VIP往来

2010年12月26日 (日)

ガート・ヨハネス・グロブラー南アフリカ共和国駐日特命全権大使 〔第3回〕

「何があろうと、南アフリカと日本は、相互に信頼し、尊敬しあう」

ペマ・ギャルポ(以下P) 前号で、ワールドカップ開催が南アフリカにもたらす影響について政治的、経済的な面からお話しいただきましたが、大使がご自身で感じられていることは何かありますか?

大使 たまたま昨日アメリカ大使館に独立記念日のお祝いで行ってきたのですが、そこでロイターの記者に会いまして、彼が言うには「正直なところ私は南アフリカがうまくやれるのか心配していました。でも南アフリカからの報告はすべて前向きなものばかりでした。心から大使にお祝いを申し上げたい」と言ってくれました。
 先ほど経済効果や投資効果や観光効果について申し上げましたが、もう一方で何よりも大事なのは、南アフリカの人々がこれを通して自信を持ったということ、結果、決断力を持ったということがあります。これがワールドカップのもう一つの政治的な波及効果になっていくと思います。これは初めてアフリカ大陸で開催されたワールドカップということで、自信や決断力を持ったのは南アフリカの人たちだけでなく、アフリカ諸国の人たちも同じように持っていただいていると思うのです。私だけでなく、他のアフリカ諸国の大使の人たちも、今日本で同じような気持ちを持ってくれていると思います。

P 質問事項に無い関連質問になりますが、私はスポーツオンチなので、もしかしたら既にやっているのかもしれませんが、この延長線上でゲーム、あるいはオリンピックを主催するという可能性はありますか?

大使 実際には私どもは1995年にラグビーのワールドカップをやっておりまして、それがこの前インビクタスという映画にもなっているのですが、それ以外にもクリケットの国際試合もやっております。ですから当然、ワールドカップの次は何だ?ということでオリンピックのことも考えていると思います。特に今回のワールドカップは10都市で開催されました。10都市で開催するのは非常にコーディネーションが難しかったのですが、オリンピックは基本的に1都市開催ですから、10都市でできたのだから、1都市ではそんなに難しくないと当然思っているだろうと思います。

P 最後の質問になりますが、世界中、そして日本にもネルソン・マンデラ氏の哲学、人格に共鳴している人たちが沢山います。私も今まで2回ほど南アフリカ大使館を通してテレビ局と一緒に行こうという手紙を出したのですが、そのまま宙に浮いたままになっています。その後マンデラ氏の健康の問題になったのですが、今はどうなさっているのかということに読者の方が関心があると思いますので、最近のご様子を。
 あと例えば観光というのとは違うとは思いますが、一種のピルグリメージとして、ネルソン・マンデラ氏に会いに行きたいという学生がいたら、それが可能かどうかということをお聞かせ下さい。

大使 まず私はとても幸運でして、ネルソン・マンデラとは密接に仕事をしておりました。何度もお会いしておりますし、最後に会ったのは去年でした。マンデラは非常に素晴らしい優れた党首であり、政治家であり、彼以外には前の政権から今の政権への平和的な移行はなしえなかったと思います。
 ただ彼の92歳という年齢と、既に現場から引いているという状況で、彼の周囲の人間は彼に引退している状況を十分に味わっていただきたいと思っております。ですから極力いろいろなことを退けております。彼には自分の時間を読書や静かに過ごしたりすることに使っていただきたいと考えてています。今回のワールドカップの時も多くの方から会いたいとリクエストがございまして、でも恐らく会ったとしても本当に数名にすぎなかったと思います。それ以外は周りも気を使って、せっかく引退したのだから十分休ませてあげようというふうになっています。
 国外に移動するにしても、国内の移動に関しましても極力避けるようにしておりまして、実はFIFAが今度の決勝戦の後で、優勝チームにトロフィーを渡すのをネルソン・マンデラに、という考えもあったようです。彼がそれを受けるかどうかは私どもは全くわかりません。高齢で体が弱っておりますので、彼とその家族に決定を任せねばなりません。ただネルソン・マンデラ財団、ネルソン・マンデラの精神を受け継いで、それを世界に伝えるという役割をする財団がまだまだ活発に動いておりまして、その中でネルソン・マンデラ子ども基金というのがございまして、それは本当に子どもたちにネルソン・マンデラの考え方を普及させ、実現させるという働きをするところです。

P ありがとうございました。私の方からは質問は以上ですけれども、大使の方から特に日本の皆さんにメッセージ等ございましたらお願いいたします。

大使 先ほども申し上げましたように、代表として日本に来れたことをとてもうれしく名誉に思っております。南アフリカの人は日本に対して本当に尊敬の念を持って見ております。それは例えば伝統であったり、それから経済力や科学技術であったり、あるいは商品の信頼性、例えばトヨタであれば、アメリカで何が起ころうとやはり南アフリカの人は忠実なトヨタのファンです。日本というのは何かを約束したときにはその成果を信頼できる。そして日本の世界平和維持に対する立場というのは、私どもは日本が国連を通していろいろな活動をしているのが非常に大きな金額だというのはわかっております。それに貢献しようとしているのもわかっております。また世界平和だけでなく、アフリカに対してもアフリカ開発会議を通してアフリカに大変貢献していただいておりますので、そうしたすべてのことを考えましても、文化も経済も全てのことをひっくるめて信頼を持ち、尊敬している相手でございます。 (了)

※『政界往来』(2012年1月号)より転載。

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2010年12月12日 (日)

ガート・ヨハネス・グロブラー南アフリカ共和国駐日特命全権大使 〔第2回〕

「南アフリカは常任理事国入りを希望しています」

ペマ・ギャルポ(以下P) 大使から非常に、包括的に現在両国間で話されていること、そして役割などについてお話しがございましたけれども、FECの英語訳がInternational Friendship Exchangeとなっていますけれども、日本語では民間外交推進協会と言って、実際はより積極的に民間外交をengagementしていく組織であり、メンバーもほとんどが日本を代表する企業のトップの方々で、その意味でも今後日本と南アフリカの関わりにも両国にお役に立つ仕事ができると思うんですけれども、その中において特に私たちが関心を持っていることの一つが、今大使からも国連のお話しもありましたけれども、日本は一応国連の安全保障理事国の常任理事国に名乗り出てやりたいと積極的に活動もしているんですね。世間の評判としては当然アフリカからもし出るとしたら南アフリカが最有力の候補者として考えられていると思いますけれども、国連の改革、及び国連の今後の役割についてどういうお考えを持っていらっしゃるかということと、南アフリカを含めて、今後国連の常任理事国を増やすことを南アフリカがどう考えているのか、差し支えなければ、日本が立候補していることに対してもどうお考えになっているのかお聞かせ願えればと思います。

大使 確かに南アフリカというのは民主化を果たして国連に戻ったわけですが、私どもの立場といたしましては国連というものが世の中の平和や安定や経済的成長を促進するための鍵となる組織だと考えております。ただ国連が出来たときからは時代がどんどん変わってきておりますので、確かに基本的なところで変えていかなくてはならないこともあります。基本的なところだけでなくて、安全保障理事会でだったり、常任理事会がどういうふうな形であるべきかであるとか、時代が変わりましたので、いろんなことで変えていかなくではならないことはあるのですけれども、ただもう一方で私どもが考えるのは、やはり国連がきっちり機能するための道具のようなものを与えなければいけないのではないかと思っています。
 と言うことで私どもは非常に多国籍間の関係というものをいつも重視しておりますので、そういった改革が必要ということはわかっておりまして、それでその改革というものも国連がより民主化されなくてはいけないとか、より透明化されなくてはいけないとか、そういうふうには考えております。
 それで安全保障理事会に関して申しましたら、現在の五カ国だけが理事国になっていて、かつ拒否権も持っているということに関しまして、私どもといたしましてはアフリカからの代表も入るべきだと思いますし、また安全保障理事会がより国大されたものでなければいけないと考えています。
 特に安全保障理事会に関しては南アフリカの立場としてはいろんなプロポーザルを出してまいりましたけれども、少なくともアフリカから2議席は欲しいということは言っております。ただそのアフリカから2議席と申しましても、南アフリカの立場を申し上げますと、私どもはアフリカの中では非常に経験もありますし、キャパシティもあります。国連の改革に関しては有能なメンバーとして力を発揮できると考えております。ということで私どもは常任理事国入りを希望することを宣言しております。そして安全保障理事会の改革を早く実現するように進めたいと考えております。またその改革された安全保障理事会の中には必ず日本が入っているべきだと思っております。
 ただこれは本当に協議をつめ続けなければいけないことですので、先日岡田外相との間ではこういった国連のことも含めまして、より一層対話を進めていくことを確認したところです。

P 大使から政治、経済、広い範囲についてお話しをいただきましてとても感謝しております。この数日間、私の学生はみんな寝不足になっておりまして、今回南アフリカはワールドカップ主催国になっているということで、もちろんまだ結論を出すには早いかと思うのですが、南アフリカにとってそれによって良かったこと、また困ったことはありますか?

大使 本当に残すところあと二日となりましたけれど、既に効果というのはでてきております。私どもが考えますには、ワールドカップはアフリカにとっても、南アフリカにとっても、とても大きなプラスの効果を生んだと言えます。
 南アフリカ政府としては相当な額をワールドカップに投入しましたけれど、結果として、その恩恵を今後10年、20年と受けていくと思っております。
 ワールドカップがあってもなくても、私どもの経済はここ10年、20年相当な勢いで発展してきておりましたので、いずれにしても交通や空港などのインフラの改善、近代化の時期には来ていたのですが、それが今回たまたまワールドカップという機会があったので、それをさらに加速させることにはなったのですが、いずれにしても、ワールドカップの有無に関わらずインフラ整備はしただろうと思います。ワールドカップが契機となって急速に近代化いたしましたので、国民は今後長い間その恩恵を受けていくと思います。インフラ整備に関してはワールドカップで終わり、ということではなく、先ほども申し上げた800億ドルというインフラ整備予算ですが、私どもはあまりに急速に経済的に進展してしまったために、インフラ整備が本当に追いついていないところがございますので、ワールドカップ後も手を付けていかなくてはいけないところが沢山あります。供給が需要に追いついていない状態なのです。
 スタジアムに関して申しましても5つは既存のものを補修、改修されたもので、4つは新しく建てられたものなのですが、よくアメリカ人が全く使われなくなった箱物のことを“ホワイトエレファント”という表現をしますが、南アフリカに関してはこれは全く心配のないことでして、5つは既にあったものを直しただけだということ、新しくできた4つはもともとその地域にそういった施設が必要だったのです。というのは南アフリカの人たちはスポーツや音楽等のイベントが大好きな人たちなので、そういうものが本当に必要とされていて、それを建てただけだったのです。それからこういったことは経済的な効果だけでなく、心理的な効果ももたらしました。ワールドカップが成功裏に終わったということで日本だけでなく世界中が南アフリカに対してとても前向きな味方をするようになったのではないかと思います。それによってビジネスや投資が当然増えるでしょうし、観光客もおそらく増えるでしょう。ワールドカップの効果は本当に長いこと続いてくれるだろうと思います。 (続く)

※『政界往来』(2010年12月号)より転載。

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2010年10月17日 (日)

ガート・ヨハネス・グロブラー南アフリカ共和国駐日特命全権大使 〔第1回〕


「日本は戦略的に非常に重要なパートナーです」

ペマ・ギャルポ(以下、P) 今日まずお伺いしたいと思ったのは、おそらくいろんな方が大使をインタビューして、いろんなところに出ていると思いますけれど、読者の皆さんは、大使閣下は一体どんな方かと言うことに非常に興味があると思いますので、ご自身の今までの経歴やバックグラウンド、日本に来るまでのご経験などを簡単にご説明いただければと思います。

大使 まずは私のインタビューをしていただくことをうれしくまた名誉に思います。私は大使といたしましては実はアジアは初めてでございまして、今までヨーロッパ、アメリカ諸国を歴任してまいりました。たとえばヨーロッパでしたら、ドイツであったりイギリスであったり、スペインであったり、そしてアメリカにまいりました。また南アフリカの外交官として、アンゴラ、ルワンダに初めての事務所を開設いたしました。ということで、私といたしましては、日本に赴任するということを聞かされました時には本当に驚きました。それで日本に来る直前のポストといたしましては、外務省でヨーロッパ、アメリカの総局長をしておりました。

P  実際日本に来られて、恐らくこれもまた日本的な質問だと思いますが、このお仕事をされて今までの経験を踏まえて、日本でのお仕事をどういう風に受けとめられているのか、また日本人について、日本の印象などについて簡単にご意見を下さい。

大使 先ほども申し上げましたが、日本に赴任できたということを非常にうれしく名誉に思っております。と申しますのは第一に日本は南アフリカにとって戦略的に非常に重要なパートナーということです。また日本と南アフリカ2国間の協調関係というのは非常に良いものがあります。続いて申し上げますと2008年度は日本は南アフリカにとって第一位の貿易相手国でありました。ただ私が確信しておりますのが、経済が回復いたしましたら、また私どもへの日本からの投資、貿易が増えるのではないかと確信しております。残念ながら2008年度以降は世界的金融危機によって、日本が第一貿易相手国ではなくなってしまったのですが、それも回復すれば日本からの投資、貿易が増えるというように確信しています。
 2002年から2008年にかけてでございますが、日本と南アフリカ間の貿易に関してはとても大きな成長が見られました。それで先ほども申し上げましたけれども、経済が回復いたしましたら貿易も回復してくるだろうと確信しております。また日々の業務から申し上げますと今非常に大切にしておりますのが、いろんな日本の企業やビジネスの方とお会いすることでございまして、と言いますのはやはり、私といたしましては経済的な関係を強くすることが大事なことになってきているからです。当然日本からの関心というのは大変強いものがございまして、もちろんそれは日本以外の国からでも、南アフリカだけでなくBRICsと呼ばれる新興国に対しての興味というのは非常に大きいものがございますけれども、南アフリカといたしましては、日本の方々が南アフリカにとても強い関心を持ってくださっているのも非常に感じているところです。
 それで貿易のことから申し上げますと、今日本の企業で南アフリカに進出していただいているところが80から90社くらいあります。それは会社を出していたり、投資をしていただいているところということになりますが。それに南アフリカの大きな将来的なポテンシャルを考えていただいたり、あるいはここ5年から10年かけてインフラ整備がもっと進んでまいりますので、そうした時には日本と南アフリカの関係というのは将来的には非常に強い大きいものになっていくと考えます。インフラ整備に関しては、南アフリカは今後5年から10年の間に800億ドルほどかけようと考えています。それで例えば交通に関して言いましたら鉄道網であるとか、南アフリカの人々はとても新幹線の技術に興味を持っており、エネルギー分野でありましたらエネルギーを効率よく有効に使うための技術に興味を持っています。あるいは原子力の分野で日本に関心を持っています。逆に申し上げれば、こういった分野が日本にとっては大きな可能性のある分野になるのではないでしょうか?
 自動車に関してですが、トヨタ、日産のそれぞれのトップの方にお目にかかってお話しいたしましたところ、南アフリカにビジネスの拡大を考えているという風におっしゃいました。これはおそらく南アフリカで製造を続けるということだけではなく、南アフリカを通してアフリカ諸国だったり、あるいはヨーロッパに、ということを考えていると思います。
 先ほど戦略的なパートナーと申し上げましたが、実はこれは4月末に岡田外務大臣が南アフリカを訪問して下さいました時に、私どもの外務大臣、閣僚と話をいたしましたところ、日本と南アフリカの関係を戦略的なパートナーに格上げするという風にお話しをいただいたことがございます。この戦略的パートナーシップと言うのは三つの部分から構成されており、一つは2国間の経済的な結びつきをより拡大すること、経済的な関係の拡大に関して先ほど申し上げるのを忘れたかもしれませんけれども、もう一つの分野として自然資源とうものがございまして、これは私どもは日本の企業に買っていただくだけでなく、是非開発に参画していただいて関係をさらに強めていっていただきたいと考えております。恐らく南アフリカは世界で一番こういった戦略的な資源(鉱物)を保有している国ではないかと思います。
 二番目は日本と南アフリカがアフリカ全体の開発に向けて一緒に取り組んでいくということです。これに関しては先日岡田外相とお話しをいたしましたけれども、3国関係というものを構築したいと考えています。3国というのは日本と南アフリカだけでなく、もう一つの国がアフリカのどこかの国であるということで、3国関係を今後構築して行きたいと思っています。なにを目的としたものかと言いますと、例えば民主化を求めた良い統治であったり、経済的な開発であったり、平和維持といったことのために3国間の関係を開発できればと思っています。
 ということで一番目が経済関係、二番目がアフリカ全体における協力関係、そして三番目が私どもが考えておりますのが、より近い、より深い政治的対話を持つことです。これはテーマはアフリカに限らず世界的なテーマについて、環境問題であったり、軍縮であったり、国連の改革であったり、そういった多国間での対話に関わることを話し合いました。
 それから政治的な対話を深めることということで先ほど申し上げるのを忘れましたが、例えば世界的経済危機のようなものが起きました時に、私どもはアフリカにおいて唯一G20の参加国でございますので、こういった世界的な経済危機に関しましても日本とより密に話ができればと思っています。 (続く)

※『政界往来』(2010年11月号)より転載。

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