国際

2017年2月12日 (日)

明快だったトランプ演説

主権尊重し積極的外交
公平さと配慮欠く日本の報道

 昨年12月18日、民主国家として合法的に選出されたドナルド・卜ランプ氏が本年1月20日、正式に 第45代アメリカ大統領に就任した。私は特にトランプ氏の支持者でもファンでもないが、世界の最も強い国の大統領として十分な関心を持って昨年以来見守ってきた。日本のメディアの報道の姿勢に対し、いささか公平さと配慮が足りないような印象を持った。
 第一に就任する前から彼の行いに対し、さまざまな評価をするのはいかがなものか。もし評価する のであれば彼が大統領の宣誓を行い、最高裁長官から「大統領、おめでとう」と言われた瞬間以後の 言動に対し、評価なり批評をするのが妥当ではないか。日本のテレビや新聞などは彼の政策が不透明 であるとか、彼の演説の英語が小学6年生程度の文法だというように、一国の大統領に対して配慮も 遠慮も見られない。
 私は同大統領の演説は全てのアメリカ国民と、世界の人々に分かりやすく語っており、内容も極めて明快であるように思った。彼自身の「私たちは共にこれから先、何年にもわたるアメリカと世界の針路を決めていく」という言葉の中には、アメリカだけではなく世界に対しても自分の責任を十分に認識している発言に見える。また大統領として、直面する試練あるいは立ち向かわなければならない困難を乗り越えて、やるべきことを成し遂げるという強い意思も表していたように思う。
 政治家出身でない彼らしく、「きようの式典にはとても特別な意味がある。なぜならば、私たちはきょう、単に一つの政権から別の政権に、あるいは一つの政党から別の政党に政権を移行しているので はなく、ワシントンから権力を移行させ、あなたたち国民に返還しているからなのだ」と強調。この 言葉はまさに首都を中心としたエリー卜集団から政治を国民の手に移す決意を述べており、もしこれがオバマ氏やケネディ氏が言ってい たら、リベラルの人々も褒めたたえ ていたのではない か。
 彼は国民中心的な運動に関し、「この運動の中心には国家は国民に奉仕するためにあるという極めて重要な信念がある。アメリカ人は子供たちが通う優れた学校、家族のための安全な地域自らのための仕事を求めている」と述べた。この発言はまさに政治家としての本来しなければならないことを明確に語っているように見える。アメリカ合衆国の大統領としてアメリカファース卜というのも、まさにアメリカの最高の責任者として当然のことであり、彼自身これを分かりやすく基本姿勢を次の言葉で表している。「私たちは二つの簡単な原則に従う。アメリ力製品を買い、アメリカ人を雇用するということだ」。これがまさに全ての国の政治家が自覚すベき任務ではないだろろか。
 彼の外交政策が明確でないとか、自己中心、アメリカファース卜の姿勢に対しても批判はあるよ うだが、これは「各国が自国の利益を第一に置くのは当然の権利であるとの理解の上に立つ」という 相互主権尊重も明確にしている。
「私たちのやり方を他人に押し付けるのではなくむしろ皆が付いて来る模範として輝くよう努める。 古い同盟を強化し新しい同盟も作る。そして文明化した世界を結束させてイスラム過激主義者のテロに対し、地球から完全に撲滅する」。この言葉は全ての国の主権を尊重し、アメリカの価値観を押し付けないという謙虚さと、一方、同盟国との関係を大切にし、強化する、また必要に応じては現実的な状況に対応し、新たな同盟国もつくるという積極的な外交を行う決意と方針を明確にしている。さらに文明化した世界すなわち「自由と民主主義、法の支配を重んじる国々が、 過激的な手段によるテロとは戦っていく決意も明確に表している。
 ポピュリズムという言葉の解釈がもし大衆迎合主義という意味であるとすれば、むしろオバマ政権やそれに類似した大衆迎合主義な指導者たちの下、社会の秩序を壊し始めている。こうした現実に対し、大統領は「『兄弟たちが一緒になって住むことは、何という幸せ、何という楽しさだろう』と聖書は語っている。私たちは考えを率直に述べ、意見の違いについて正直に議論しなければいけない。その時も常に団結を求めなければならない」と語り、現在、無責任な権利の主張によって率直な言論の自由と社会の伝統や価値観を失いつつあることに対しても、明快な言葉で語り掛けている。アメリカなどでは当然かもしれないが、日本などでは公式の場から排除されている「神」という言葉、あるいはそれに類似した言葉を5回も使 っている。
 確かにアメリカは現段階においては世界に最も影響力のある国であり、その国の最高指導者の言動は私たちも深く関心をもって行かなければならない。そして彼の行動に対しては当然必要に応じては批判することも必要だろう。日本のメディアはトランプ反対の行動について多く取り上げている。自由社会においてはそれも必要であるが、一方合法的かつ民主的に選ばれた元首に対し暴徒のような黒装束の人々の行動を肯定するような姿勢は民主主義の根本に反するのではないだろうか。

※『世界日報』(2017年2月2日付)に掲載

|

法の精神護った韓国裁判官

朴裕河教授への判決が良識

 韓国の裁判官が法の精神を護良識と司法の独立性を示した。新聞報道によると「韓国の朴裕河・世宗大学教授(59)が著書『帝国の慰安婦』で『自発的な売春』といった描写により元慰安婦の名誉を傷つけたとして名誉毀損罪に問われた裁判で、ソウル東部地裁は25日無罪を言い渡した」とあった。私は昨年10月に韓国を訪問した時、朴教授の学問的な著作が不当なバッシングを受けているのを見聞した。中には朴教授を「売国奴」扱いするような表現も飛び交っていた。
 今回の訴訟は検察側が「『(慰安婦が)日本軍と同志的な関係にあった』という部分など35カ所の表現で名誉を傷つけたと主張し、 懲役3年を求刑」していた。
 これに対して裁判官は「『同志的な関係と記述した部分など、30カ所は意見の表明で事実を明示したと見ることはできない」と判断。さらに「『すべての慰安婦が自発的に慰安婦になった』と断定したと見ることは難しい」とし、告訴人の名誉が毀損されたとは言い切れないと極めて數智に富んだ公正な判断を下した。
 私は以前、朴教授の本の内容に触れた際、一人の学者が真実を追求し、事実で検証しよろとする客観的な学問研究成果であって、特定の立場や先入観に基づく著作ではないと思った。その上で韓国での彼女に対するバッシングは言論、学問の自由への抑圧であるように思った。
 この度の裁判官の『学問の自由は憲法で保障された基本権で、名誉毀損の故意性については厳格に判断しなければならない」という見解は、韓国憲法の番人として、東京裁判の時のインドのパール判事同様、周囲の環境に屈することなく、公平、公正に良心と法の精神に忠実であり、特定の国や団体を贔屓したものではない。
 私は1970年代の後半から80年代にかけて、ダライー・ラマ法王の代表という立場で頻繁に韓国を訪問した。その時の韓国の高官、教授、高僧たちは、私が日本で勉強し日本語ができるといろだけで大事にしてくださった。ホテルの職員、タクシーの乗務員、店の店員皆が親しみを込めて日本語で接してくれた。責任ある立場の方々は、皆さん日本に友人をお持ちで、私は日本と韓国は隣国として非常に友好的な関係にあるという印象を受けた。両国の良好な関係の恩恵を私も十分に受けたものだった。
 しかし、一人の安っぽい人道主義者の元軍人の捏造と、真実を十分に検証もしていない、その場逃れの軽率で無責任な政府高官の談話によって、両国関係が冷え込み悪化してしまった。これは両国両民族にとって非常に残念であるだけではなく、東アジアの繁栄と平和にとって大きな損害である。
 あくまでも私個人の意見であるが、韓国は制度上は民主国家であっても実質は発展途上であるように思っていた。だが、今回の裁判官の法律家としての良心に基づく判決は、韓国の民主国家としての健在ぶりを世界に見せた。韓国の政治家たち、運動家たちも素直に歴史を見つめる勇気と敷智を持って裁判官の判決を受け止めることを期待する。
 アメリカのトランプ政権 はアジア、特に同盟国を今後も継続的に重視するだろうが、アメリカの総体的な力が低下している厳しい現状の中、日韓の協力関係は両国のみならず東アジアの安全保障と発展に寄与する。

※『世界日報』(2017年1月31日付)に掲載

|

2016年8月15日 (月)

民間外交推進協会「第190回国際問題懇談会」での講演録

【講演要旨】

   戦後70年間に世界で100以上の戦争が起きており、難民問題が発生した。自分は7歳の時チベットからインドへ亡命した。アジアの戦後の難民1号だ。現在、台湾、北朝鮮を含めアジアは27カ国あるが、1947年のインド独立時には欧米の植民地で、中国は内戦状態だった。主権を回復した日本に続き、多くの国が独立した。共産主義が南下しベトナムは南北に分かれた。アジア各国の赤化を防ぐために67年にASEANが誕生した。インド亜大陸ではSAARC(南アジア地域協力連合)が85年に創設された。日本はいずれもオブザーバーだ。ASEAN各国の法律、行政は旧宗主国の制度であったが、SAARCの諸制度は英国型で一様であり、ASEANよりも域内交流が盛んだ。
 冷戦終了後、中国、ロシアと旧ソ連の中央アジア4カ国で上海協力機構が設立されたが、日本は排除され、発言権ある仲間となっていない。日本は冷戦後も米国陣営とみられている。日本はAPEC(アジア太平洋経済協力会議)のの重要な一員であるが、APECはASEAN統合を邪魔する存在に見えるし、日本への義務付けも多く、不利益ではないかと思う。
  日中戦争で日本が戦った中華民国は、現在の中国の僅か37%の面積で、チベットは入っていない。中国大陸は5千年の歴史が、漢民族の王朝が続いたわけではない。元はモンゴルが中国を侵略して作った王朝であり、チベット、モンゴル、満州の宗教は仏教だ。清朝はチベットに大使の役割を担う「駐蔵大臣」を設置していた。「中華」概念は、清朝を倒し新しい建国の概念として、米国を学んだ孫文が11年に導入したもの。我々は自分たちを中国人と思っていないが、メディアは「チベット族」を中国のプロパガンダに沿った呼び方をする。中国成立の翌年50年に中国はチベットを軍事制圧し17カ条協定によりチベットの主権を奪い、65年に自治区化した。文革後の中国は、30年間で経済力が飛躍的に発展し、軍の近代化に成功し自信をつけた。政治的、軍事的野望も出てきた。中国の近代化により、レアメタルなどのチベットの地下資源価値も上がった。チベットにはメコン川などアジアの水の源流も多い。中国は240万人の軍隊と300万人の武装警察を背景に、自国だけでなく他国にも脅威を与えている。
  日本は「島国」と言われるが、排他的経済水域を足すと面積440万平方キロの海洋大国である。大国意識を持って、国連改革に積極的に指導的な役割を果たすことが大切だ。アジアの繁栄にはバランスが大切であり、キッシンジャーは、「中国の台頭を非軍事的に牽制できるのは、インドと日本の協力しかない」と発言しており、日印関係の強化がアジアの平和と安定に寄与しよう。天安門事件後、西側の対中認識が変わり、米印関係は92年以降徐々に好転した。
  安倍首相も同様の考えで、日印関係はグローバル・パートナーに発展したが、メディアのインド知識不足と、国民の意識の遅れが残念だ。日本はアジア一員と自覚し、国連改革や常任理事国入りを目指し世界に貢献することが重要だ。中国のシルクロード構想が実現すると、日本の自由貿易に支障が出る懸念がある。民主主義国家として法の支配が定着している日本とインドが協力して、ASEANを核とするアジアの仲間に中国を入れる構想が望まれる。日本はかつてチャンドラ・ボースなどアジアの独立運動家を育てた。これからは、共に戦った者同士、平和的支援をし合っていくことが可能だ。米国のように、アジア各国の指導者候補となる留学生を日本で教育する、人材育成を計画的に実施すべきだ。アジアの人々も期待している。

【主な質疑】

Q 戦後のインドの経済政策はソ連に近かった。インド側の変化で日印両国の利害が一致したのではないか。

講師 戦後、多くの独立国で計画経済が流行した。インドがソ連寄りになったのは、米国がパキスタンを支持したため。インディラ・ガンディー元首相も含めインドは親日的だ。

Q 日本はインドに親近感がある。経済関係ではインド向けODAは増加したが、日本企業の投資は多くない。インド留学生も少なく、欧米を向いている。下地はあるので改善余地はあるのではないか。

講師 米国には中国人よりもインド人留学生のほうが多い。お金は持っているが、日本側に英語の障害と、「インド人は貧しい」という意識があった。南アジアの対日感情は悪くなかったが、日本が東南アジアに力を入れていた。

Q 日本の難民対策はもっと踏み込むべきではないか。

講師 欧州は時代により難民の出入りを繰り返してきた移民国家。日本は、インドシナ難民以外に、本格的に受け入れた経験がなく、安易に受け入れるべきでない。日本社会は難民の異文化と宗教を十分尊重し、融和できるのか。偽装難民の流入懸念もある。

  

 ※『FECニュース』(2015年11月1日付)に掲載

|

遺憾なユネスコ南京事件登録

調査と公平性の追求を/中国に偏向する国連は疑問

 中国がユネスコの世界記憶遺産として南京大虐殺に関する資料を提出し、それが受理・登録されたことに、多くの日本の皆様が驚き落胆したことだろう。私も例外ではない。
 今回の出来事は、国連という国際的組織が中立性を欠いた問題だらけのものであったと認識している。そもそも、まだ十分に立証されていない話に、事実関係を十分な検証もせず、双方の見解を慎重に聞かず、片方だけの言い分を認めたことは極めて残念である。
 私の記憶が正しければ、当時南京大虐殺なるものの記事を書いた記者は、後に台湾で「あれはイギリス情報機関と国民党に依頼されて書いた」と、懺悔のような談話の記事を日本の英字新聞で読んだ。それに関して当事者である国民党の将軍も、その記者の証言を裏付けるような発言をしていたと日本の専門家から聞いている。先の東京裁判は、勝者側の一方的な裁きであったことが歴史的事実であると、だんだんと世界的にも認める人が多くなっていると思う。当時の国際情勢を背景に、日本が自由に発言できなかった環境も、その後一変している。
 私がここで述べたような見解を持って る学者やジヤーナリストが存在していることを踏まえ、ユネスコは慎重に事前調査を行うべきであった。また、中国側の行動と意図を事前に読み取り、それを阻止できなかった日本の関係者も深く反省すべきではないだろうか。一旦登録された偽造の文章でも、それを撤回させるのは容易ではないと認識しつつ、この問題をきっかけに、日本に対する特定の国のプロパガンダへの対応を一段と強化しなければ、今回の教訓を生かすことはできないだろう。
 日本国内には、ユネスコに対する日本の分担金を停止または保留にすべきだとの意見もある。2014年だけでも日本は37億円を負担したという。新聞などによると、これはユネスコの運営費の10・83%に相当するという。確かに巨大な金額である。故に負担金停止や保留を主張する方々の気持ちは分からないわけではないが、ここで日本が分担金を保留または停止することは、国連に対する日本国としての義務を放棄することにつながる。実際、アメリカなども何度か国連機関の負担金未納また機関そのものからの脱退という手段をとっているが、それは必ずしも効果的であるどころか不評を買っている。
 日本は、国連そのものの運営費も長らく多いときでは25%前後を負担してきたために、国連の安全保障理事会の常任理事国になるべきだと主張する人もいた。だがその後、中国を先頭に新しい経済大国が出現することにより、日本の分担金比率はどんどん少なくなっている。一方、 中国の負担金はどんどん増えている。ここで日本が国連の1加盟国としての義務を放棄し、分担金を未納にしたところで、中国は喜んでその肩代わりをする覚悟と意図をもって今回のような行動に出たと考えられないわけではない。
 今、日本は国連改革を主張し、インド、ドイツ、ブラジルなどと共に安全保障理事会の常任理事国を目指しているとき、国連総会の加盟国に対しても、お金で全てを解決しようとする成金的な悪印象を与えることは、日本国の国益にならないと思う。それより正義と真実の旗印の下、今回の手続きの経緯および結論に至るまでの関係各位の言動などを調査し、真正面からユネスコの精神に基づいて公平・平等の実現を追求し続けることが、大切である。
 9月の中国における抗日戦争勝利70周年式典に出席した潘基文国連事務総長の異例の偏向的な行動をみても、国連そのもののありかたに疑問を感じる。国連憲章も日本国憲法も時代の変化に対応できない状況に陥っており、安倍首相の国連での演説は、まさに国連の慢性的諸問題を包括的あるいは抜本的に見直すための時代に即した提言であったと高く評価したい。ただ有言実行はどの時代においても、その社会にとっても大切であるゆえ、日本はむしろ今後分担金を停止するどころか、積極的に国連を中心とする国際舞台で活躍し、日本の存在感を発揮すべきであると認識している。
 かつて、中国は共産党政権設立後20年あまりにわたって、国連における国民党の議席と安全保障理事会の常任理事国の地位を獲得するためにきめ細かい戦略、戦術を展開してきた。中国の意図に賛同するわけではないが、その手段ときめ細かい戦術からは学ぶことも多い。
 今、世界的にアメリカの総合的なカが衰退しつつあるなか、真の民主主義と自由を守るための日本の役割は極めて大きい。日本は今回のユネスコの極めて軽薄な行動を通して日本の過去、現在、そして未来を世界により正確に認知してもらうための良い機会として、継続的に緩むことなくこの問題に関して、資金、人材、知恵を結集して戦うべきである。日本はあくまでも史実の検証に努め、正々堂々の姿勢を貫くことで諸国の理解と共感を 得られるであろう。

※『世界日報』(2015年10月22日付)に掲載

|

2016年6月26日 (日)

危険極まる中台首脳会談

チベットを軍事制圧「17条協定」との類似性

   中国の習近平国家主席と、台湾の馬英九総統が今月初め、シンガポールで首脳会談を行っ た。「歴史的握手」「一つの中国を確認」などと報じたメディアもあったが、危機感を覚えた関係者も多い。チベット出身の国際政治学者、 ぺマ•ギャルポ氏は、中国の軍事的圧力の下でチベットが結ばされた「17条協定」との 類似性などについて緊急寄稿した。

    習、馬両氏の発言を聞いて、私は「事実上、『台湾の中国併合』に合意したのではないかという懸念を抱いた。それは、中国のチベット占領の一歩である、1951年年5月23日の「17条協 定」と照らし合わせるとよく分かる。
    同協定は、中国がチべ ッ卜東部を軍事制圧した 後、中国の見解を聞くた めに北京に派遣されたチベット政府代表団が、拘束状態で脅しを受け、権 限もないのに結ばされたものだ。17条には、中国人民解放軍のチベット進駐や、チベットの外交権を中国政府に委譲することまで記された。
    今回の会談冒頭、習氏は「(中国と台湾は)『一つの家族』だ。どんな力もわれわれを引き離すことはできない」と語りかけたという。
    17条協定の第1条は「チベット人民は中華人民共和国の祖国の大家族の中に戻る」とある。私は、この「大家族」と17条の「一つの家族」の意味が同じだと思わざるを得ない。
    会談では馬氏が「平和の現状を維持したい」 として、ホットラインの設置や平和的な紛争処理 など5項目を提案。習氏も原則維持の重要性を強調したとという。
17条協定の第4条にも 「チベットの現行政治制度に対しては、中央は変更を加えない。ダライ・ラマの固有の地位および職権にも中央は変更を加えない」とある。
 チベットの現状や、返還後の香港の現状を見れば、中国が「現状維持」を守る気がサラサラないことは分かるはずだ。
 中台首脳が「一つの中国」を確認した以上、台湾で大規模な独立運動が起きた場合、「祖国の治安維持のため」として中国人民解放軍や公安部隊が派遣される口実ができたともいえる。
 現に、米国や日本の情報当局者は「独立志向の強い民進党の蔡英文主席がリードする台湾総統選(来年1月16日)から、新総統の就任式がある同5月までに、中国が動く可能性がある」と分析しているという。
 これは台湾だけの問題ではない。台湾の平和と安全は、日本と北東アジア、西太平洋の安全保障に直結している。中国が台湾を取れば、太平洋に容易に打って出ることになるからだ。
  ぜひ、台湾の人々にはチベットの悲劇から学んでほしい。そして、日本の人々、特に沖縄の人々には、中国が「チベットの次は台湾」「台湾の次は沖縄」と狙っていることを自覚してほしい。

※『夕刊フジ』(2015年11月25日付)に掲載

|

2016年1月28日 (木)

中台首脳の握手を危惧する

 現象を見て原因を軽視する傾向が現在の日本の指導層に見えるのは残念である。これは政界のみならず財界や言論界でも言えることである。だから、常に問題が生じたときには先々のことや、その本当の原因を考慮せずに、ただパッチワークのようにその時々の対策しか行っておらず、そのためそれによって10年後50年後、あるいは100年後にどのような影響をもたらすのか考えていない。

 たとぇば、石破茂大臣の移民受け入れに関する、安易とも思える「受け入れるべき」といろ発言や、 中国の習近平主席と台湾の馬英九総統の首脳会談に関しても、ひたすら歴史的なことや、90秒にも及ぶ長い握手をしたなどといって他人事のように肯定的に見ている様子も同様である。

 石破大臣は将来この国をリードしうる大物政治家であり政治家としての経験も豊富である。そのような方が日本は宗教や人種などの違いを理由に移民受け入れに消極的になるのはおかしいという発言をするのは、宗教が日本人以外の人々にとってどのように大切なもので簡単に妥協できない民族および個人の価値観として尊厳そのものを表すものであることを忘れていないだろうか。

 多くの難民たちは自分たちの宗教を守るために危険と恐怖を乗り越え、宗教を守るために異国への移住や避難を選択している。彼らにとっては命に代えても簡単に変えられないものである。これは日本などのような多神教で、他の文化や宗教に対し寛容な環境で育てられていないという事実を認識する必要がある。私自身、元難民としてひとりでも多く同じ境遇の人々を救ってくれることを切に願い、そうなれば喜ばしいことと思える一方、日本が逆に今後予想もしな かった宗教問題や民族問題に苦しまなければならないような状況が生じ ることを懸念せざるを得ない。

 日本の場合には、同じ人物が神社の氏子にもなり仏教徒にもなることに何らかの矛盾を感じる人はいないどころか、自ら無神論者であると言いつつ 様々な教団に属し、お守りを買い、それぞれの宗教儀式に参加しても不具合には思っていない。しかし、まだ世界には厳格に信仰を守り、自分たちの譲れない価値観を守るために命を捧げることも惜しまない人々が存在する。従って、日本が難民や移民を受け入れる以上、 彼らの信仰や文化を認め、それを 尊重するfが必要である。

 中国共産党政府の習近平と国民党の台湾総統の馬英九は中国がひとつであることを再確認し、中国はひとつの家族であるということにも認識が一致したと伝えられている。また、両者は抗日歴史書についても共同執筆に前向きな見解を持ったと報じている。中国の国内向けの教育においては、台湾のみならず沖縄までも同国の家族の一員であるという観点をを一貫して見せてきた。今回の「一つの中国」が、中華人民共和国になったのか、中華民国になったのかは明確ではないが、客観情勢から考えてみると、これは中華民国が中華人民共和国に吸収されたと認識することが出来る。

 独裁国家中国の習近平は、そのような歴史的かつ大胆な決断をする力と権限を持っているのだろうが、国内の支持率が10%台に落ち、残りの任期が1力月半ほどでしかない馬英九にそのような権限と権力があるのか疑問である。中国においては残念ながら現在の政治制度では人民の意思は尊重するに値しないが、台湾は少なくとも現段階においては民主国家であり、国民の総意を無視して独断的な言動は許されるであろうか。民主主義を普遍的な価値として大切であると言い続けてきたアメリカや日本が、それを見て見ぬふりをすることにも、誠実さが欠けているようにも見える。アメリカは、すでに中国が台湾を武力解放することには反対であると公言し、武力以外の方法であれば併合することを黙認するかのようなを示している。

 昨年、台湾において学生や市民 による抵抗で、馬英九による中国との経済統合を促進するような条約の締結を阻止することに成功した。しかし、今後同じような民衆の決起があつた場合、中国はひとつの中国の国内問題として受け止め、これを鎮圧するための軍隊もしくは武装警察を大量投入する可能性も出てきたのではないかと危惧している。

 日本の安全保障と東アジアの安定を考えた場合、台湾が中国の配下に入ることは、決して喜んではいられないはずである。台湾の安定は日本の安全に直結していることを認識し、台湾の行方に関心を抱くことは日本の国益と不可分であると考え、台湾の民主的な選挙に対し、中国による恐喝や不当な干渉に対しては注意深く見守り、必要に応じて批判をする勇気と見識を持つべきではないか。

 民主的な制度と国民による自決を求めている台湾の人々に対し、 日本が大きな関心と支持を表すことは将来の日本のためにも不可欠である。

※『世界日報』(2015年11月30日付)に掲載

|

2015年6月15日 (月)

中国にへつらう国益毀損者

拡張主義の片棒担ぐな 
冷静な分析がいるAIIB

日本には中国共産党の権力者と会うこ とに熱心で、神仏を拝むくらい御利益が あると信じている人たちがいる。村山談話、小泉談話を繰り返すことにも題目を唱えるほどのご加護があると信仰している人もいる。その人々にはどぅやら真の中国を見ることよりも、自分たちが見た い中国しか目に入らないようである。最 近のアジアィンフラ投資銀行(AIIB)への参加についても、日本はバスに乗り 遅れないようにと騒いでいる。
  4月22日のバンドン会議も、会議の歴史的意義や今後の役割を考え、日本がこの会議でいかに存在感をアピールし、アジアの安定と繁栄、そして世界平和に寄与するかというより、習近平中国国家主席に安倍首相が拝謁する機会に恵まれる部分だけにメディアの関心が行った。そ のような方向へ誘導しようとする勢力も活発に動いている。
 習近平と会うことは互いに一国の最高権力者としての対等平等な環境でなければ、会う意味がない。会ってお互いに何 を話し、それが今後日本にとってどのよ うなメリットをもたらすかが重要であ る。中国はバンドン会議を舞台にし、ア ジァのリーダー、発展途上国の味方であ ることをアピールするために演出をした。
  昨年のAPEC首脳会議で、両首脳がったときの習近平の無礼極まる態度は、彼自身の傲慢さを露呈するものにな ったと日本の一部の良識者はあきれ返っただろう。しかし彼自身の中国人民や世界に対しての目的はあれで十分に達成することができた。
  今回、先方からも会談を積極的に実現することが両国の国益になるという認識 を持って臨まない限り、日本側からへつ らって会談を実現する必要はなかった。日本人は礼を重んずる民族であり、それに対しては世界からもそれなりの評価を受けている。だが、伊達政宗公の言葉にあるように「礼も過ぎればへつらうこと になる」ということを忘れてはならない。
中国が実現しようとしているAIIB についても、冷静にその目的と経緯を分析し、現状を把握することが重要である。 中国の目的はあくまでも「一帯一路」の 構想を実現し、まずは経済的覇権を実行することで中華帝国の基盤づくりをしよ うということは、中国自ら明言しているのに、その事実から目を逸らし、あくま でも一部の企業が利益を得ることしか考 えていない。その人々は無意識のうちに自国の国益よりも企業益に盲進してい る。その結果として、日本の国益を失う ことになるのを忘れている。それだけで あればよいが、それ以上に後になって中 国の新しい経済を媒体とした拡張主義の片棒を担ぐことになり、後悔することになるだろう。
   中国は政治的にも経済的にも決して順 調ではない。一党独裁制度の下、政府があらゆるデー夕を管理し必要があれば捏造すら平気なので、ある程度事実を隠すことに成功しているが、真実はそれほど簡単に隠せるものではない。
  一つの単純な例を挙げると、中国のバブル経済最盛期にはチベット犬(チべ夕ンマスティフ)1匹が200万ドル(2 億円)で取引され、チべタンマスティフと赤いフェラーリは中国の富の象徴とな っていた。
  本来チべタンマステイフは毛が厚く、 チベットのような高地でしか生育していないため、中国人に人気が高い。しかし、 皮肉なことに4月中旬、20匹のチべタンマスティフが他の150匹の犬と共にト ラックで屠殺場へ運ばれる途中に発見さ れニユースになった。これらの犬は1匹 5ドル程度の相場で売買され、皮は手袋 などの材料に、肉は食料などになるらしい。
  また、西部大開発として大々的に宣伝 されたにもかかわらず、炭鉱なども閉鎖されており、石炭を輸送する貨車も廃線となり多くの人々は失職した。日本でも紹介されたように建築ラッシュも途中で 放棄され、砂漠の中で廃墟となっている。 従って、中国は大勢の労働者を外国に送 り込み、外国で大きなプロジヱクトなどを進めない限り、国内の開発も限界に来ており、多額の外貨準備高も減りつつあ るのが事実である。
  かつて、文化大革命という大悲劇から 立ち直ろうとした中国は、ダラィ・ラマ 法王に対し独立以外何事についても話し 合いをする用意があると誘い、その後、 実態調査団が本来のチベット領土を满遍 なく訪問した。しかし、1980年代後半になると北京政府は態度と条件を次々と変えたが、法王は誠意を持つて対応し た。ところが今年4月中旬、北京政府は チベットに関する白書を発表し、法王を分離主義者と決めつけ、今後の接触に関 しては謝罪を要求している。
  理屈に合わない話ではあるが、北京政府は次のダラィ・ラマ法王は自分たちが 決めると言ったり、法王が自ら政教分離を実行し、民主的なチベットの土台作り をした行動さえ偽装独立活動の一環と決めつけている。つまり、中国にとって約束事は時間稼ぎ以外意味がないといぅこ とである。

※ 「VIEWPOINT JUNE 2015」 掲載

|

2015年6月 8日 (月)

リー・クアンユー氏に思う

小さくとも輝く国造り 
日本はシンガポールに学べ 

   3月23日、シンガポールのリー・クアンユー元首相が91歳で他界したという悲 しいニュースに接した。シンガポールは 1965年8月にマラヤ連邦から独立 し、同年私が日本に来た頃、新聞によく 登場していた人物である。
  シンガポールを含むマラヤ連邦は、1960年代当初、国連においてチベット 問題を積極的に支援していた。リー・クアンユー首相はベトナム戦争においても反共の立場でアメリカを支持したため、 子供でありながら私は彼の言動に興味を 抱き、その後も彼の動向を注目し著書などを懸命に読んだ記憶がある。彼が当時 「私は中国人ではなく、中国系シンガポール人である」といぅ言葉には特に感銘を受けた。
  1980年代初め頃までシンガポール はチベット問題に対しても非常に理解のある国であった。彼は若いときには共産主義も受け入れていたが、60年代から既に資本主義を導入し、独自の民主国家を建設して沢山の優秀な官僚を育てた。私は大学を卒業後、ダライ・ラマ法王の代表として当時アジア太平洋全体を担当しており、法王のシンガポールご訪問の際も寛大なご協力をいただいた。
  戦前及び戦中のアジアのリーダーに次ぐ戦後のアジアのリーダーとしてイン ドのインデイラ•カンジーとリー・クアンユーは世界的にも存在感を発揮していた。後になつて同じ客家といぅことで鄧小平とも理解しあえる関係になり、中国の近代化にも多大な貢献をした。これには感情的に理解できないが、私の人生において最も憧れた20世紀のリーダーの一人であり続けた。ここに生前のご好意に感謝し今日の、小さくとも輝くシンガポールを造ったことに、心から敬意を表したい。国の繁栄は国家のサイズや人口あるいは資源だけではなく、リーダーのビ ジョンと国民の強い意志によることを具現化し、私たちに教えてくれた人物であ った。
 私は今の安倍首相も戦後日本の国家としての真の独立と繁栄のために努力していることは評価するものの、日本国全体 としてはシンガポールから学ぶことが多いように思う。過去の日本のリーダーはシンガポール同様極めて有能な官僚たちを育てたが、近年無能な政治家と無責任なマスコミはそのエリートたちをバッ ングし、多くの人材が民間企業や外資系に流れたことは勿体無いことであった。
 その一つの例が、昨年の日中首脳会談に関する合意文書の英文が双方が擦り合 わせをする前に中国によって一方的に発表され、尖閣諸島が問題としてあたかも日本側が認めたかのような印象を与える ような事件が起きたことだ。私の未熟な 経験から言っても、通常二つの異なる言葉で覚書や合意文書を作る場合には、両国の言葉以外に共通語として英文などに訳し、それを双方が照らし合わせ一語一 句を確認するのが常識である。
 当時、日本では朝日新聞をはじめ、マスコミや元老、言論人は直接対話が両国の関係改善のための第一歩であると、対話をすることだけに注目をしていた。し かし、その対話は害あって得るものは何一つ無かったように私は思う。むしろ中国によって世界中のメディアや専門家に尖閣諸島問題、つまり領土問題があるかのようなイメージを作るのに利用されて しまった。
 今再び日本のメディアや政界の元老、 財界の重鎖、そして宗教までが安倍首相の戦後70周年の談話に侵略と植民地支配を人れるべきだと口を揃えて騒いでい る。
 特に驚いたのは日本カトリック司教団が発表した「戦後70年をへて、過去の戦争の記憶が遠いものとなるにつれ、日本が行った植民地支配や侵略戦争の中での人道に反する罪の歴史を書き換え、否定しようとする動きが顕著になってきてい ます」「日本の中でとくに深刻な問題は、 沖縄が今なお本土とは比較にならないほ ど多くの基地を押しつけられているばかりか、そこに沖縄県民の民意をまったく 無視して新基地建設が進められていると いうことです。ここに表れている軍備優 先・人間無視の姿勢は平和を築こうとする努力とは決して相容れません」という 文面である。
 なぜなら、政教分離は政治が宗教に関与し、利用することを良しとしないのと同様に、宗教が政治に関与し、しかも一方的な価値観であたかも世界に1億2000万人の日本を代表する教団の総意で あるかのように印象付けている。
 安倍首相の諮問機関「21世紀構想懇談会」の座長代理を勤める北岡伸一氏の発言にも落胆した。つまり、日本の社会に対して責任ある立場の人でさえも、今の中国の軍事力増強と経済力に伴う覇権行為がアジア全体でどれだけ深刻なものに なっているか全く認識していないか、ま たは対岸の火事として自分たちに及ばな いと思っているのだろうか。隣の韓国でさえ、済州島の住民が中国の経済侵略に抵抗する運動を起こしているし、韓国政府の中からも中国の露骨な内政干渉に抵 抗する動きがあり、ミャンマーでも主権 に干渉する中国に抗議している。
 リー・クアンユー元首相のシンガポ— ルでさえこの中国の脅威に対し、インド に積極的な関わりを求めている。これら の国々は現実を見据えて生きているが、 日本はどうだろうか。

※ 「VIEWPOINT MAY 2015」 掲載

|

2015年3月17日 (火)

アジアの平和と日本の役割 5 中国の野望

毛沢東から続く宣伝工作
野望を砕く日本人よ立て

 私は大学の研究生時代に、チ ベット語の『毛沢東語録』を入力するアルバイトをしたことがある。学費を稼ぐためだったが、多くの革命家に影響を与えた毛沢東の思想を知ることができ、ありがたかった。彼が率いた中国共産党は、わが故郷 チベットを強奪した許し難い敵である。敵を知り、われを知るために、いい経験になった。

 毛主席は「歴史を治めるものは国を治める」と説いた。自国の歴史のみならず、他国の歴史も自分たちに都合よく解釈・作文することに、ためらいがない。最初、チベットや東トルキスタン(新疆ウイグル)、南モンゴル(内モンゴル)などが餌食にされた。現在、日本が「南京事件」や「慰安婦問題」「尖閣諸島問題」などで、攻撃されている。

宣伝工作も重視した。ナチスの宣伝大臣、、ゲッベルスは「ウソも100回言えば本当になる」と語ったとされるが、毛主席以降、歴代指導者も宣伝工作を駆使している。共産党の思想や路線の宣伝、教育などを担当する宣伝部と、宗教や対外工作を所管する統一戦線工作部は、権限と予算において中国政府の「部」(日本の省)より上とされる0。

 日本は1945年8月のポツ ダム宣言受諾から、52年4月のサンフランシスコ講和条約発効まで、連合国軍の占領を7年間も受け、国民全体が洗脳教育を受けた。その影響は「自虐史観」などとして現在も色濃く残っており、宣伝工作の有効性は否定できない。

 こうしたプロパガンダ の重要性について、毛主席は、西側諸国から学んだとされる。

志貫いた吉田松陰、高杉晋作、坂本龍馬

 今年のNHK大河ドラマ「花燃えゆ」は、明治維新の日本が舞台となっている。ペリ—来航は日本に大きな衝擊を与えたが、幸い、吉田松陰や高杉晋作、坂本龍馬など、日本の将来を見据えて、「私」ではなく「公」のために、命をかけて志を貫いた先人がいたため、日本は救われた。

 現在の日本に、吉田や、坂本のような人物が、どれだけいるだろうか。安倍晋三首相はさすがに理解しているが、中国の世界共産化に気づき、いまそこにある日本の危機に自覚め、これを阻止するために行動している人物は少ない。

 中国は一貫して対日工作を継続している。日本社会のあらゆる階層や職種に潜入し、周囲を洗脳している。政界や官界、財界、マスコミ界も汚染れている。戦後70年となる今年、中国は「正確な歴史館に基づくべきだ」.(王毅外相)と日本に圧力をかけてきている。

 中国は、日本だけでなくアジアや世界の脅威になりつつある。日本が勇気を持って正論を語り、行動することで、アジアや世界の信頼と尊敬を勝ち取ることができる。志を貫く日本人が数多く立ち上がることこそが、真のアジアの安定と世界の平和への貢献となる。

※夕刊フジ(2015年2月8日付)掲載

|

アジアの平和と日本の役割 4 中国の野望

中国への危機意識共有
日印米豪で習に包囲網

 オバマ大統領は1月26日、 インドの共和国記念パレードに米大統領として初めて招待された。米大統領が在任中に二度も訪印したのも初めてだ。オバマ氏は、インドの最高権威者であるムカジー大統領と、風格が出てきたモディ首相との間で、充実した2時間を過ごした。

 時代の変化を感じた。私はインド亡命中の少年時代、印パ戦争を体験した。米国が、民主主義国家であるインドではなく、 パキスタンの軍事政権を支援することに疑問を感じていた。あれから50年近く過ぎた。現在、米国はインドと国益が一致し、強力なパー卜ナーとなっている。

 オバマ、モディ両氏は記念日の前日、約1時間半の首脳会談を行った。
 インドの関係者によると、2 人は冒頭、中国問題について集中的に協議した。まず、中国が近年、海軍力を過剰に強化し、 太平洋や東・南シナ海、インド洋などに挑発的に進出している脅威について確認。そのうえで、米国とインド、日本、オ—ス卜ラリアが連携して、中国を牽制し、アジアの平和と安全を守ることで一致したといぅ。

 両首脳は「中国に対する認識があまりにも近いので驚いた」 (関係者)という。そして、安倍晋三首相率いる日本の重要性も語りあったとされる。ちなみに昨年、共和国記念日に招待されたのは安倍首相である。

日本がかって、国連の安全保障理事会の常任理事国に立候補する意思を表示した際、当時のパウエル米国務長官は「日本の現在の憲法下では、その役目を果たせない」と、同盟国ながら消極的な姿勢を示した。 安倍首相は現在、日本が戦後一貫して歩んできた平和路線を継承しながら、「地球儀を俯瞰する外交」「積極的平和主義」を掲げて、アジアの平和と安全のために、日本のできる限りの役割を果たそうとしている。日本の抑止力強化のため、安全保障法制の整備も進めている。

歴史問題での攻撃は日本の地位向上を妨害

 中国はこれに対し、日本のアジアと世界における影響力や発言カの増大、国際的地位の向上などを、いちいち妨害している。在米中国人や韓国人を動員して、事実と異なる歴史問題で日本攻撃しているのも、こうした 一環といえる。中国人の言動には、必ず周到に計画された「裏の目的」が あることに、日本人はもっと気づくべきだ。

 日本の財界人やジャーナリスト、学者の中には、中華人民共和国が過去に何をし、現在、何をしているかを客観的に見ようとせず、甘い幻想を抱いている人々がいる。 現実を直視してほしい。

 「中国の友人」を自負するのであれば、中国が謙虚に反省して、覇権主義を断念するよう要求すベ きだ。中国が、国際法と秩序を尊重し、国際平和に貢献するよう、 強く求めるベきである。

※夕刊フジ(2015年2月8日付)掲載

|