の自主独立を表現している。安倍首相は日本国民の豊かな生活と伝統文化だけでなく、日本人としての誇りと自信を取り戻すという、偉業に臨んでいる。
 主権在民(=国民主権)においては、政府を批判する権利だけでなく、支持する義務も伴う。高みの見物をしている余裕はもはやない。日本を取り巻く環境は極めて厳しい。国民一人ひとりが、積極的に政治に関与することが日本を危機から守ることになる。

※『夕刊フジ』(2014年5月23日付け)より転載。

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暴走中国 その覇権主義的本質 3

諸悪の根源・中華思想

 世界の主要都市で来月4日、中国の天安門事件25周年に合わせて、集会やデモなど、さまざまな行事が行われる。私も1989年6月4日のあの衝撃的大虐殺事件の真実を、世界の良識ある人々に知ってもらうことが大切だと考えている。これまでも、中国人の民主活動家たちが主催するイベントに、時間の許す限り参加してきた。中国人でない私が一貫して協力してきた理由は、まず、人民解放軍に踏みにじられて殺された人たちは、勇敢で純粋に自由を求めていたと思うからである。そして彼らが掲げる自由と民主主義は普遍的な尊い価値であり、それに連帯の意思表示をするためだ。
 天安門事件の犠牲者の正確な数は、いまだにはっきりしていない。中国当局は死者319人と発表しているが、それを信じている人はほとんどいない。西側の専門家や中国の民主活動家らによると、死者は6000人から1万人、負傷者が2万人から7万人である。中国政府当局が真実を隠し続ける限り、本当の犠牲者の数を把握することは難しい。
 事件発生当時、世界中の国々が中国に対する経済制裁を発表し、政府のODA(政府開発援助)を停止または凍結して、中国の残虐行為を批判した。当時の中国民主化運動のリーダーたちも、次から次へと釈放されて海外に出た。
 しかし、時とともに各国の政府も世論も変わっていった。
 海外脱出に成功し、一時的に脚光を浴びた民主化リーダーたちも、主導権争いから相互不信に陥り、離合集散を繰り返し、内部闘争に励んでいる。その間、中国共産党は経済的、軍事的、政治的に独裁の基盤を強め、国内では武力による支配を、国外に対しては軍事力による覇権を狙い、周辺諸国の平和を脅かしている。
 80年代後半、私は中国の民主活動家たちと何度か議論を交わす中で、彼らの語る自由と民主主義は単に、現政権打倒のための方便に過ぎないのではないか、という疑問を抱くようになった。

中共犠牲者3800万人推計も

 『中国の民衆殺戮』(パレード)を執筆したハワイ大学のR・J・ラムル教授の推計によれば、共産党による中国人犠牲者は3800万人で、国民党の犠牲者は1000万人とされている。マルクス主義による解放と革命を約束した毛沢東の共産党独裁も、自由と民主主義をスローガンにした蒋介石の軍事独裁も、権力闘争の道具としての看板が違うだけで、中国が世界の中心という中華思想は同じだった。
 中国の民主化運動を応援することは大切であるが、それが法治の下の個人の人権、民族自決権、国家の主権を尊重するものでなければ、毒入りのワインボトルのラベルを変えるだけのことになりかねず、諸悪の根源である中華思想の増長を助けることになりかねない。

※『夕刊フジ』(2014年5月22日付け)より転載。

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暴走中国 その覇権主義的本質 2

沖縄を第二のチベットに
経済効果をエサに県政財官界を〝洗脳〟

 2年前、沖縄県に仕事で行く機会があった。その際、財界を中心に多くの県民が、中国にある種の「甘い期待」を抱いているような感じ、心配になった。ホテルや店舗も、中国語の表記やアナウンスが目立っていた。
 中華人民共和国は建国以来、次から次へと近隣諸国を侵略し、現在の広大な領土を手にした。
 領土拡張主義国家の手法は、相手国に潜伏し、洗脳し、攪乱(かくらん)させ、分断を図り、最後に武力で侵略を完成させる。自国の侵略行為を正当化するために、歪曲(わいきょく)した歴史を根拠にするのが常套(じょうとう)手段だ。
 中国は以前から、「琉球(沖縄)は中国の領土である」という教育を行ってきた。そして、最近、中国の学者や元軍人などが「琉球は1300年代から中国に朝貢し、中国の宗主権下にあったなどと強弁している。
 習近平国家主席と若いころから付き合いがあるとされる、中国軍事科学学会の羅援副秘書長(元少将)は昨年5月15日、中国のニュースサイト、中国新聞網で「琉球(沖縄)は台湾列島の一部。つまり、中国の一部であり、絶対に日本のものではない」と発言した。
 ちょうど同じ日、沖縄で「琉球民族独立総合研究学会」という団体が発足したのに合わせるようなタイミングだった。同学会は、琉球の日本からの独立を目指しているという。
 中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は翌16日、この学会について詳しく取り上げ、「中国の民衆は(同学会を)支持すべきだ」との社説を掲載した。
 「琉球の独立を支持すべき」という文言は、かつての「米帝国主義からチベットを守る」というチベット侵略の口実に似ている。中国が沖縄の財界などに大きな期待を抱かせている点も、毛沢東主席の「チベットの近代化を手伝いにきた」というセリフに似ている。
 中国が経済的効果などをエサに、沖縄県の政財官界や有識者らを洗脳しつつあることに、多くの日本人は気付いていない。私は強い危機を覚える。
 日本政府は、沖縄県を訪問する中国人には数次ビザを発給するなど、入国条件を緩和している。自国への入国者を24時間体制で監視し、無数のチェックポストを設けている中国と違い、日本はいったん入国すれば全国どこへでも行ける。これは「トロイの木馬」と同じで、危機管理上、極めて深刻な問題であると認識すべきだ。
 
米軍を追い出すことは東アジア海洋覇権を握る第一歩

 中国が海洋国家に変貌して、東アジアや西太平洋を制するには、尖閣諸島、沖縄を制することが重要であり、急務である。中央・南アジアの覇権のために、チベットの制圧が不可欠だったのと同じだ。
 沖縄県民の反基地感情をあおって、沖縄から米軍を追い出すことは、中国が東アジアの海洋覇権を握る戦略の第一歩だ。そして、次にチベット自治区のような「琉球特別自治区」をつくることを狙うだろう。チベットの悲惨な現状を、日本国民、特に沖縄県民には教訓にしてもらいたい。

※『夕刊フジ』(2014年5月21日付け)より転載。

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暴走中国 その覇権主義的本質 1

領土野望と虐殺実態

緊急告発

 最近、ある方から「中国は本当に沖縄県・尖閣諸島を奪いに来るだろうか」と聞かれた。私は即、「それは日本次第でしょう」と答え、さらに「日本が弱腰な姿勢でいたら、尖閣だけでなく沖縄全体も奪うでしょう」と付け加えた。
 チベット出身の私は7歳の時から中国と戦い、それはいまだに終わっていない。チベット亡命政府の発表によると、これまでに約120万人のチベット人が、蜂起や処刑、拷問死、獄中死などで命を落とした。私は、中国の領土拡張の野望と覇権主義の実態を、身をもって知っている。
 日本人はよく、「中国は大きい」というが、それは大きな勘違いだ。大きく見える中国の63%は本来、私の故郷・チベットや、東トルキスタン(ウィグル)、南(内_モンゴルなどである。チベットの面積は約240万平方㌔で、中国全体約940万平方㌔の約4分の1を占める。
 中華人民共和国が誕生した1949年、人民解放軍は東トルキスタンを侵略し、翌年にはチベットに侵入した。55年「ウィグル自治区」が成立し、10年後の65年に「チベット自治区」が成立した。
 中国は、チベットを、チベット自治区と青海省、四川省、甘粛省、雲南省などに分断し、分割支配している。いまだに暴力行政を行い、言論、思想の自由などを奪い、人間としての尊厳さえも踏みにじっている。
 毛沢東主席は53年、チベットのダライ・ラマ法王に対して、「チベットの改革・解放が完了したら、人民解放軍は引き上げる」と約束した。

チベット分割支配 暴力行政、監視、言論自由奪う

 しかし、中国は現在も約25万人の軍をチベットに駐屯させ、ほぼ同数の公安警察や武装警察、住民の数ほどの隠しカメラを配備・設置して、チベット人を監視している。ウィグルも同じような状況だ。そこに自治は存在しない。チベット自治区のトップである共産党委員会第1書記にチベット人が就いたことはない。
 中国の胡錦濤前国家主席はチベット第1書記時代(88〜92年)、無慈悲、無差別な大量虐殺に関与したといわれる。スペインの裁判所が昨年10月、この件について訴えを受理している。
 ここで強調したいのは、中国がチベットやウィグルなどの本格的支配を始めたのは、わずか約60年前ということだ。そして、チベット人やウィグル人たちは、いまだに精神的に屈服することなく、必死に抵抗を続けている。

民族問題は中国のアキレス腱

 「政治犯」として獄中生活を強いられたチベット人は、拷問や虐待を受け、医療や食事もまともに与えられないという。罪状は冤罪といえるものが大半とされ、ある歌手は独立の歌を歌った罪、ある者は焼身抗議(自殺)を奨励した罪、ある高僧は証拠もないまま武器を所持し隠した罪に問われた。
 チベット亡命政府によると、チベットでは4月16日までに、2009年2月27日から数えて131人目の焼身抗議者が出た。彼らのほとんどは「ダライ・ラマ法王の帰還」「チベットの団結」「チベットの独立」を叫んでいる。インターネットに動画があるので、命をかけた訴えを見てほしい。
 民族問題は、中国のアキレス腱になっている。中国の実像は、日本人が思うほど大きくも、安定もしていない。
 中国は現在、南シナ海のパラセル諸島やスプラトリー諸島で、ベトナムやフィリピンの領有権主張を無視して、「力による現状変更」を試みている。中国が覇権主義国であり、領土拡張主義国であることは、チベットやウィグルを見ればよく分かるはずだ。

※『夕刊フジ』(2014年5月20日付け)より転載。

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2012年12月22日 (土)

チベット民族を大量虐殺した中共を知らない日本人

チベットは一九四九年十月の中共の成立の後、人民解放軍の侵略を受け中国の一部に併合された。民族を統合する法王はインドに亡命し、チベットでは支那化が急激に進行中。中共の領土要求に対して弱腰外交を続ける日本が、将来チベットの二の舞にならないと誰が言えるだろうか。

中共の領土キャンペーン

──先生は、中共のチベット侵略により人生を大きく変えられました。少年時代にインドヘ亡命し、その後来日して中高等教育と大学教育を受け、二〇〇五年に帰化して日本人として生きておられる。いま、日本国の領土、尖閣諸島が、中共の領土的野心のターゲットになっています。

ベマ 中国人には、かつて中華の帝国に対して朝貢外交をしていた領域は全て自分の領土だという意識があるんです。ですから、人民解放軍の存在意義や、他国を攻める正当性を国民に説明するときは、外国の帝国主義に奪われた、我が国の正当な領土を取り戻すため、と言っているわけです。

 そして、経済的にも軍事的にも巨大化した今、東シナ海から南シナ海まで、実に様々なところで、理屈が
合わない主張をしているのです。

──中共が過去におこなってきた数々の侵略の歴史を見れば、日本は彼らの領土要求を警戒し、その主張に強く反論しなければなりません。

ペマ 日本では対外的に自国の主張をアピールするのはほとんど外務省任せですが、かたや中国は活発に尖閣の領有権を世界に主張しており、効果が少なからず現れています。
 例えば、今年八月に中国人活動家が尖閣へ上陸して以降、私はブータン、ネパール、モンゴルを訪ねていますが、彼の地では親日的な人でさえ、「尖閣諸島」を中国語読みの「ディヤオウィダオ(釣魚島)と呼んでいました。中国は、外務省、軍、党、華僑、マスメディアが一体となった組織的キャンペーンを張っており、その主張は国際社会に一定の浸透を遂げています。

中国人の侵略観

ベマ 日本では“中国四千年の歴史”と表現をしますが、実際、「中国」というのは、中華民国という国ができてはじめて使われだした名称です。それまで二十四回王朝が代わる中で、元にしろ清にしろ、決して中国の政権ではありません。元なら、モンゴル人が中国を侵略してつくった王朝ですし、清なら満洲人が中国を侵略してつくった王朝です。八世紀頃はチベットの方が軍事大国で強かったので、中国に傀儡政権を作ったことすらあります。
 中国は常に領土を巡って周囲と戦争を繰り返し、あるときは広がり、あるときは狭められたりしながらやってきました。漢人の土地という意昧での中国は、今の領土のわずか37%。残りの63%は、チベットやウイグル、モンゴル、満州から奪ったものです。

──かつての朝貢国は中国の一部という論理でいくと、日本も韓国もべトナムもミャンマーもタイも穏やかではいられません。無茶苦茶です。

ペマ そうした国々の中でも、日本は中国人にとって特別な存在です。
 日中戦争で日本にやられ、満州を取られ、更に、自分たちの植民地のように思っていた朝鮮半島や台湾も
奪われてしまった。アジアの中で自分たちが唯一の大国だと思っていたのにそれを日本によって否定されてしまったのです。ですから中国人は、日本に対する敵対意識を潜在的に持っています。反共の蒋介石率いる国民党政府が、毛沢東の共産党と手を組んだのも、相手が日本でなければ成立しなかったでしょう。

──そういった意識が今回の尖閣問題に繋がっているんですね。

ベマ 加えて、国内の情勢が不安定だったり、政権内部の様々な矛盾が表に出て、対立が生じたときに、
中国の為政者は仮想敵をより具体化することによって、国民の目を外に向けようとします。そのひとつの手段が、反日運動です。

──つまり、日本が宥和的な対応をしても、中国の姿勢は変わらない。

ペマ 変わらないどころか、逆効果ですらあります。日本政府は尖閣の地を買い上げることで、軍事システムを作らず、日本人を常駐させることなく、中国との摩擦を回避しょうとしていました。ですが、領有権が日本に残る間は中国にとっては問題解決にはなりません。日本にとっては、精一杯気を使ったつもりの「回避」ですが、そういった日本の弱腰な態度こそが事態を悪化させていると言えるでしょう。

チベットと日本の相似

──ペマ先生のブログではチベットが侵略された理由として、「チベットはある種平和ボケしていた」と
いう書き方をしています。

ペマ チベットはダライ・ラマ法王を戴く平和主義の仏教徒が、政治を指導する立場にあります。国家元首
としてダライ・ラマ法王が存在し、法王は厳格な戒律を守らなければならない立場にある律僧です。未だに
中国に対して宣戦布告してないように。争いは最も敬遠されることなんです。
 十七世紀から二十世紀まで鎖国政治をとってきた仏教国チベットでは、近代的な軍隊はなく、かわりに、約二十五万人の僧侶が日夜平和を祈っていました。その間に周囲の国々はどんどん近代化され、チベットは遅れていたんです。
 そこを狙って軍を進めてきたのが毛沢東でした。一九四九年に中華人民共和国が成立すると、独立宣言の直後に、次の狙いはチベットだと言っていたのです。中国が本来の領土をすべて獲得するまで、中国共産党の革命は終わらない、というわけです。ですから、尖閣諸島や沖縄なども、彼らの革命を完成させる上で非常に重要な意味を持つということになると思います。

──日本の平和憲法と、チベットの平和主義の仏教、両者の相似形を考えると、日本はいま非常に危険な状態にあると言えませんか。

ペマ 理想は、望むだけ、あるいは祈るだけでは、実現されません。それを身を持って知った私にとって、日本の状況は歯がゆいですね。チベットで現実に起こっていることが、日本で繰り返されないことを心から願っています。

周恩来と部小平の棚上げ

──尖閣に限らず、領土問題について日本は無関心に過ぎます。

ペマ 自分の家の中に誰かがゴミを置いたり、不法侵入してきたら、誰でも烈火の如く怒るでしょう?
 なのに、まるで第三者のような傍観的視点で、「まあ、尖閣問題はとうぶん棚上げにしたほうがいい」「東シナ海の海底資源は共同開発しよう」などというのは、私から見ると極めて非現実的で、世間離れした反応だと思います。
 棚上げは、衝突の一時的な回避にはなるかもしれませんが、引き伸ばすことで問題は更に複雑化し、次の
世代に大きな課題を残すことになります。この際はっきり決着をつけたほうがいいと思いますね。

──自分の子や孫に面倒な問題を残さないというのが大人の責任です。

ペマ もうひとつ確認しておくべきは、棚上げという言葉の意昧が、中国と日本では違うということです。中国は、「棚上げしよう」と言っても、その間もしっかり国民を教育しています。日本を一番の仮想敵国として位置づけ、あの領土はいまは日本に占領されているが、本当は自分たち中国のものだから、いずれ取り返さなければならないということを学校の教材に入れて、しっかり次世代に教えているんです。
 日本人はそうした中国側の状況を認識した上で、次代の日本を担う子供に対して、どういった歴史的事実のもとにいまの日本の領土があるのかを、きちんと伝えなければならない。文字通りの無策な棚上げでは、挨を被ってしまって、いざ所有権が問題になったときに、暖昧な主張しかできなくなってしまいますよ。

──表向きは棚上げと言いながら、しっかりと手を打つ中国には、した
たかさを感じますね。

ペマ 一九七二年の日中首脳会談で、「尖閣をどうするか」と切り出したがした田中角栄に、周恩来は「きりがないから、今回触れるのはやめましよう」と先送りしました。そこで、当時の日本の関係者は、尖閣問題について中国は相当理解があると勝手に都合よく解釈して、周恩来を偉大な人物であると評しました。

─いまから考えると、時間稼ぎの方便でした。

ペマ 四十年前の中国の国際的地位は、今とは全く遣います。十年以上続いた文化大革命により、政治的にも経済的にも混乱状態にあり、今の北朝鮮と同じで、国民を養っていくために、諸外国から援助を受けることが、優先されるべき課題でした。そして、自分たちの態勢を整えた今、中国は当然のように権利を主張しています。その主張に正当性があるとは思いませんが、一国家として考えた時、彼らが自分たちのためにやっていることは当たり前のことだと思います。むしろ、中国に過剰におべっかを使いすぎて、何もして来なかった日本のほうがおかしい。今
まで外交や防衛を担当してきた人たちの責任は非常に重いと思います。

中国外交のリアリズム

──一九七八年十月に来日した郡小平は、「こういう問題は十年棚上げにしても構わない」と記者クラブで発言し、翌一九七九年には、チベットについて、「独立を除くすべての問題について、議論の余地はある」という言い方をしています。

ペマ ソ連がアフガニスタンに攻め込んだ一九七九年頃は、中国とソ連との関係は非常に緊張していました。国際社会に受け入れてもらうため、アメリカやヨーロッパの国々に対して、中国は柔軟な姿勢を示す必要がありました。そこで鄧小平は一九七九年三月、ダライ・ラマ法王の実兄を通し、ダライ・ラマ法王に対して、独立以外のあらゆる項目について話し合いと解決の可能性があるとアプローチしたんです。その後、一九七九〜 一九八〇年、ダライ・ラマ法王の亡命政府が派遣するチベットへの調査団を受け入れています。
 尖閣諸島の棚上げもそうですし、チベット問題もそうですが、自国に不利な状況のうちは、とりあえずは柔軟な姿勢を見せるのが中国です。中国は、自分を取り巻く国際環境や、自分自身の力を全部計算して行動しているのです。非常に現実主義的な政治をやってるんですよ。


オークラ出版『撃論』(2012年12月号)より転載。

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2012年6月25日 (月)

中共内抗争表面化の薄事件

毛沢東時代回帰が蠢動 都知事の尖閣購入に支持を

 中国の薄熙来前重慶市共産党委員会書記が解任され、その後、更に権力の中枢である政治局委員からも追放された。しかし、現段階では共産党の党員資格は剥奪されていない模様である。いずれにしても、彼の失脚は大きな政治権力闘争の表面化であることは間違いない。その権力闘争は更に拡大し、政治局常務委員会内部にも亀裂が生じている。しかし、現段階において優位に立っている胡錦濤国家主席グループ、重慶市長の追放で苦境に立たされている江沢民前国家主席側とも、当面この問題の真相を隠すことで利害が一致している。政治局常務委員9名のバランスは、今までは1、習近平国家副主席が、周永康ら江沢民グループに近かったが、最近は習近平が胡錦濤に擦り寄ることで逆転している。
 近年、中国はかつての日本のように奇跡的な経済発展、軍事拡大に成功する一方、貧富の格差が深刻な問題となり、持つ者と持たざる者の関係がはっきりとしている。また、汚職やモラルの低下も極めて著しく、大衆を悩ませている。この現状を憂い、それを対立軸にして現体制に不満を抱く人々の支持を得て、かつての毛沢東時代の共産主義に戻ろうとする勢力との聞にイデオロギー闘争が裏では激化しており、その論争の範囲は政治家、官僚のみならず学者などの間にも表面化し始めていた。
 中国の政治情勢に詳しい中国のインテリから聞く話によると、軍の内部までもこの対立構図が出来つつあり、実際、薄熙来氏の解任直後、北京の首脳部は北京軍区以外から軍を移動までして自分たちの保身に必死になっていたようだ。つまり中国人の反体制側の関係者の話を聞くと、今回の事件は1971年の林彪事件に相当するクーデター未遂事件というのがその本質であって、薄熙来夫人が絡むイギリス人コンサルタントの殺害事件は、事実であるにせよ、現在中国側から世界各国のメディアを使ったその報道が誘導しているところは政治闘争の真相を隠す工作であることに他ならない。
 林彪はソ連へ逃亡中、飛行機が墜落して死亡することで当時の真相は未だに闇の中であるが、今回、薄熙来にまつわる贈賄、汚職に関しては今では中国の文化のひとつであって氷山の一角に過ぎず、
叩けば挨の出ない政治家のほうが少ないはずである。私は中国共産党の一党独裁が完全に崩壊し、真の民主主義が定着するまで解決しないと思う。
 今、アメリカやヨーロッパの国々は正義の旗をかざして、シリアに軍事介入、政治介入しようと図っているが、その正当性は人権と民主主義にあるとするのならば、完全に民主主義と民族自決権を無視し、一方的な植民地支配を続ける中国の政治にこそ世界がもっと積極的に関わるべきではないかと思う。チベットにお
いては4 月19日にもまた2 人の若者が焼身行為をもって中国によるチベットの不当支配に抗議している。
 中国国内では連日のように不平不満を持った民衆がデモ行為などを起こしている。このような状況の中において、今回の薄熙来事件は、当局によるガス抜きとして利用され、中国の真の民主化を更に遠ざけるための口実に使おうとしていることに懸念を抱いている。
 中国の真の民主化は、中国本土において共産党一党独裁支配が崩れ、周囲の国々も植民地支配から解放され、各民族が互いに民族自決権に基づき、対等平等の精神、自由と民主主義が確立されるまで来ないと思っている。
 そのためには今回のような事件は起こるべくして起こったことに過ぎない。むしろ、この事件は小火のうちに消さず、大火事になってもらったほうが中国の将来のためにも、アジアの平和と発展のためにも良かったと思う。日本を始め世界は潜在意識的には中国の現体制の崩壊を望みながら、現実にはその体制を壊すこ
とに何の積極的な行動も取らず、ただ新聞記事で内部闘争の模様を眺めながら、中華帝国の崩壊を願っているだけである。
 シリアなどの国に対して介入するのは、あくまでも国の経済的利益のためであって自由と民主主義はその口実に過ぎず、同様に中国に対しても民主主義と自由を説教する国々も、結局は中国人民および周辺地域の人々の人権を犠牲にしてまで経済的利益を優先していることは明白である。
 そのような国に対して弱腰の世界の指導者の中で、真正面から正義の剣をかざして発言し、行動しているのは石原慎太郎東京都知事だけであると言っても過言ではないであろう。石原知事が尖閣諸島問題で抗議を始めてから政府も抗議する方向を検討し始め、地元地方議会も政府に島を購入して欲しいという決議を出
しているようだが、これは実におかしな話で、政府が今まで何をしてきたのかと逆に聞きたい。
 政府が尖閣諸島を購入したからといって問題解決にならないのは、現状を見ても明白である。私はここで国民が立ちあがり、石原都知事のイニシアティブを支持し、その購入資金を国民が自発的に寄付を募ってすべきであると思う。

※『VIEWPOINT』(2012 年6月号)より転載。

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