対談 山田恵久國民新聞主幹 VS ペマ・ギャルポ

2008年4月20日 (日)

活火山と化すチベット情勢 (下)

山田 日頃、「人権」「平和」を声高に叫ぶ左翼(団体)はなぜか黙っている。おかしい。良識ある市民サイドでは三月十六日、代々木公園で集会を開き、翌十七日、自由チベット協議会(酒井信彦代表)やチベット問題を考える会(小林秀英代表)が主催する中国批判のデモが中国大使館に向けて行われた。二十日には笄公園で日本文化チャンネル桜(水島総代表)グループが、二十二日は三河台公園で約千二百人が参加してチベットに自由を求めるデモ行進があり、「チベット議連」代表の牧野聖修前衆院議員が日本とチベットの連帯を訴えた。二十三日、「百人の会」が中心になって大阪靱公園から中国領事館に向けて、更に三十日には東京、大阪で同様のデモが行われた。引き続き、今後も各地で行われる予定だ。

ペマ教授 パリ、ローマなど世界各地でも中国政府の対応に抗議する抗議デモが頻繁に行われた。ネパールのカトマンズやインド・ニューデリーでは中国大使館に、豪シドニーとスイスのチューリッヒでは中国総領事館にそれぞれ押し掛け、デモ隊と警備当局が衝突して負傷者も出ている。
 報道によると、ダラムサラのNGO「チベット青年会議」(ツゥエワン・リグジン議長)など五団体はインドのシッキム州ナトッラ峠からチベット・ラサを目指して決死の帰郷行進を実施していたが、ダライ・ラマ法王は主催者と会い、行進の中止を求められた。非暴力路線の法王は「(独立急進派の)暴力が続くなら退位する」とも語った。もうこれ以上、チベット青年の血を流してはいけない。
 ダライ・ラマ法王は以前から、チベットの高度な自治権と信仰の自由を求めてきた。チベット人に内政、文化、宗教を任せて貰いたいと言い、それ以上の何等難しいことを要求していない。その上、法王は以前から北京五輪を支持している。
 今回のことについて、法王は「ある種の文化的虐殺が起きている。差別があり、常に二級市民として扱われている」「恐怖による統治が行われている」と憂慮している。

山田 ダライ・ラマ法王は一九八八年迄、チベットの独立を希求していた。法王の抱く自治権は、具体的には香港・マカオ型の一国両制と思われる。

ペマ教授 民族自治権を得たい。法王の求める「自治」について、中国政府はチベットに「自治区」という名称のみを与えるだけで、実質自治権は全くない。
 一九五一年に中国とチベットの間に締結した十七条協定には、チベット民族の権利、信仰の自由、チベット後の公用化を約束したが、中国は一方的に破り、チベット語を第二外国語として扱っている。従って教科書は中国の為で、中国語が出来ないと試験や高等教育は受けられない。就職も難しい。それに、法王のお写真を寺院に掲示してはいけないなど、チベット仏教を弾圧している。

山田 中国は宗教自体を認めない。

ペマ教授 唯一、心の安らぎをチベット仏教に求めるチベット人にとって、最も屈辱的なことは、中国政府の愛国主義教育によって、僧侶に対してダライ・ラマ法王を批判する文章を書くことを強要しそれに署名させる。これはとても耐え難い仕打ちだ。
 チベット仏教の信仰はチベット人の生活に密着していることは、中国政府も分っているにも拘らず、学校の教育現場では「古い体質にしがみついて、改革精神がない」と徹底的に批判する。

山田 中国の孟建柱公安相は三月二十三日ラサ入りし、「僧侶への愛国主義教育を徹底的に施さねばならない」と改めて表明していた。とんでもないことだ。

ペマ教授 翌二十四日には甘粛省蘭州市内のホテルに僧侶三千人が集められ、当局によるダライ・ラマ法王への批判が行われ、共産党政府に歩調を合わせるよう要求されたという。
 チベット人の価値観を無理やり中国に同化させようとする試みで、これはチベット抹殺政策だ。
 抑も、今回の発端になった三月十日は、チベット人にとっては決起記念日に当り、過去四十九年間、世界各地でデモを実施してきた。東京でのデモに、山田さんもこれまで何回も参加している。
 中国は独立国のチベットを軍事侵略し、一九五九年の三月十日にはダライ・ラマ法王を呼んで監禁しようとしたために、チベット人が法王を守るために立ち上がった。その時、大量虐殺が行われた。私の家もそうだが、チベット人のどの家からも犠牲者が出ている。

山田 今回の騒乱について、温家宝首相は「分離主義ダライ集団が謀略、煽動した。北京五輪の破壊が狙いだ」とか「政府への非難は内政干渉に当る」「西蔵(チベット)は歴史的に中国領」と言い、頑なに国際世論を拒絶している。
 その十年前(一九四九年)、中華人民共和国共和国の建国記念式典にチベット代表団はインド、香港経由で北京入りした。ジャーナリストの櫻井よしこさんは「両国を結ぶ交通路がなくて交流など出来なかった。二つの国が一つの国だったとの主張は成立しない」と論破している。

ペマ教授 これ迄のデモと違うのは、昨年十月に米議会がダライ・ラマ法王に「議会名誉黄金賞」を授与、表彰し、それを祝うチベットの僧侶を中国当局が拘束、その釈放を求めていたことと、中国政府が北京五輪の聖火リレーをチベットから始めて工ベレストを通過し、チベットが中国のものであることを誇示する目的で政治利用したため、大きく火がついた。それにチベット人にとって工ベレストなどの山々はとても神聖なもので、リレー通過は非常に抵抗を感ずる。

山田 聖火リレーは五月にチベット側から工ベレストに登頂する他、これとは別に六月十九日にチベット自治区に入って、二十一日迄にラサを通過する予定という。
 それに、チベットの希少動物、チベットカモシカやパンダを五輪のマスコットにしようとした。

ペマ教授 これもチベット支配の既成事実化の表われだ。抑も、パンダのいる雲南省は本来、チベットの地域。だから、パンダは中国のものではない、チベットのもの。
 それに二年前、青蔵鉄道が開通しても、チベット人に経済的恩恵を与えられていない。ラサは観光都市化によって世俗化してしまった。更に、中国人の役人は腐敗しているし、利益の大きい商売は中国人が独占し、大きな格差が生じた。長年、チベット人は経済的不平等について不満を抱いてきた。それも今回騒動の大きな引き金の一つだ。
 特に考えられるのは、中国政府にとって、五輪の開催中に騒乱などが起きては困るので、開催前に以前からマークしていた活動家を捕まえようとした。その為に、毎年三月十日に行われる平和的なデモ行進を狙い挑発したのではないのか。

山田 それで、僧侶に扮した数百人の人民解放軍兵士が入り乱れて煽動し、暴動に発展したと言われている。そのニセ僧侶が手にしていたのはチベット人の使う刀でなく、中国の刀だったという。

ペマ教授 山田さんは十一年前に通訳のお嬢さんと共にチベットに行き、独立派の僧侶に会いましたね。

山田 偶然、現地で知り得て、二十歳代のお坊さん五名に接触しました。彼等の隠れ家の薄暗い部屋に入ると、大きな仏壇にダライ・ラマ猊下のお写真が飾ってあった。又、これも偶然ですが、中国統治反体制派の一般市民も知り合い、彼の家に招かれて、バター茶を飲みながら中国政府によるチベット人迫害の事実や経済面での冷遇策を詳しく聞いた。

ペマ教授 山田さんはラサで酸欠で倒れたとか。

山田 そう、私と支那人がトラブルになり揉みあいになった為、軽い高山病に罹ってしまった。泊っていた旅館に医者が往診し、点滴を打って間もなく治ったが、旅館の従業員によると、その医者は「公安」だという。
 帰ってきて、国民新聞紙上に、ジョカン寺前の広場で制服姿の治安当局者や据えつけてある隠しカメラや武警本部等を隠し撮りし、その写真とリポートを掲載しました。

ペマ教授 ラサ市内は至る所、制服、私服の警察官が多勢いる。

山田 田舎のある寺院に行った時、私は思わず「フリー・チベット」と叫んだら、お坊さんがとんで来て、「それを聴かれたら逮捕されますよ。この寺にも三人の私服が常駐していますから」と慌てていた。

ペマ教授 チベット人、特にお坊さんは常に厳重に見張られている。

山田 話は戻りますが、ダライ・ラマ法王の求める民族自治権の要求だけでは、独立支持派の「チベット青年会議」や若い人にとってはもの足りないようですね。チベットの理想は当然、分離・独立だと思う。
 中国政府が認定したパンチェン・ラマは三月十一日、「暴動は仏教の教義に反する」と非難し、中国サイドのスタンスだ。本来、パンチェン・ラマは法王が指名したニマ少年が務める筈だった。未だにニマ少年とその家族の行方が知れない。
 チベット間題が、中国によって他の抑圧されている民族、例えば新彊のウイグル人や内モンゴルに飛び火する司能性もある。

ペマ教授 現に、三月二十三日、新彊ウイグル自治区のホータンでウイグル独立派や住民千人によるデモが行われ、治安当局に五百人拘束されたという。

山田 詳しく報道されていないが、ウイグルのアクスなど三大都市は夜十時以降の外出が制限され警備が強化された模様だ。

ペマ教授 中国は中華思想によって周辺を属国化する野心を持つ他、中国人そのものに対しても非人道的、非民主的な政策を今後も取り続けるならば、早晩、ウイグル人、民主化活動派、法輪功等も立ち上がるに違いない。何と言っても人権は自由・民主主義と同様に普遍的価値だから。

山田 アムネスティ・インターナショナルは四月一日、五輪に向けて人権活動家への弾圧を更に強化していると報告書を公表した。報告書によると、中国当局がチベットの抗議デモ参加者や北京の人権・民主化活動家等を逮捕し、粛正を行い深刻な情況になっているという。よって、国際オリンピック委員会を「人権弾圧の共犯者と何等変わらない」と指摘している。

ペマ教授 三月二十八日、四川省アバ県で武装警察が急襲し、お坊さん百人以上を連行したと報道されている。
 ダライ・ラマ法王は四月二日、「中国当局はチベット自治区等に大規模部隊を投入して、チベット人への弾圧を強め、抗議行動地域を封鎖している。世界は弾圧の即時停止を迫るべきだ」と訴える「懇願」と題した声明を出した。
調嘩籍麗簸会の支援隊が現地に入る一ことによって・治安当旦の厳しい取締りを抑制す、ることが出来る。山田中国政府はこれ迄の民族政策の失敗、誤ちを認め正しく修正すべきだろう。司能ならチベット独立に向けてタイムテーブルを作成するのがベターだが。ロハ、現実的にはまず国際監視の下で今回の件の真相について究明されるべきだ。今のところ、中国当局の武力による取締りや強権に抑え込まれてか、チベット人の抗議活動が鎮静化している。ラサ市観光局は国内外の観、光客を一カ月半ぶりに五月一日から受入れると発表し、自信の程を見せている。

ペマ教授 現在、治安当局は自首するよう求める通告を出す他、デモのあった地域の家庭から一人一づつ連行し尋問を行い、密告者には報奨金を与えるなど締め付けを強化している。そして、逮捕の後には過酷な刑罰が待っている。
 しかし、鎮静化したから解決したということにはならない。締め付けがきつければきつい程、火山のマグマはますます煮え滾って、大爆発を起こす。チベット情勢は活火山と化した。

山田 本日はご多忙の中、ありがとうございました。頑張ってください。 (了)

※「国民新聞」(2008年4月25日付)より転載

|

2008年4月19日 (土)

活火山と化すチベット情勢 (上)

ついにチベット人の憤りが爆発したー。中国のチベット自治区等で中国の同化政策に対して抗議行動するチベット人僧侶・市民らと治安部隊の衝突は多数の犠牲者を出した。このチベット問題の背景について桐蔭横浜大学のペマ・ギャルポ教授に本紙山田恵久主幹が聞いた。ペマ教授は一九五三年、チベット・カム出身。中国軍の弾圧を受け、一九五九年四月にインドに亡命。六五年来日し、ダライ・ラマ法王アジア太平洋地区の初代代表を務めた。

山田 タシデレ(今日わ)、ご無沙汰しております。中国のチベット自治区のラサで、中国の弾圧に反撥するチベット仏教の僧侶や市民は、三月十四日から一、二万人に上る大規模な中国支配反対運動を行った。デモ隊は口々に「チベットに自由を」「チベット独立」等と叫んでいたという。それに対して、治安当局は装甲車など武装車輌を投入し、発砲等で多くの犠牲者を出した。
 香港紙「明報」が伝えたところによると、三月二十一日、ラサで開かれた治安会議に公安省、国家安全省、武装警察部隊の高官と共に、何と驚くことに、人民解放軍成都軍区の呂登明副司令官が出席していたという。騒乱鎮圧の指揮本部を軍に置き、軍が前面に出て最高レベルの警戒態勢をとっていたという。実際、同軍区の緊急展開師団も投入された。
 報道によると、三月十日、ジョカン寺周辺で僧侶十人がチベットの旗を振り、ビラを配りながら抗議デモを行っているところに、武装警察が殴り掛ってきて、実力で制圧したという。
 更に同日、デプン寺からジョカン寺まで約三百人の僧侶がデモ行進をしたが、間もなく武装警察に阻止され五十人以上が連行されたという。中には手首を切って自殺を図ったり、ハンガーストライキをして、中国による圧政に抗議。これに対して中国当局はラサにある有名なセラ寺など三大仏教寺院を封鎖した。
 翌日、六百人以上の僧侶や市民による抗議活動があり、武装警察が催涙弾を発射して制圧したという。
 十六日、甘粛省蘭州の西北民族大学では学生が数百人規模の追悼集会を、十七日には北京の中央民族大学でも集会を開いた。同日、成都の西南民族大学では座り込みデモがあったが、治安当局はこれらの大学を厳戒下に置いたという。
 続いて、十八日から二十三日に掛け、四川省アバ・チベット族チャン族自治州、甘孜チベット族自治州、甘粛省甘南チベット族自治州、青海省黄南チベット族自治州でもそれぞれ数百人規模のデモが行われ、警察官の発砲で多数の犠牲者が出たと言われている。

ペマ教授 大変、悲しいことだ。当初、中国政府はデモ隊側の死者は三人とし、殺傷力のある武器を使っていないと発表したが、インド北部のダラムサラにあるチベット亡命政府(リンポチェ主席大臣)は四月五日、中国治安当局の発砲により百五十人以上が殺害されたと発表している。その後、昔からチベット領土であった四川省、青海省、甘粛省などでも両者の衝突によって多数の犠牲者が出ている。多分、四百人以上が死傷しているのではないか。今、チベットの人々の安否が最も心配だ。

山田 この三省の中に計十一のチベット族自治州とチベット自治区があるが、これ等は本来、チベットの国土だった。
 侵略した上、今度は残虐行為を働く。国際世論は中国政府の無慈悲な対応を批判している。外国人記者の現地立入りを一切阻み、国営新華社通信の偽装された一方的なニュースのみが飛び交った。

ペマ教授 メディア・情報統制は完壁で中国政府の得意とするところだ。北京駐在の十五カ国の外交員にラサの実情を公開したが、それはずっと後の三月二十八日で、中国側の都合のいいところしか見せなかったようだ。

山田 厳重警戒の中、それでも僧侶等は直訴していた。治安当局は彼らを直ぐ逮捕してしまった。ラサ郊外を含め全てオープンにすべきだ。
 中国政府は米動画投稿サイトの「ユーチューブ」を中国内で利用出来ないよう、インターネット経由での接続を遮断した。
 中国以外でのユーチューブ・アクセスは司能で、「プロテスト・イン・ラサ2008」と題する動画には、射殺されたチベット人男性六名の姿が生々しく撮影されている。
 又、中国国内では米ネットのグーグルやヤフーのニュースサイトも閲覧が出来ない。以前からグーグルのサイトではネット検閲も実施され、検索キーワードに「チベット」「ダライ・ラマ」と入力すると何も表示されない。

ペマ教授 世界中で北京五輪開催の是非が問われている。

山田 北京五輪の聖火リレー走者を務めることになっていた元タイ国王の孫娘、ナリサラさんやインドサッカーチームの主将は「チベットの大義に連帯を示すため」として、走ることを辞退した。

ペマ教授 北京五輪ボイコットはハリウッドの俳優リチャード・ギアさん、ハリソン・フォードさん、ユマ・サーマンさんやスティーブン・セガールさんを始め、クシュネル仏外相はEU(欧州連合)に開会式欠席を呼び掛け、メルケル独首相、ブラウン英首相始めポーランド、チェコ、スロバキア、エストニア、ブラジルの七カ国首脳やチャールズ英皇太子は参加を見送った。

山田 サルコジ仏大統領も中国側がダライ・ラマ法王と対話しなければ欠席するようだ。ドイツは先に中国と取り決めた経済協力を凍結し、二月にメルケル首相も参加しないことを決めている。英国、チェコ、ポーランドはダライ・ラマ法王の招請や首相会見を検討している。
 又、胡錦濤に電話で「対話するように」と促したブッシュ米大統領は開会式には出席する予定だが、議会では出席を取り止めるべきとの声が挙がっている。出席は一九三六年にナチスによるベルリン五輪に参加したルーズベルト大統領の轍を踏むことになろう。ロハ、最近になって大統領報道官は「大統領はいつでも予定を変更司能」と述べている。
 ライス国務長官は中国にチベット政策の修正を求め、チベットに領事館の開設を求める方向で検討を始めると言っている。
 更に、ペロシ下院議長の提案で、米下院は四月九日、抗議するチベット人に対する弾圧を厳しく非難すると共に、中国政府とダライ・ラマ法王の対話や拘束されている僧侶の即時釈放を求める決議を賛成四一三対一の圧倒的多数で採択した。

ペマ教授 米下院のペロシ議長は米議員九人と其に三月二十一日、ダライ・ラマ法王にお会いになり、二十八日、中国政府を批判すると共に「国際オリンピック委員会が五輪開催地に北京を決めたのは間違いだった」と述べ、聖火がペロシ氏の地元サンフランシスコを通過する時、中国に対する抗議を容認すると表明した。

山田 国際オリンピック委員会は、中国の内政問題に関与しないとしていたが、事態が悪化して風向きが悪くなると遅ればせながら、「平和的解決を求める」と言い出した。
 四月八日、サンフランシスコでは地元中国人の約一万人と中国批判の市民約八千人の衝突が想定され、流血の事態を避ける為、聖火リレーのコースを全面的に変更せざるを得なくなった。

ペマ教授 「平和の祭典」オリンピックを台無しにしたのは、明らかに中国政府だ。
 四月六、七日の両日、ロンドンやパリでも、市民の妨害に遭い聖火は何度も立往生した。しかし、ダライ・ラマ法王は「いかなる妨害もすべきではない」、聖火リレーの阻止行動は「中国の人々にチベット人への憎悪を抱かせるだけで、無益なこと」と仰っている。

山田 盗っ人猛々しく、北京五輪組織委員会は我国に五輪聖火が妨害されないよう警備するよう強く注文をつけてきた。日本での聖火リレーは四月二十六日、長野の善光寺からスタートする。
 しかし、国連人権理事会では中国、ロシアの反対にあって、チベットの人権侵害間題について討議されなかった。国連の播基文事務総長は五輪開会式の出席を見送ったが、未だに弾圧等についてメツセージを出していない。
 又、日本の仏教界が黙って見ているのもおかしい。唯一、天台宗の書為山圓教寺の大樹玄承執事長が声明立を出してチベット擁護と中国批判を行っている。

ペマ教授 台湾の次期総統に選出された親中派と言われている馬英九氏でさえ、「弾圧を続けるなら、五輪に参加しないことも排除しない」と言っていた。

山田 日本では、福田総理は胡錦濤の来日を控えて、著しく慎重な構えで、「声高に(中国を)批判したり、北京五輪と関連付けることはどうか」「(双方の)対話が行われることを歓迎する」と言うだけで、非人道的な弾圧について直接言及しない。何しろ、福田首相は靖国神社参拝について「(中国など)相手の嫌がることを敢えてする必要はない」と言う親中姿勢を示す。これが我国のトップリーダーとは情ない。
 更に、中国は皇族のご出席を要請してきたが、ご出席はチベット弾圧を容認することになってしまう。政府は要請を受入れない方向で進めているというが、水面下でおかしな動きもあり予断を許さない。
 超党派の国会議員で構成する「チベット間題を考える議員連盟」(枝野衆院議員が日本とチベッ幸男代表)は、事態が悪化すれば「胡錦濤の訪日歓迎は出来ない状況になりかねない」などとした非難声明を出した。しかし、その総会に出席したのは自民、民主両党の僅か二十七議員だけだった。
 因みに「北京オリンピックを支援する議員の会」は会長河野洋平、会長代理に中川秀直と鳩山由紀夫、幹事長野田毅で総勢二百二十五名もいる。これら国会議員は未だに誰一人として中国を批判していない。
 最も危惧するのは、五月六日に来日する胡錦濤が国会で演説を行ったり、皇居で午餐会か晩餐会に出席したら、それこそ、畏多くも天皇陛下が中国の政治利用に悪用されかねないことだ。

ペマ教授 多くの国民、市民がチベットの置かれている状況を良く理解して頂き、味方になってくれることは、大変ありがたい。 (続く)


※「国民新聞」(2008年4月25日付)より転載

|